1月6日(水)AFCアジアカップ2011カタール 予選Aグループ第5戦
イエメン vs SAMURAI BLUE(日本代表)(22:15KICK OFF/サヌア)
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1月6日というタイミングでの試合開催には驚かされた。ただ、振り返ると、09年の日本代表の戦いは1月20日に熊本で行われたイエメンとの2011年アジア杯カタール大会予選でスタートしており、まさに同時期に行われた試合だった。
1年前の試合では、その直前の指宿合宿で出た課題。その時点ではテンポのある攻撃、を意図していたが、と同時に相手が極端に守備的な陣形を敷いており、いかにその固い守備を崩すのかがポイントとなっていた。1年前のイエメン戦で代表初キャップを記録した乾貴士(C大阪)は「相手はこの前の対戦の時は引いていた」とその時の戦いを振り返る。
昨年1月に熊本で日本代表と対戦した際のイエメン代表は、興梠慎三(鹿島)、田中達也(浦和)の2トップに対してマンマークを付け、さらにその背後に2枚のCBを並べていた。これによりサイドや中盤に大きなスペースが生まれ、それが油断につながっていた。日本代表はプレーが雑になり、一発のシュートを狙ってみたり、強引な突破が目立つようになったのである。あの試合から1年が経ち、この試合はイエメンのホームゲームとして行われる。そのため、前回の対戦は比較対象としては適切ではないのかもしれない。ただ、もし仮にイエメン代表が日本代表を過度にリスペクトすることで、かえって楽な展開になるような事があるとすれば、そういう時こそ気持ちを引き締める必要があるだろう。前回の対戦では立ち上がり直後の7分の先制点により楽勝ムードになったにも関わらず、一時は同点に追いつかれるなど苦しい戦いを強いられている。どれだけ力の差があるとしても、勝負は終わるまで分からないという事を肝に命じてプレーに臨んで欲しいと思う。
年初のこのタイミングでの試合開催に関しては、日本サッカー協会とイエメンサッカー協会、そしてAFCといった関係各所との協議の結果設定されており、Jリーグとの兼ね合いもあって比較的若い世代の選手が招集される事となった。19人の選手中、初代表が13人に上るという事実を見てもそのフレッシュさがわかると思う。前述の乾は「若いので、遠慮せずにどんどんチャレンジして行きたい」と意気込みを口にすると「(ホームの)相手に対して点を取れたらいいと思います」と話していた。また今回がフル代表初招集となった大迫勇也(鹿島)は「しっかりと起点を作り、味方の攻める時間を作りたい。その中で点を取れれば良いと思います」と決意を述べていた。
岡田監督が提唱するいわゆるコンセプトは、その浸透まで長い時間と丁寧な指導を積み重ねて来た。そのコンセプトが初代表選手を数多く擁すこのチームでいきなり表現されるとは思わない。ただ岡田監督は1月1日にスタートさせた大阪合宿で、紅白戦を中心に急ピッチでチーム作りを進めている。実際の試合に似た状況を作り、イメージを共有させようとしているのである。
イエメンへの移動後は、移動の疲れや2300mにもなるという高度への順応のため、全体的に軽めのメニューとなっている。ただ、そうした中でもより実戦に即した練習が目立っている。例えば1月4日の練習ではポストにつけるクサビのパスとそこからの展開のパス。そして、オフサイドラインを意識しつつ飛び出す選手へのスルーパスとを組み合わせたパス練習が行われていた。これは明らかに平均身長の高い大型FWを並べた日本の攻撃陣をどう生かすのか。そして起点を作り時間を作った後に、相手のラインの背後にいかに飛び出して行くのか、という攻撃を意図したものであり、実践的なものだったと言える。
4日の練習では、全体練習開始から30分ほど経過したタイミングで選手が攻撃と守備とに分けられ、守備のグループに入った岡田監督がつきっきりで指導する場面も見られた。熟成を進めるにはあまりに時間が足りていない中、イマジネーションの領域が大きい攻撃と比較して組織的な連動性の必要性がより高い守備練習に岡田監督がつきっきりで指導するのは妥当な判断であろう。
CBでの先発が予想される吉田麻也(名古屋)は、全体練習後に岡田監督と話をし「サイドで1対1になった際にどう対処するのかを確認」していた。名古屋の時のルールと違いがあるのか確かめたのである。その吉田はこの試合に対し「CBでのポジションを目指すための多くないチャンスだと思っています。今回で最後のつもりでやっています。これからJではなくなるので(オランダのVVVフェンロへと移籍)、みんなよりも出る機会も少なくなる。天皇杯に出て、練習も2回ほど少ない(天皇杯決勝に出場した吉田以外の選手たちは1月1日、2日の両日にかなり密度の濃い練習をこなしている)ので頑張りたいと思います」と話し、強い意欲を見せていた。もちろん吉田以外の選手も目の前のイエメン戦、そして、南アフリカW杯本大会に向け、高いモチベーションで試合に臨むのは間違いない。戦術的な熟成度は期待できない試合となるだろうが、だからこそ局面での1対1で個々の能力を存分に発揮しつつ、個人プレーに過度に走らないプレーを見せてほしい。
ちなみに日本代表はこのイエメン戦で引き分け以上の結果を残せればアジア杯カタール大会への出場権を獲得できる状況にある。すでに香港の敗退が決まっており、予選突破の可能性は日本、イエメン、バーレーンの3チームに絞られている。そうした中、イエメンとのこの試合で日本が引き分けた場合、日本は予選1試合を残して勝点を10点とする。一方のイエメンは2試合を残し勝点は4点となる。日本が1敗。イエメンが2戦2勝した場合、勝点は10で並ぶが、その場合当該チーム同士、この場合は日本とイエメンの2試合の直接対決の勝点で勝ち抜けが決められる。つまり日本は1勝1分けで勝点4。イエメンは1分け1敗で勝点1となり日本が勝ち抜けるのである。もちろん選手たちは引き分けでOKなどとは一言も口にしていない。アウェイではあるが、きっちり勝利して予選突破を決めて欲しいと思う。
なお、現地の治安の悪化が報じられ、心配されている方も多いかとは思うが、開催を決定した主催者のAFCとイエメン当局が連携し厳重な警備体制が敷かれており、スタジアムでもそうした体勢が取られる予定だ。何事もなく、滞りなく試合が終わることを期待したいと思う。
以上
2010.01.05 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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