3月27日（土） 2010 J2リーグ戦 第4節
水戸 0 - 0 北九州　（13:04／Ｋｓスタ／1,803人）
スカパー！再放送 Ch181 3/29（月）23:30〜（解説：戸塚哲也、実況：西達彦、リポーター：佐藤愛美）
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ポカンと大きく空いた北九州のDF裏のスペース。水戸にとってそこが狙い目のように見えた。しかし、それは罠でもあった。開始から数十秒、村田翔からのスルーパスに抜け出した吉原宏太がクロスを上げ、ファーサイドに走りこんだ大橋正博がボレーシュート。北九州GK水原大樹の横を通り抜け、決まったかとように思われたが、ゴールライン前、間一髪で川鍋良祐がクリア。先制点こそならなかったが、一連の流れで勢いづいた水戸はその後も北九州のDF裏のスペースを狙って攻め続けた。ボールを奪うなり、すぐさまDF裏のスペースへ。相手の急所をえぐろうと水戸は攻める意識は見せた。

だが、それは水戸のスタイルを奪うことにつながった。今季の水戸は中盤でしっかり組み立ててゴールを狙うサッカーを志しているものの、攻め急ぐばかり縦一本の単調な攻撃になってしまった。徐々に自分たちのリズムを失っていき、時間とともに主導権は北九州へ。そこで浮き彫りになっていったのは中盤の構成力の差だ。序盤こそ勢いに乗って水戸が攻めたものの、北九州は自分たちのリズムを保ち続けた。中心となったのはボランチの佐野裕哉だ。中盤の中央でうまくボールを引き出し、村松潤や桑原裕義らと巧みなパス交換を行い、水戸のプレスをかいくぐった。そして、視野の広さを生かしてサイドチェンジを繰り出し、厚みのある攻撃からチャンスを作っていった。

「サイドバックやセンターバックからボランチのところに入ってくるボールが丁寧だったし、中盤が中から外に展開できた。その辺の展開力が開幕の2試合に比べてよくなった」と与那城ジョージ監督が手ごたえを語ったように、中盤の組み立てでは北九州が一枚上手であった。縦一辺倒になってしまった水戸に対し、サイドを有効に使った北九州。終盤、佐野からのスルーパスを受けた長谷川太郎の折り返しを中嶋雄大が合わせる決定的なシーンを作るなど水戸を追い詰めたが、決定力を欠き、スコアレスドローに。水戸にとっては命拾いをする格好となった。

この試合で輝いたのは北九州の勇気だ。「J2の中盤は構成力がある。どのくらいコンパクトに保つことができるかが大きな課題」と与那城監督が言うように、序盤からピンチを招いたものの、DFラインを下げることなく、高い位置で全体をコンパクトに保ち、水戸のパスワークを遮断してみせた。ボールを奪ってからもミスを恐れることなく、中盤でボールを動かそうという意識は見えた。まだ精度の問題もあり、ミスも多く、完成形には遠いと思われるが、「試合をやるごとによくなっているのが分かる。自信を持ってボールを持てている。これからどんどんよくなると思う」と実感を込めて語った村松の言葉通り、チームとして着実に進歩していることを示して見せた。今後の伸びしろを十分感じさせる90分であった。

水戸はこの試合において経験不足という課題を露呈したと言えるだろう。単調になってしまった流れを変えることができず、ズルズル相手のペースへ引きずり込まれてしまった。勢いまかせではなく、「もっとゲームの流れを予測してプレーの選択をしないといけない」と木山隆之監督が言うように、1人1人にもっと流れを読む目が求められる。ただ、それはこのチームの避けることのできない宿命である。昨季の主力が抜け、大卒選手を含め若い選手を中心に戦わざるを得ないチーム事情の中、「経験不足」は必ず出てくる課題。「（チームの経験不足を）認めたくはないが、認めざるを得ない」と木山監督が渋い表情を見せたように、若さがこのチームの売りである反面、最大のネックでもあるのだ。しかし、この壁を乗り越えるためには、経験するしかないことも事実。こうした失敗を繰り返しながらチームは強くなっていく。そこで負けずに勝点1を積んだことは収穫と言っていいのではないだろうか。

若さには無限の可能性を含んでいる。まだまだ失敗が許される時。チャレンジを繰り返しながら最後の最後で笑えれば、それでいい。

以上

2010.03.28 Reported by 佐藤拓也