4月18日(日) 2010 J2リーグ戦 第7節
横浜FC 1 - 2 熊本 (16:03/ニッパ球/3,553人)
得点者:56' 西弘則(熊本)、64' 西田剛(横浜FC)、68' オウンゴ−ル(熊本)
スカパー!再放送 Ch181 4/19(月)15:00〜(解説:菅野将晃、実況:加藤暁、リポーター:高木聖佳)
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サッカーではどのチームも勝利を目指し、そのためにゴールを挙げるための方法、失点を減らすための方法を考える。その方法は様々であり、この試合を戦った横浜FCと熊本は、対極とまでは行かなくとも、大きく異なる方法を用いている。どちらが上でどちらが下ということは言えないが、この試合の勝敗を分けたものは、そのシナリオを演じきったという点で熊本の方が上だったこと。そしてその帰結として熊本に勝点3が転がり込むことになった。
前からプレスを掛けて奪い行くスタイルの横浜FCと、ブロックを作りゾーンで守る熊本。試合前から、横浜FCがポゼッションを高めて、熊本がカウンターを狙う戦いになる予想はされていた。試合は、おおむねその予想通りに進むこととなるが、熊本の戦い方は想像以上に徹底したものだった。ブロックを作るのはもちろんであるが、「相手はロングボールを落として2列目が走ることを狙っていた」(戸川健太)というように、徹底して横浜FCの裏のスペースを突いてミスを誘っていた。その意味で、単にカウンターを狙うという試合前の予想よりもゴールに対して「積極的」だった。試合開始直後に、ロングボールから1対1のシーンを作った場面などは、まさに狙い通りだったと言える。その熊本の積極策に横浜FCの守備陣が慣れてきた前半15分以降は、試合は膠着していく。「横浜のプレッシング」対「熊本のブロック」。そしてその守備組織に対して、横浜FCはシルビーニョを中心に、選手の間のスペースを活用して、時にスルーパスを使って穴を開けようと試み、熊本はロングボールを使ってプレスにズレを作ろうとする。どちらかと言えば横浜FCのほうが得点の匂いはさせていたが、前半はともに自らの形を静かにぶつけ合いながら、0-0で終了する。
後半の立ち上がり、積極的に前掛かりになったのは横浜FCの方だった。大黒将志のポストプレーを起点として、寺田紳一、高地系治、小野智吉と何度もクロスを上げる。そのターゲットはもちろん大黒。大黒は、少し無理な体勢からでも確実にヘディングに持ち込む能力の高さを見せるが、南雄太の前にゴールを割ることまではできない。そして、横浜ペースが続き、プレッシングも小気味よく決まり始めたと思った矢先、その守備に一瞬の綻びを作ってしまう。56分、囲んだところをかわされ、こぼれ球の処理を誤りボールを熊本に渡してしまうと、絶好のカウンターのチャンスに。そして、松橋章大からのパスを西弘則が冷静にゴールに押し込み、熊本が先制点を挙げる。岸野靖之監督が「自らの形を崩して奪いに行くことがうまくいかない時のカバーが弱かった」と振り返るように、プレッシングにリスクのマネジメントを緩めてしまった瞬間を熊本が見逃さなかった得点だった。
すかさず岸野監督は、63分に西田剛と片山奨典を同時に投入。すると、64分の最初のプレーで片山から西田に絶妙のクロスが渡ると、西田が落ち着いて決めて同点に持ち込む。まさに采配的中と言える形だが、ここから高木琢也監督が「メンタルでの強さも選手達に感じた」と語るように、熊本が粘り強さを発揮する。熊本がロングボールを放り込んで得た66分のスローインからのプレー。ペナルティエリア脇で囲みに行ったところで片山がファールを犯す。原田拓が蹴ったフリーキックは、シルビーニョのクリアが直接ゴールに吸い込まれオウンゴールとなり、再び熊本がリードを奪う。すかさず高木監督は、藤田俊哉を皮切りに、逃げ切るための交代を矢継ぎ早に行う。横浜FCも大黒、西田を中心に総攻撃を掛ける。しかし、73分のPKを大黒が外してしまうなど、最後の扉をこじ開けることはかなわなかった。後半のシュートは横浜FC10本に対して熊本は5本と、積極的に攻め続けたのは横浜FCだったが、熊本がまんまと逃げ切ることに成功した。
勝利した熊本は、これで3位に浮上。高木監督が「ミーティングで伝えたことを100%選手達がやってくれた」と振り返るように、選手が今できるプレーとシナリオを100%演じきったことで得た勝利であり、自らのスタイルにさらに自信を深める勝利となった。
一方の横浜FCは、試合全体では十分自らのポテンシャルを出しており、悲観すべき内容でもない。失点に繋がったミスが再発しないようにプレーの精度を上げていく必要はあるが、カウンタースタイルのチームに連敗しているからと言って、自らのスタイルに疑問を投げかける必要はない。自らのスタイルを100%演じること、これが結果を得るために求められている。試合後にブーイングをしたサポーターは、一方でスタジアムから監督・選手が出てくる際に大きな「ヨコハマ」コールをした。サポーターが同時に発したこの異なるメッセージは、スタイルに対する疑問ではなく、スタイルを完遂できなかったことに対する叱咤激励だったに違いない。
両者が見せたスタイルのぶつかり合いという点では、十分に醍醐味を味わえた試合だったことも間違いない。次の試合に、さらに完成度が高まり良い結果に結びつくことを期待したい。
以上
2010.04.19 Reported by 松尾真一郎
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