3月13日(土) 2010 J1リーグ戦 第2節
仙台 3 - 1 大宮 (16:07/ユアスタ/17,978人)
得点者:34' 梁勇基(仙台)、40' マト(大宮)、42' エリゼウ(仙台)、70' フェルナンジーニョ(仙台)
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昨年の10月31日、天皇杯3回戦で仙台が大宮に勝利した試合も、今思えばFKによる混戦から仙台、PKで大宮、最後は直接FKで仙台が点を奪うという、すべてがセットプレーでの得点による決着だった。
そして今回、実はこのカード初の「J1リーグでの対決」を迎えたわけだが、天皇杯以上に「セットプレー祭り」の様相となった。
試合の大きな流れは後に触れるとして、この「美技」の数々を、先に詳細に振り返るとしよう。
34分、仙台は左CKを得る。梁勇基の正確なキックが入ってきたゴール前で、渡辺広大がもつれた深谷友基によって倒れたプレーにホイッスルが鳴り、仙台にPKが与えられる。梁がゴール右下に蹴ったPKは反応したGK北野貴之が指先で触れて若干外にそれ、右のポストに跳ね返ってくるものの、北野としては不運なことに、そのボールが着地した北野の背中に当たって、改めてゴールマウスに吸い込まれていった(その様子を見届けた後、ピッチを叩き悔しがった北野の姿が印象的)。ともあれ、梁の2試合連続ゴールで仙台が先制する。
すると今度は40分、その梁が犯したファウルが、大宮の同点FKのきっかけとなった。ペナルティーエリア右45度角のほぼ上からのFKで、大宮はトリックプレーを敢行。ボールのそばの3人が各々動き出し、村上和弘がまたいだボールを橋本早十がスパイク裏で後ろに流すと、「3人目」のマトが自慢の左足を振り抜く。ボールはゴール前の密集を抜け、左のサイドネットへ強烈に突き刺さった。
だが、このマトのキックでの騒然とした空気がまだ覚めやらない42分、仙台がセットプレーからすぐさま勝ち越す。まだゴールまでは遠い右サイドからのFK、梁が入れた速いボールをニアに飛び込んだ千葉直樹がヘッドでファーへ流すと、両軍通じて最もファーにいたエリゼウが珍しく足で蹴り込んだ。結局は決勝点となるこのゴールだが、ハーフタイムをリードして迎えられたという意味でも、仙台にとっては大きかったか。
「セットプレー祭り」の最後を飾ったのは、70分の仙台のCK。梁が蹴った右CKがゴールから少し離れた正面へもたらされると、競り勝ったエリゼウがヘッドでゴール方向へ押し返す。するとそのボールをGKの手前で、身長161センチのフェルナンジーニョが目一杯体を伸ばして頭で触り、うまくコースを変えた。一旦バーに当たった後、下に落ちる形でマウスに吸い込まれていった、フェルナンジーニョの仙台加入後初ゴールが3得点目となった仙台が、そのまま逃げ切って開幕2連勝を成し遂げた。
さて、得点自体はこうして全てセットプレーだったわけだが、ではゲーム全体でのパワーバランス、内容はどうだったのか。
ここに関しても、仙台は前節の磐田戦に比べると、狙いどおりの内容でゲームを進められた感がある。大宮のサイド攻撃を戦前は警戒していた仙台だが、「大宮がサイドに流れる前線のFWへロングボールを多用してきたこともあり、サイドの攻防というよりは、ルーズボールの争いという展開になったことも功を奏した」と仙台・手倉森誠監督は振り返っていたが、それであれば今の仙台は互角以上で戦える。ケガのラファエルに代わって大宮の2トップに入った藤田祥史はボールにこそ頻繁に触れたものの、ダイレクトでさばこうとしたボールが上手く味方と合わない場面も多く、そこを帰陣の速い中盤が奪うという展開に仙台は持ち込めた。
また後半、ビハインドを返そうとする大宮は、金澤慎を下げてセンターに橋本を移し、左サイドハーフに内田智也を投入して中盤での攻勢を強め、右の藤本主税と左の内田、それぞれサイドで起点を構築する機会を増してきたのだが、この状況に対しても仙台は冷静に対処することができた。前節は似たような展開においてDFラインが下がりだし、いよいよゴール前に押し込まれ続けてしまったのだが、今回は適度なバランスの元でキープされたラインが仙台を支えた。
この効果もあって、攻撃でも仙台は抜け目のなさを出すことができた。スピードと技術を活かし一発で抜け出す力を持ったフェルナンジーニョが前線にいたことも大きいのかもしれないが、奪ったボールをこの日の仙台はシンプルに前線に繋ぎ、前へ出てきた大宮の守備の隙間を突く攻めができていた。
仙台の多くの選手が語っていた通り、連勝できたから全てよしというわけではなく、まだまだ細かな改善点(例えば失点にこそならなかったものの、自陣ゴール前での不用意なパス交換からピンチを作る場面などがあった)も残っているが、それでも開幕の磐田戦で見せた課題にすぐさま改善の姿勢が見せられたことには、手倉森監督も若干の安堵を抱いているのではないだろうか。
ともかく、大雪が降ったり様々な苦労があったが、無事に開催された7年ぶりのJ1ホーム戦は、仙台にとって祝祭のうちに幕を閉じた。
以上
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