4月25日（日） 2010 J2リーグ戦 第8節
東京Ｖ 1 - 2 甲府　（16:03／味スタ／7,051人）
得点者：56' 金信泳（甲府）、80' 高木俊幸（東京Ｖ）、90'+2 秋本倫孝（甲府）
スカパー！再放送 Ch183 4/26（月）19:30〜（解説：柱谷哲二、実況：中村義昭、リポーター：高木聖佳）
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劇的な幕切れだった。
後半ロスタイム２分。コーナーキックのピンチを凌いだ東京Ｖのクリアボールを、甲府・石原克哉が再び中央に送り込む。ハーフナー　マイクが頭に当てた浮いたボールが東京Ｖゴールを襲った。ＧＫ土肥洋一が頭上で懸命に描き出してバーに当てたが、跳ね返ったところに詰めたのはただ一人、秋本倫孝だった。左足で甲府を勝利に導いた。
間もなく鳴ったホイッスルを聞いた瞬間、東京Ｖの選手たちは倒れ込み、しゃがみ込み、ガックリと肩を落とした。一方の甲府は両腕を高く掲げ、ガッツポーズをし、満面の笑みで喜びを爆発させる。勝敗によって分かれた両極端の姿は、どちらも１勝への渇望を物語っていたように思う。

前半こそ、「消極的になってしまった」（東京Ｖ・吉田正樹）、「５連戦を意識し過ぎて計算してしまった」（甲府・荻晃太）と、互いに若干セーフティー気味な展開となったが、ハーフタイムで状況は一転する。
「前節勝って、全部じゃなくても内容が積極的に見える状態に戻ったので、『せっかくの成長過程でそこを崩したら先がない』と話した」（川勝良一監督）
「『この試合で足が攣るぐらい走って、終わってから、あとのことを考えよう』と話した」（荻）
後半は、アグレッシブさのぶつかり合いとなった。
その中で、結果的に見て非常に興味深かったのが、両監督の選手交代である。
川勝監督は、後半の頭から井上平に代えて平本一樹を投入し先手を打った。効果はてき面で、特に、前半ではほとんど負けていた空中戦で対等に競り合えるようになったことは大きかった。前線でボールがおさまるようになったことでパスも回り始め、最終ラインが上がったことで徐々にペースを握って決定機が生まれ始めた。

だが、後半11分、マラニョンからの折り返しを金信泳に頭で決められ、甲府に先制点を許してしまう。
そこで、高木善朗、高木俊幸を送り込んで前への推進力をさらに高めると、後半35分に高木俊がＰＫをゲット。自らキッカーに志願したルーキーが、待望のＪ初ゴールを決めた。
また、直接得点には絡まなかったが、高木善も「監督からは相手のサイドの裏スペースと言われたので意識してプレーしました。あと、ベンチから見ていて後ろ向きのパスが多くて仕掛けるシーンが少ないと思っていたので、ドリブルで仕掛けました」と、入った途端に存在感をしっかりとアピールした。
一方、甲府も、秋本の決勝点は内田一夫監督が後半途中から入れた石原、ハーフナー　マイクが絡んで生まれたものであった。
川勝、内田両監督の采配力と、それぞれの選手が与えられた役割を、期待通りにこなしたことの証明だろう。そういう意味でも、非常に見応えのあったゲームではなかっただろうか。

これで甲府は３連勝となった。「だいぶやりやすくなってきた」と、養父雄仁も徐々に新しいスタイルが浸透してきている手応えを感じているようだ。開幕前の予想では、優勝候補とも目されている甲府。いよいよ本領発揮の雰囲気が漂ってきた。

連勝を目指した東京Ｖにとっては、残念極まりない結果となった。
だが、現在のチーム状況に「成長過程」という言葉を川勝監督は使った。全く新しいチームを作り直している中で、「どういう落とし方をしたのかが今年は特に大事なので、そういう意味で後半の戦い方に関しては特別監督として選手を責めるとか、ここを直すとかはない」と、指揮官に言わせたことは、確かに成長している証なのではないだろうか。
それでも、選手たちは「最後に失点しては絶対にダメ」と、反省しきりだった。同じ過ちを二度と繰り返さないための肥やしにするしかない。
「後半みたいなゲームを、前半の頭からやっていくことがチームにとって一番大事」と川勝監督。これからも、決してブレることなく、自分たちのサッカーに自信を持って、着実に歩を進めていきたい。

以上

2010.04.26 Reported by 上岡真里江