スカパー！生中継 Ch181 12:50〜（解説：川本治、実況：西岡明彦、リポーター：児玉美保）
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リーグ開幕からヤマザキナビスコカップを含めた6試合の公式戦を通じ、チームはＪ１のクオリティを体感しながら多くのことを学んでいる。なかでも、いま湘南に求められているのは、1−2で敗れた前節の浦和戦やヤマザキナビスコカップの清水戦の試合後に指揮官が触れた「動きの質」といえるだろう。
場をあらためて反町康治監督が言う。
「選手はみんな頑張ってるよ。ただ、持っているガソリンをいかにうまく使うかは課題だな」
動きの量は文句なかろう。くだんの浦和戦にしろ清水戦にせよ、運動量では相手を凌いでいた。こと清水戦では全員守備からリズムを手繰り、ゲームをコントロールもした。浦和戦にしても、ポゼッションは相手に多く譲る半面、得点機の数で見れば、とくに前半は互角の印象である。それでも次第に後手を踏んでいった背景には、浦和の素早いファーストディフェンスを引き金としてフィニッシュまで届かなかった攻撃とボールの危うい失い方があった。
「攻めたときに最後までやりきって終わらなければいけない」そう振り返るのは、清水戦フル出場、浦和戦にも途中出場したFW新居辰基だ。
「攻め残って決定的な仕事のできる選手がＪ１には多いから。ボールを奪われるにしても、チャレンジして奪われたほうがいい。サッカーは当然ミスの多いスポーツだし、レベルアップには失敗も大事だと思う。取られてもみんなでカバーすれば大丈夫ですよ」
「でも、みんな闘ってる」と、新居は続けた。
「たとえばジャーンなど、最後のところで体のどこかに当ててでも止めようという意志がプレーに表れている。うちはみんなで闘うチーム。僕らFWも頑張らなければいけない」
反町監督が例えた「ガソリンをうまく使う」という点において、チーム内では坂本紘司の動きがひとつヒントになるかもしれない。あれは3年前のホーム東京Ｖ戦だったか、カウンターで抜け出したフッキを猛然と追いかけて止めたプレーがいまだ記憶に残っているが、かといっていつも闇雲に全開で守備に戻っているわけではない。状況を見極め、スペースをうまく埋めるなどしながら緩急をコントロールしている。思えば、「走りの質が問われる」と前々から意識してもいた。攻守ともに勝負所でギアをシフトアップできるよう巧みにガソリンを使っているからこそ、効果的な動き出しやアシストを試合終盤まで繰り出せるのだろう。前節の後半ロスタイム、浦和に報う一矢を演出したように。
今節は、その坂本の古巣との対戦となる。開幕から白星のなかった磐田は、しかし前節、取りつ取られつの攻防の末に4−3でＧ大阪を振り切り、ホームで今季初勝利を手にした。昨季20ゴールでリーグ得点王の前田遼一と出場24試合で12ゴールを稼いだイ・グノの2トップの迫力は褪せない。くわえて前節は、前田に続きパク・チュホもＪ初ゴールを含む2得点を挙げ、勝利に貢献した。反町監督も、「磐田は撃ち合いの試合が多いが、それは撃ち合うに値するよいアタッカーがいるということ」と、敵の攻撃陣を評している。
しかし、かたや守備面ではDFの背後のスペースを突かれた。今節に向け、当然テコ入れが図られているだろうことを踏まえても、湘南としてはフィニッシュまでまっとうする意識を含めて効果的に攻撃を仕掛けたい。
坂本が週末を見据える。
「磐田が偉大なチームであることは間違いない。その意味では、僕にとって磐田に勝つことは特別です。――でも、とはいえ力みすぎないようにやりたい。トレーニングマッチを含め、試合をする機会はこれまであまりなかったので、元気にプレーしている姿を相手のサポーターにも見せたいですね。なによりも、まずはチームとして勝利を挙げたい」
94年にＪリーグ昇格を果たしたクラブ同士の対戦成績は、8勝8敗の五分である。丸10年の時を経て、拮抗した記録がふたたび動き出す。前節勝利の磐田は連勝を、第4節新潟戦で同じく今季初勝利を飾った湘南はホーム連勝を今節に期す。Ｊ１の水に慣れてきたら、さらに開放すべきは自分たちの個性とこれまでに培ってきたプレースタイルだ。一瞬の隙をも与えず逃さず、長い笛が響くまで高い集中力を貫きたい。
以上
2010.04.09 Reported by 隈元大吾
