3月9日(火) AFCチャンピオンズリーグ2010
全北 1 - 2 鹿島 (19:00/全州)
得点者:42' ENIO(全北)、70' 中田 浩二(鹿島)、90' 遠藤 康(鹿島)
ホームゲームチケット情報
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日本代表に選出される選手が少ないことからもわかるとおり、鹿島の選手たちは誰もが認める強さを有していなかったのかもしれない。見る人によっては評価の基準に達していない選手もいるのだろう。なぜなら、国内では3連覇という偉業を達成しどのチームに対しても勝負強さを発揮してきたが、アウェイの試合になるとその強さが影を潜めてしまうことが多かったからだ。しかし、ついにそのジンクスを打ち破るときが来た。昨季Kリーグ王者の実力を遺憾なく発揮してきた全北現代に対し、それをねじ伏せる強さで凌駕し、勝点3を奪い取ったのである。
鹿島の勝ちパターンは“先行逃げ切り”だとすれば試合展開は決して望ましいものではなかった。
全北現代は、ワントップのイ・ドングクにボールを当て、フォローに入ったエニーニョやルイスエンリケにポストで落として、そこからワンツーやスルーパスを狙ってきた。さらにサイドでチェ・テウクがスピードを活かしたドリブルで切り崩すのが主な攻撃パターンだった。さらに4-2-3-1の布陣で鹿島の最終ラインにプレスをかけ、ビルドアップを容易にはさせない構えを見せてきた。
そのため、鹿島は試合開始直後からしばらくは相手の圧力からパスミスが頻発。雨で滑るピッチにまだ慣れないこともあり、距離を詰められるとボールをキープすることができなかった。ボールの落ち着きどころがなく左サイドでフェリペガブリエルが体をはって切り込むくらいしか攻め手がなかったが、時間の経過とともに小笠原満男と中田浩二のコンビで相手のプレッシャーをかわすようになると、徐々にペースを掴み始める。31分には野沢拓也のシュートがポストを叩くなど、いくつかの決定機をつくることに成功する。
しかし、42分、注意していたゴール前のパス回しから完全に崩されてしまい先制点を許す。チェ・テウクがエニーニョとのワンツーパスで右サイドを突破しすると、グラウンダーのパスを中央に折り返す。ゴール前にいたイ・ドングクにはマイナスのボールになったが、イ・ドングクは走り込んできたエニーニョの前にうまく落とし、綺麗にゴールに流し込まれてしまった。
前半の終了間際の失点は、昨年の水原三星に大敗したときと同じパターンだっただけに、嫌な雰囲気が漂った。しかし、選手たちも昨年の経験を深く心に刻み込ませていた。「水原で最初に1点やられてみんなバラバラになったのがあったから」とは伊野波雅彦。失点のショックを引きずるのではなく辛抱することを自分やチームメイトに言い聞かせた。「前へ前へバランスを崩すのが一番嫌だった」とは中田浩二。水原のときは前半で追いつこうと無理をしてしまい、さらにカウンターで2失点目を喫するという最悪のパターンだった。その二の舞だけはなんとしてもさけるつもりだった。その結果、試合の流れを渡したものの大きなチャンスを与えることもなく前半を0-1で終了することに成功する。
そうした冷静な判断ができたのも事前のスカウティングも一つの要素になっていることは間違いない。全北現代は前半から積極的にボールを奪いに来る戦術をとってきていたのだが、その方法は、鹿島の選手がサイドバックの前でボールを持つと、マークしているサイドバックに加えボランチと2列目の中盤の選手との3人で囲み、ボールを奪う戦術をとってきた。そのため、ボランチには相当の運動量が求められている。それを見ていた伊野波は「後半15分くらいになったら多分落ちてくるだろう」と思っていたという。
外から見ている人間にすれば、相手と激しくぶつかり合いながらボールを奪い合い、厳しいアウェイの環境に寒さも加わり、さらには中二日の強行日程。鹿島の方が体力的に厳しいと思われたが、選手たちは冷静に試合を分析していた。
確かに後半に入ると全北現代のプレスのスピードは影を潜め、最終ラインも前半に比べると深くなり鹿島がボールをまわす時間が増えてきた。58分には小笠原が前を向いた瞬間に興梠慎三がDFラインの裏を取りフリーでシュートを放つ決定機をつくった。全北現代も67分に左FKをイ・ドングクがヘディングシュート。辛くも曽ヶ端準がゴールの枠外にはじき出す。中盤にスペースができはじめ、互いにゴール前に迫る回数が増え始めた。すると69分、FKのこぼれ球を拾ったフェリペガブリエルがふわりとしたパスをDFの背後に送ると、そこに待っていたのは中田。利き足ではない右足で放ったシュートは相手に当たったことでゴール右隅へ突き刺さるビューティフルゴールとなり鹿島が同点に追いついた。
この瞬間、スタジアムは凍り付いたように静かになった。このまま終わるかと思われたがアディショナルタイムに敵陣で小笠原がボールを奪うとそこに走り込んだのは途中出場の遠藤康。DFの間をすりぬけながらドリブルでゴール前に突き進み、中田に続いて利き足ではない右足で冷静に決勝点を奪って見せた。
最後の最後まで勝利への執念を見せ、勝点3をもぎ取るのは鹿島がリーグ戦の佳境に見せる真骨頂。国内での戦いと同じ姿を強敵である韓国の全北現代相手に見せることができたことは、過去2年とはまったく違うことを結果で示した。
ただ、鹿島にとって幸運だったことが一つある。全州ワールドカップ競技場に訪れた全北現代のサポーターが2000人にも満たない数だったことだ。前半終了間際に全北が得点を決めたとき、多くの観衆が詰めかけ圧倒的な雰囲気を持つスタジアムであったなら、また違った展開があったかもしれない。ただ、オリヴェイラ監督が最近よく言う「ホームの力」が全北には少なかったことは確かだ。この勝利によって予選リーグの突破はほぼ確実となった。次の山は5月12日のラウンド16だ。
以上
2010.03.10 Reported by 田中滋
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