3月27日（土） 2010 J1リーグ戦 第4節
川崎Ｆ 0 - 0 清水　（13:04／等々力／17,716人）
スカパー！再放送 Ch185 3/28（日）23:00〜（解説：小野剛、実況：倉敷保雄、リポーター：高木聖佳）
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公平に振り返れば、スコアレスドローの結果は川崎Fにとってはラッキーなものだった。火曜日のACLメルボルン戦から中3日の試合であり、コンディションに難しさを抱えていたからである。ただそんな中、立ち上がりの時間帯に関しては川崎Fがチャンスを作っていた。特に目立っていたのが、サイドの幅を広く使った攻撃である。フィニッシュには結びつかなかったが、前半7分には右のレナチーニョに振ったパスを、左のスペースに飛び込んだ稲本潤一に合わせた。

しかし徐々にペースは清水へと傾く。理由は複合的で、そのひとつとして運動量が上げられる。田坂祐介が「体も重たそうだった」と自らのチームについて言及するのはまだわかるが、清水の長谷川健太監督にも「（川崎Fは）いつもの運動量というのはなかなか出し切れないような状態でした」と語られるような状態でのプレーだった。ACLのメルボルン戦から中3日。1週間で3試合目ともなると、さすがに状態がいいとは言い難かった。

また川崎Fは横浜FM戦での大敗を受け、ラインの位置を多少下がり目のところに設定しており、それによってチームは全体的に間延びし、選手個々の距離が離れてしまった。

そんな川崎Fに対して清水は、持ち前の運動量を発揮しスペースを埋め続けた。例えば「相手のウィングというか、兵働さんと、藤本さんが守備でも落ちてきてスペースを消してきていた」（田坂）という状況を作ることで川崎Fが使えるスペースを消し、自由にサッカーをさせず、それによって川崎Fは局面の打開に難しさを抱えることとなった。ゲームメイクを期待されていた田坂は「個人で打開するのには限界がありました」と試合を振り返っている。

いずれにしても、運動量と戦術的な理由によりペースは清水へ。そしてそれはある程度必然的な流れでもあった。清水は前半の9分に右サイドを突破してクロスをあげた攻撃を皮切りに、徐々にペースを握り始める。26分には左サイドからの組み立てによって中央の小野伸二がフリーになり、岡崎慎司へと決定的なラストパス。この時間帯から清水が完全にペースを掴むが、川崎Fはゴール前にブロックを作って守ることでこの局面を凌いでおり、失点だけは免れるという展開だった。

後半に入り川崎Fが多少持ち直すが、それも前半との比較の中でという前置きが必要なもので決して川崎Fが良くなったというわけではなかった。後半の試合展開を振り返っても、完全に崩した場面の数で言えば清水が上回っており、決定機も清水がより多く掴んでいた。そんな中、川崎Fは3枚の交代カードの全てを攻撃的な選手で切って難局を打開しようとする。厳しい試合の中でも川崎Fらしさを発揮しようとする高畠勉監督の気持ちが見えてくる采配だった。

共に試合を決めきれないなか、後半ロスタイムの90＋3分には途中交代出場の楠神順平が「クロさんの動きは見えていたので、狙いました」という絶妙なスルーパスを黒津勝に通すが、ニアサイドを狙ったシュートは惜しくも枠外に。

決定機を逃した川崎Fは、その直後に清水の伊東輝悦に決定的なシュートを打たれるが、これも決まらず。結局試合はスコアレスドローで決着することとなった。

なお、川崎Fは試合前の選手入場時と試合終了後に、大宮の塚本泰史選手に対し親友の菊地光将と選手会が主導してメッセージを送っており、試合後にはサポーターと共に応援を送るビデオ撮影が行われた。

またその一方で、清水の選手たちは先日逝去されたライターの大場健司氏をしのび、試合中に喪章をつけてプレー。伊東輝悦は「エスパルス長いですし、長くいたから付き合い長いところもありましたし、当たり前にいた人がいないのは何か変な感じですね」と述べて故人を偲びつつ「結果を出すことが何よりの供養と言うか、一番だろうと思いますが、勝点3の結果がでなかったのが残念です」と結果を悔やんでいた。また、長谷川監督も試合後の監督会見で惜別の言葉を述べていた。

共に勝ちたい理由がある試合ではあったが、共に決定力を欠いた試合は、結果的にドロー決着となった。

以上

2010.03.28 Reported by 江藤高志