12月12日（土） 第89回天皇杯準々決勝
鹿島 1 - 2 Ｇ大阪　（15:04／カシマ／11,053人）
得点者：29' 山崎 雅人（Ｇ大阪）、44' 田代 有三（鹿島）、69' 山崎 雅人（Ｇ大阪）
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ちょうど2週間前のリーグ戦と同じチームの対戦となった試合はG大阪が雪辱を果たした。
12月とは思えない陽気に包まれたカシマスタジアム。その影響からか試合開始直後から鹿島のミスが目立っていた。それは選手も感じていたようだ。試合後、田代有三は「立ち上がりはフワッと入るところがあった」と話している。オリヴェイラ監督も何度もタッチライン際まで近づき選手たちに指示を送った。
「確かに前半はミスが多すぎたかなと思います」
監督にしてみればこれだけミスが出てしまってはプランどおりに試合を運ぶことができない。立ち上がりから橋本英郎や二川孝広の飛び出しを許し、ゴールを脅かされる展開となってしまった。

しかし、6分。左サイドから本山雅志が素早くスローインを行うと興梠慎三が抜け出しシュート。惜しくもバーにはじかれたものの、この一撃で鹿島の選手たちは落ち着きを取り戻していった。とはいえ、この日の観客数は11,053人。2階席は閉じられており、ほぼ満員となった2週間前の激戦にくらべると寂しさを禁じ得ない。自ずと試合のテンションもそれなりのレベルに留まっていた。

そんななか、ひとつの精度の高いプレーが得点を生む。29分にFKを得た遠藤保仁が蹴ったボールはフリーで走り込んだ山崎雅人の頭をとらえ、角度が変わったボールは鹿島のゴールへと吸い込まれG大阪が先制点を奪った。先制して逃げ切るのが勝ちパターンである鹿島に対して先手をとることは大きなアドバンテージ。この得点でペースを掴むと、前線の4人の距離感は絶妙の間合いを保つようになる。鹿島のプレスを無力化する場面も多くなり、鹿島は耐える時間が多くなった。

しかし、好事魔多し。このまま終わると思われた前半のロスタイムに鹿島が同点に追いつく。中盤でのルーズボールの奪い合いが興梠のもとに転がり、すぐさま反応した田代がラインの裏に飛び出してGKと1対1となるビッグチャンス迎えた。加地亮が必死に追いすがりシュートを食い止めようとしたが間に合わない。田代のシュートは右ポストを直撃してしまったものの、なんと跳ね返りが田代のもとに帰ってくる幸運に恵まれ、無人のゴールに流し込んだ。

後半になるとお互いに攻め合う展開に。どちらに点が入ってもおかしくない流れだったが、最後の精度が高かったのはG大阪だった。69分にセカンドボールの争いを制した二川がゴール前までドリブル。右サイドにパスをはたくと橋本の折り返しをまたも山崎が押し込みG大阪が突き放す。鹿島はゴール前の内田篤人にクリアミスがあったのが痛かった。
その後も互いに攻め合い、終盤には曽ヶ端準がゴール前にあがり準決勝への執念を見せる場面が見られたものの、そのまま試合終了。G大阪が準決勝へ進出した。

試合後の記者会見では「まずはホッとしています。アントラーズと今年、4つ目のゲーム。すべて結果が出ていなかったですし、2週間前にガンバらしさが全く出せなかったが、そのリカバーができた」と本音を吐露した西野朗監督。4回続けて同じ相手に負けるわけにはいかなかっただけに、「ホッとしています」というのは正直な心情だろう。天皇杯のタイトルに向けて、鹿島という山をひとつ乗り越えたのは大きな意味を持つだろう。
しかし、それに対してすでに来季への布石を打ったのがオリヴェイラ監督だ。
「あとは正直に言いますと、5-1で勝った試合（リーグ戦33節）の方が、ガンバは内容的には良かったのではないかと思います」
どちらの試合がより“ガンバらしかった”かは、西野監督が一番わかっているはずだが、この一言で煙に巻いた。このカードは来季もリーグを代表する勝負となるのは明らかだ。来季に向け、監督同士の虚々実々の駆け引きを垣間見た気がした。

また、そのときピッチでは鹿島のゴール裏には今季限りでチームを去ることが決まったダニーロが姿を現しサポーターに最後の挨拶をした。スタンドからは「ダニーロ」コールが鳴り止まず、“Obrigado DANILO”といった段幕が無数に掲げられ、あちこちから別れを惜しむ声が聞かれていた。ダニーロもまだまだ30歳。次の所属チームはまだ決まっていないが、ブラジルの強豪チームで戦うことになるのだろう。地球の反対側でその活躍を祈りたい。

以上

2009.12.13 Reported by 田中滋