3月6日(土) 2010 J2リーグ戦 第1節
水戸 2 - 1 栃木 (16:05/Ksスタ/3,581人)
得点者:37' 遠藤敬佑(水戸)、67' 吉原宏太(水戸)、78' オウンゴ−ル(栃木)
スカパー!再放送 Ch181 3/8(月)19:00〜(解説:前田秀樹、実況:加藤暁、リポーター:佐藤愛美)
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また今年も木山隆之監督が水戸に攻撃サッカーの魔法をかけた。しかし、それは昨季までのそれとは大きく異なるもの。荒田智之(磐田)や高崎寛之(浦和)といった強力なストライカーのパワーを生かしたサッカーから一転、今季は「中盤の技術力を生かして相手の間・間を突いていきながら、しっかりとボールを前に運んでいく」(木山監督)サッカーへと様変わり。背番号10をつける大橋正博を中心に中盤でのテンポのいいパスワークを主体とした攻撃サッカーへと変貌を遂げたのである。
序盤から“ブランドニュー攻撃サッカー”で栃木を圧倒した。2分に作田裕次からの鋭い縦パスを受けた右サイドの藤川祐司がセンタリング。吉原宏太が絶妙なタイミングで飛び込むものの、わずかに届かず。しかし、その一連の動きで「勢いに乗った」(藤川)水戸が猛攻を仕掛ける。6分、吉原のミドルシュートはGKにはじかれてクロスバー直撃。28分には大橋が右FKからチャンスを作るなど栃木を自陣にくぎ付けにした。そして37分、栃木のCKからのこぼれ球を拾ったのは大橋であった。
今季の水戸において大橋の存在は大きい。「五輪時代、中村俊輔や小野伸二とやっていた時と同じ感じがする」と吉原が言うように、彼らと引けを取らないパスセンスを持った大橋。チームの武器である機動力をうまく生かすことができる彼がいることで攻撃の幅が大きく広がることとなっている。さらに言えば、今季の水戸のパスサッカーも彼がいるからこそできるもの。間違いなく、今季の水戸の心臓なのである。
その大橋がボールを持った瞬間、前線で1人残っていた吉原は一度左サイドへ動く振りをして、右サイドに流れた。一瞬のうちに吉原の動きを確認した大橋は吉原の走りだした先へ絶妙なロングパスを送る。初動でDFの裏を突いた吉原はスペースへうまく抜けだし、ボールをキープ。そして、ペナルティエリア内に入るとDF2人をかわしにかかった。そこで猛然とゴール前に走りこんで来ていたのが遠藤敬佑だ。自陣ペナルティエリア内から駆け上がってきた遠藤。吉原がDFをかわしてゴール前に折り返したボールをゴールに流し込み、水戸に先制点を呼び込んだ。遠藤は「チームで走ることをテーマにやってきたので、それが生きてよかった」と笑顔を見せた。
後半に入ると、栃木のロングボール攻撃に苦しむこととなるが、67分に大橋を中心に細かなパスをつなぎ、最後は村田翔からのダイレクトスルーパスから抜け出した森村昂太が倒されてPKを獲得。吉原が落ち着いてゴールに流し込み、貴重な追加点を挙げる。その後、栃木のパワープレーに苦しみ、78分にロングスローからオウンゴールで1点を献上するものの、最後まで粘り強い守備を見せた水戸が7年ぶりの開幕戦勝利を手にした。
やはり木山監督はただ者ではなかった。これだけ主力選手が変わった中で攻撃サッカーを貫き通し、しかも、内容は昨季とはまったく違うものという、その引き出しの多さに脱帽せざるを得なかった。さらに開幕戦に新人の大卒選手4人を先発させる大胆さも見る者に驚きを与えた。「彼らができる力があるのは分かっていた。何のためらいもなかった」と木山監督は言うが、実績のない選手を開幕戦でいきなり起用することは勇気のいること。それをごく自然にやってしまうところに木山監督のすごみがある。監督がトライしているからこそ、選手たちもトライできているのだろう。チーム全体に満ち溢れたアグレッシブさで水戸は栃木を圧倒したのである。今季の水戸は若い選手も多く、これからの伸びしろも十分。「どれだけ成長できるか楽しみ」と吉原は笑顔を見せ、そして本間幸司は「昨季より上に行けると思う」と胸を張った。
限りない可能性へ――水戸は最高のスタートを切った。
以上
2010.03.07 Reported by 佐藤拓也
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