スカパー！生中継 Ch183 15:50〜（解説：前田秀樹、実況：山下末則、リポーター：佐藤愛美）
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現在5試合勝利から見放されている水戸。数字が現状を物語っている。攻撃においては4試合連続無得点。そして守備においては6試合で4失点に抑えてはいるものの、リーグ最多95本ものシュートを放たれているのである。2番目に多くシュートを打たれているチームが77本であることを考えると、いかにピンチを多く作られているかということがよく分かる。シュートを打てず、シュートを打たれている。それでは勝利が遠のくのも無理はない。
攻守において大きな課題を抱いている現状の中でチームをどう立て直していくのかが今節の最大のポイントとなる。「前線からプレスをかけて高い位置でボールを奪うという、いい守備ができていないから、いい攻撃ができていないのでは？」。そう問いかけると、木山隆之監督は少しの間考え込んだ後、かぶりを振って、「守備はいい陣形を保てているし、シュートを打たれているが、崩されてはいない。やっぱり問題は攻撃の部分。相手の嫌な位置でボールを受ける回数が少ない。それができれば、相手陣内でプレーする時間が増えるし、前線でプレスをかけることができる。それができないから、押し込まれることとなってしまっている。やっぱりもっと攻撃をして、チャンスを増やすことが大事だと思う」と語った。そこに攻撃サッカーを標榜する木山監督のアイデンティティーを再確認することができた。現代サッカーでは攻撃と守備は表裏一体。しかし、守備から攻撃を考えるのか、攻撃から守備を考えるのかでサッカーの表現は大きく変わることとなる。結果がなかなか出ない中でも、木山監督が一貫して後者の思想を抱いているところに水戸の可能性は秘められている。
水曜日の練習前、木山監督はミーティングで選手たちにUEFAチャンピオンズリーグのバルセロナvsアーセナルの試合の映像を見せた。そこで木山監督が伝えたことは、「テクニックを真似することはできないが、動き出しや相手の嫌なところに走り込むことは真似できる」ということ。貪欲に前のスペースに入り込んでいき、スピーディーかつ厚みのある攻撃でゴールを狙う。それこそが水戸の目指すサッカーなのである。そのために今週の練習では前線に人数を割いて攻める形とシステムを試し、選手たちに積極的に攻撃することを促した。また、けがから復帰した森村昂太や今季これまで出場機会のない保崎淳などが先発組に入ったことで、彼らのモチベーションの高さによってさらにチームは勢いづくこととなった。とにかくチーム全体が攻撃性に満ち溢れているのである。今の水戸は鎖につながれた餓えたライオンのようだ。キックオフの笛と同時に鎖から解き放たれたライオンはゴールという獲物へまっしぐらに襲い掛かるに違いない。
しかし、現在リーグ2位タイの12得点を挙げている今季の福岡は、猛獣の中の猛獣だ。特に高橋泰と大久保哲哉の縦並びの2トップは危険度満点。下手に噛みつきにいったら、痛い目に遭う可能性が高い。しかし、ここ2試合は対戦相手にうまくあやされ、獰猛さは影を潜めている。前線から激しいプレスをかけられ、攻撃の第一歩となる前線へのクサビのボールを送れず、さらに攻撃の起点である大久保も厳しいマークに遭うようになり、攻め手を失うこととなっている。
やや調子を落としがちな今だからこそ、ここでもう一度原点に戻りたいところだ。昨季終盤から福岡の好調を支えていたのは守備の連動性であった。今季も守備からリズムを作り、いい形でボールを奪うことで分厚い攻撃を繰り出していた。しかし、ここ2試合は自分たちがイニシアチブを握ることに固執するあまり、守備の意思疎通が若干おろそかになっているように思われる。そこさえ修正できれば、再び破壊力抜群の福岡に戻れることだろう。
ゴールを奪おうと牙をむき出しにする両者の戦い。ただ、現時点では順位が示すように、福岡の力が勝っていることは認めざるを得ない。しかし、水戸は戦い方を貫くのみ。抜群の破壊力を誇る福岡相手に攻め勝った時、水戸は本物の猛獣と化す。
以上
2010.04.16 Reported by 佐藤拓也
