3月7日（日）J2 第1節 熊本 vs 千葉（15:00KICK OFF/熊本）
スカパー！生中継 Ch182 14:50〜（解説：池ノ上俊一、実況：山崎雄樹、リポーター：吉田明央）
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------

いよいよ迎える３年めのシーズン。開幕が近づくにつれて緊張感や期待感が高まって来た。目標だった10位以内という成績を達成できなかった昨シーズンの結果を受けて、高木琢也新監督以下新たな選手たちを迎えて生まれ変わった熊本は、「３年後のJ１昇格」を中期目標に掲げ、新たな一歩を踏み出す。その初戦の相手が１年でのJ１復帰を目指す千葉というのも、新しくなったチームの成長ぶりや方向性を示す恰好の組み合せと言えよう。

　千葉とは先月、ファン感謝イベントと合わせて行なわれたトレーニングマッチで対戦し、ミスを突かれて０−４というスコアで敗れた。しかしその後の会見で「はがゆい結果だが、逆に選手たちも奮起してくれると思う」と高木監督も話した通り、千葉というチームのイメージを具体的に肌で感じ取れたことは、単に映像や言葉で情報をインプットする以上の収穫となったはず。今季キャプテンを務めるMF原田拓が「開幕戦ではやり返したい」と話した言葉は、選手たち全員の思いでもある。

　その千葉だが、戦力的には今季のJ２の中でも突出している事は明らか。トップの巻誠一郎がボールを収めてタメを作り、スピード豊かな深井正樹ら両サイドが追い越し、そして山口慶を始め攻守の起点となる佐藤勇人、工藤浩平ら中盤が流動性を生かしてスペースに顔を出し、両サイドバックも次々とオーバーラップを仕掛けて前線をサポートするなど、攻撃にかかった時の迫力は、メンバーも違ったトレーニングマッチですら存分に味わっている。特に、前からの激しいプレッシャーでボールを奪ってからの切り替えの早さも顕著で、トレーニングマッチでもそうした形から実際に失点を招いた場面もあった。加えて、一時は戦列を離れていた新加入のDFマーク・ミリガンも開幕戦には間に合いそうで、開幕から好スタートを切るべくKKウイングに乗り込んで来るとなれば、ひと月前とはまた違うチームと捉えた方が賢明だろう。
　だが、この試合のあとで「開幕戦では簡単に勝たせてもらえないと思う」と千葉の江尻篤彦監督も話しているように、熊本も漫然とこの３週間を過ごして来たわけではない。始動してから一貫して取り組んできた、攻守の切り替えを早くする事と守備の意識づけは、高木監督の口から日々強いメッセージとして発せられた事で選手たちに浸透し、ピッチ内でもコーチングの声が増え、プレーにも表現されるようになった。５日の練習後の囲み取材で「勝つ為に必要なことは？」と問われた高木監督が、「まずは、ここまでやってきたことをピッチの上で出す事」と答えた通り、開幕戦独特の雰囲気にのまれる事なく、また、千葉が昇格候補だということを必要以上に考えすぎずに、どれだけ自分たちのパフォーマンスができるかが、初の開幕勝利へのひとつの鍵だ。

　試合の見どころを挙げれば、基本的には千葉の攻撃にどう対応するかということになろうが、争点としてはゴール前よりもむしろ中盤。千葉の出どころをいかに潰すか、そしてボールを奪ってからの攻撃への切り替えに注目したい。今週に入ってのトレーニングで意識していたのは、奪ったボールを失わないということ。一旦ボールを奪った段階でチーム全体が攻勢に転じた際に再びボールを失うと、危ない形に持ち込まれるリスクは一気に増す。そうした状況を作らない為にも、マイボールになったあとの繋ぎでミスをしないこともポイントとなる。
　失点が多かった昨シーズンの反省を踏まえ、守備の意識付けに取り組んできたのも事実だが、だからといって戦い方が守備的になるわけではない。局面に応じた的確な状況判断も、高木監督が就任以来選手たちに求めているもの。そしてそれを積み重ねることで、選手たちが「強い」と口を揃える千葉に対しても、「何かしらのミスや穴を見つけて、そこを広げる」（高木監督）ことも可能となる。

　「同い年だし昔から知っているから、考えている事はだいたい分かる」と、先月のトレーニングマッチ後に両監督が話した通り、お互いに探り合いながらのゲームは、攻守がめまぐるしく入れ替わるエキサイティングな展開になるに違いない。残念ながら明日の天気は快晴とはいかないようだが、果たして高木監督が言う「相手が嫌がるサッカー」を実践し、快晴のスタートを切れるか。その答えは、スタジアムで確かめたい。

以上

2010.03.06 Reported by 井芹貴志