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【第89回天皇杯準々決勝 仙台 vs 川崎F】レポート:堂々たる内容で、J1準優勝の川崎Fに仙台が競り勝ち、J2勢の夢を乗せて準決勝へ。川崎Fはまたもタイトル獲得ならず、シーズンを終えることに。(09.12.13)

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12月12日(土) 第89回天皇杯準々決勝
仙台 2 - 1 川崎F (13:04/ユアスタ/18,340人)
得点者:35' 中島裕希(仙台)、89' 村上和弘(川崎F)、108' 平瀬智行(仙台)
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リーグ、ナビスコカップと、続けて「あと一歩」のところで涙を飲んだ今季の川崎F。残された最後のタイトルに向けて、意気込みはかなりものだっただろう。ユアテックスタジアム仙台の南側スタンドを埋めた川崎Fサポーターの思いもまたしかり。
しかし結果として、川崎Fの今季はここ仙台の地で終わりを告げることに。代わって29日の国立競技場へはせ参じることとなったのは、ちょうど一週間前にクラブ初タイトルであるJ2優勝を成し遂げた仙台だった。
…このような書き方をすると、まるで川崎Fが格下相手に取りこぼしたような印象を与えかねないが、さにあらず。戦前の対策も、披露した内容も。魅せた情熱においても、仙台が今回の勝利に胸を張る上で支障となるものは何もない。
確かに、J1に一度勝った程度では、それを伝える内容が仙台を主語とした物ではなく「○○、格下に敗戦」となるのは仕方のないこと。だが大宮、F東京、そしてJ1で2位の川崎Fと、J1勢に3連続勝利を収めて堂々と準決勝に進出したとなると、話は変ってくる。
堂々たる勝利と、準決勝進出。今、仙台は今大会の主役である。

川崎Fは今季J1リーグで17得点のジュニーニョが直前の負傷で欠場。仙台も第3クールのラストスパートを牽引したボランチ富田晋伍が、試合の前日になって腰痛によってメンバーから外れるなど、若干のメンバー変更があったこの試合。
しかし立ち上がりからの流れを作ったのは、急遽代わりに出場することとなった選手だった。
仙台はこの試合、川崎F攻撃陣にDFライン裏への飛び出しを許さないことを基本線としていたが、一方の川崎Fは、ゲームメーカーの中村憲剛を3人の中盤の底に置き、縦パスの供給源をプレスの届かない位置に配することで、前線のスピードを活かそうとした。
だがこの中村に猛然とかみついたのが、中央大学で中村の後輩だった田村直也。富田に代わってスタメンを務めた田村の「どう猛さ」を、仙台・手倉森誠監督は活かすべく、普段の4−4−2によるブロック守備とは違う役割を与え、田村を送り出していた。それは中盤の底を飛び出し、普段は前線のFWがその任を担っている相手ボランチへのチェックに、田村も参加させること。
立ち上がりこそ若干ばたついた仙台だったが、一旦ペースをつかむと、敵陣深い位置でボールを奪ってのカウンターが機能し始める。崩れる川崎Fの布陣。そして35分だった。関口訓充から奪ったボールで川崎Fは鄭大世を走らせたが、このスルーパスが長くボールは再び仙台へ。 梁勇基が中盤でぽっかり空いたスペースにいた関口へ再度ボールを預けると、前を向きドリブルを開始した関口はDFを引きつけた後、左サイドから走り込んできた中島裕希へスルーパス。受けた中島がペナルティーエリアに入った直後に振り抜いた右足からのシュートが、反応したGK川島永嗣の脇を抜け、グラウンダーでゴール右隅に決まる。攻守に狙い通りだった前半を象徴するかのような形で、仙台は最良の前半を終えた。

とはいえ、このままの流れで試合終了を迎えられるなど、きっと仙台の側の誰もが思っていなかったに違いない。そして実際に試合展開は、後半勝負を考えていたという川崎Fに傾いていく。仙台がカウンターから決定機を何度も迎えるも、川島の尋常ならざる一対一の強さによって追加点を奪えずにいると、65分辺りからは川崎Fが仙台を自陣ゴール前に抑え込む。ここまで上手に使うことが出来なかった右サイドバック、森勇介のスピードをフル活用、ここを突破口とすると、やがて始まる全方位攻撃。前半はうまく体力を使うことなく守れていた仙台の守備、特に中盤が、ボール回しに翻弄されてスタミナをすり減らしていく。それがさらに守備ブロック内のスペースを生み、中村や谷口博之、田坂祐介といった中盤の選手に入り込まれるという悪循環。
それでも仙台は勝利直前までこぎ着けたのだが、ここがJ1最多得点クラブの意地か。後半ロスタイム、右サイド、森が上げたファーへのクロス。シーズンを通じて堅守を見せていた仙台GK林卓人が飛び出すが、周囲の選手ともつれてクリアならず。落下点には村上和弘。2006年まで仙台の一員としてプレーしここユアスタを湧かせていた村上がダイレクト放ったボールは、決して短い距離ではなかったもののGKのいないゴールマウスを的確に捉えた。土壇場で川崎Fが同点に。3人目の選手交代で足をつった朴柱成を下げ、一柳夢吾を投入するなど、ゲームを終わらせる準備をとっていた仙台にとっては痛すぎる同点弾である。

だが、ベスト8の時点でクラブ初、準決勝進出などとなればまさに快挙といえる仙台。もともと失う物がなかったのだから、何も下を向く必要はない。延長前半開始直後、左サイドバックに移った森からのクロスに完璧に合わせた黒津勝のヘッドがゴールを射貫いていたら、さすがに戦意も消失したかもしれないが、結果的にこの試合を通じて、リードを奪われなかったことは事の他大きかったか、足は止まっても精神力だけはつながっていた。いや、足すらも止まっていなかった選手が仙台にはいた。

延長前半も無得点で終わり、PK戦もおぼろげながら見えていた108分、仙台の左サイドでボールを持ったのは関口。この時間でも失われてない軽やかな足技で、マークに戻っていた黒津をいなすと、そこから右足でクロス。素晴らしい軌道でニアの平瀬智行の頭を捉えたボールに対して、平瀬は迷うことなくバックヘッドを放つ。この日数えただけでも4度の一対一を止めていた川島だったが、この不意を突いたヘッドのボールをはじき返すことは出来なかった。
この素晴らしいシーズンを、まだ終わらせて欲しくない。そういう仙台サポーターの願いが乗ったかのような柔らかい弾道で、ボールはファーサイドに吸い込まれていった。
ロスタイムを含めて10分前後の残り時間、同じ轍を踏まずに守りきった仙台は、こうしてついに準決勝進出となった。

それから遅れて、仙台の準決勝対戦相手が決まったのだが、その相手は今の仙台の立場にとっては、若干因縁めいた相手となった。
天皇杯におけるJ2所属クラブの準決勝進出は、第86回大会の札幌以来3大会ぶりなのだが、その札幌の元日国立への道を阻んだのはG大阪。そして29日の準決勝、仙台が国立競技場で戦うのも、このG大阪である。
自分たちの夢、そして余計なお世話かもしれないがJ2勢の夢もちょっぴり乗せた、初々しいセミファイナリスト。仙台の旅はまだ続く。

以上
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