12月5日（土）J2 第51節 横浜FC vs 福岡（12:30KICK OFF/日産ス）
スカパー！生中継 Ch185 12:20〜（解説：前田秀樹、実況：西達彦、リポーター：三須亜希子）
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史上最長の51試合となったJ2も最終節を迎える。来シーズンに向けた動きが聞こえてくる季節でもあり、試合に臨むスタンスも複雑なものが混じりそうになるが、来年も昇格を目標に掲げるであろう横浜FCと福岡の両チームにとって、単に「終わり良ければすべて良し」というだけでなく来季につなげるためにも、しっかりと自らのサッカーを完遂し勝利を挙げることが大事な一戦となる。

その理由は、篠田善之監督の続投が決まった福岡が、シーズン終盤にかけて完成度の高いサッカーを見せつけていることに加え、横浜FCは昨年の篠田監督の就任後の4回の対戦で福岡に一度も勝利しておらず、今年は2連敗中。横浜FCにとっては、来季も篠田監督率いる福岡と対戦しなければいけないわけで、苦手意識を払拭するためにも福岡のストロングポイントを抑えて勝利することが求められる。逆に福岡は、好調をキープして来年につなげたいと考えているはずだ。

樋口靖洋監督が「福岡は戦っていても個人のレベルが高い」と述べているように、福岡は大久保哲哉、高橋泰の前線の2人、積極的な両サイドハーフ、そして味のあるプレーをする久藤清一など、粒のそろった個の力が有機的に連動するサッカーを見せており、この10試合で負けはたったの1試合。「今一番良い調子の良いチーム」（樋口監督）というのは間違いないだろう。そして、福岡の前節・水戸戦は、その有機的な連動で完勝したと言って良い試合だった。特筆すべきは大久保と高橋が好調であるだけでなく、その2人の距離感が合っていること。そして、前でボールを収めてくれる安心感をベースに、守備から攻撃へ一度切り替わると、ゴール前に人数を掛ける切り替えの鋭さを90分間ピッチの上に表現し続けたこと。その動きに迷いがないことが、ここのところの好調の主因であると見て良い。

その「守備から攻撃への切り替え」というのは、今年の横浜FCにとってもシーズンを通した大きなテーマでもあった。組織的な守備で奪ったら、ボールを動かしながら追い越す動きを入れて、ゴール前に人数を掛けていく。シーズンを通して、この動きを磨くためのトレーニングに多くの時間を割いていた。試合を重ねる毎に徐々にこの動きがピッチで表現できるようになり、第3クールでの結果に繋がっていった。そして、「今まで通りやっていることを積み上げる作業をやるだけ」と指揮官が語るように、最終戦ですべてを出しきるための丹念な準備を行っている。「切り替え」を成功させる鍵は、ボールを奪った後のプレー。「切り替えをスムーズにするためにも単純なミスをなくすことが大事」と三浦淳宏が語るが、切り替えた後にボールを失うと決定的なピンチを招くことにもなり、次の切り替えでの動き出しも遅くなってしまう。福岡には奪った後に大久保に入れればという安心感があるだけに、横浜FCにとってもボールを奪った後のプレーをいかに成功させるかが大きなポイントとなる。

試合は、切り替えのシーンとその周辺が大きな見どころ。奪った後のボールから縦にクサビのパスを入れる場面と、そのクサビをサポートの選手につなぐ場面。その成否によっては、試合のペースが大きく変わるダイナミックな展開になることが予想される。横浜FCは、前節の札幌戦でキリノ、ハファエルに入るクサビのパスへの対応で後手を踏み、前半ペースをつかむことができなかった。後半には修正がなされたものの、最終節でこの二の舞いを演じてはいけない。大久保、高橋にボールが入る場面の対処で勝利して、福岡の切り替えを寸断していきたい。好調の福岡に対抗するためには、こういった局面での集中が重要になる。

樋口監督は「チームとしての一体感を常に言ってきた。今後どんなスタイルになっても、それがチームの財産になってほしい」と語った。この試合で、一体感を持って積み上げてきたものを表現すること、それはこの最終戦だけでなく、クラブ、チーム、選手の明日に繋がる最大のタスクであり、それは、横浜FCも福岡も同じ。樋口監督がシーズンを通して言い続けてきた「やりきる」を実現する一戦を楽しみにしたい。

以上

2009.12.04 Reported by 松尾真一郎