12月5日（土）J2 第51節 草津 vs 栃木（12:30KICK OFF/正田スタ）
スカパー！生中継 Ch172 12:20〜（解説：佐藤正美、実況：山田浩史、リポーター：円戸由香）
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よくぞ、こんな粋なマッチメークをしてくれたものだ。草津の２００９シーズン最終戦の相手は、今季Ｊ２へと参入してきた宿敵・栃木。最終戦は、チームを去りゆく選手への思いも加わり感傷的な雰囲気も混ざってくるが、今回はそんな空気に浸っているばかりではいられない。Ｊ２の先輩である草津は今季、栃木から勝利を挙げることができていないのだ。草津は２００９シーズンラストゲーム、そして北関東ダービー最終戦で栃木を倒して選手たちを送り出す。栃木を下すことが草津のプライドだ。

草津は１１月２６日に今季限りでの契約満了８選手を発表した。８選手の中には、２００２年のザスパ草津誕生時（県リーグ）からチームに在籍した唯一の生え抜き・寺田武史、翌２００３年の関東リーグ２部からプレーした山崎渡というＪ２昇格を支えた功労者も含まれていた。さらには、２００７年に草津へ加入し闘志溢れるプレーでゴールマウスを死守した鬼神・本田征治、今季の主将を務めた喜多靖らもチームを離れることになった。今ゲームは、個性溢れるプレーヤーの草津でのラストマッチとなる。

前節は、寺田、山崎、本田らが先発出場、昇格レースの真っ只中にいる湘南相手に堂々たるプレーを演じて勝点１を獲得した。前半２０分過ぎには、本田がアジエルのＰＫを魂のブロック。山崎は豊富な運動量を活かして再三に渡りゴール前で飛び込み、寺田はスピードを活かしてサイドを駆けた。彼らの意地が注入されたチームは、今季のベストパフォーマンスに近い内容で湘南を圧倒した。「まだサッカーを続けたいという気持ちをピッチで表現したかった」（本田）。彼らの情熱は、栃木戦でも大きなパワーをチームにもたらすことだろう。

ただ、湘南相手に互角以上の戦いができたからと言って栃木相手に優位な戦いができるとは限らない。草津は第１クール、湘南と引き分けた直後の栃木戦で緩慢なプレーをみせて屈辱の敗戦を喫しているのだ。草津は湘南との相性が良いが、栃木との相性は確実に悪い。第１クールのように慢心がピッチに出れば、再び痛い目に合うことだろう。栃木・松田浩監督は、相手の長所を消してくるタイプの指揮官。６試合連続で勝利から遠ざかっているが、決定力に問題があるだけで守備システムは組織されている。草津がゴールを奪うことは簡単な作業ではない。限られたスペースの中で、来季の去就が注目されるエース都倉賢と、ベテラン高田保則の２トップがどのような動きを魅せるかもポイントだ。

栃木は左サイドバック入江利和、センターバック落合正幸、そしてボランチ米山篤志が出場停止、さらにケガ人も重なっており台所事情は確かに苦しい。ただ、北関東ダービー２００９の優勝の可能性が残されておりチャンピオンカップをサポーターに届けるために死力を尽くすことだろう。また、若林学、石舘靖樹、栗原圭介ら契約満了を宣告された選手たちがサッカー人生をかけて牙をむいてくるのは間違いない。ケガで長期離脱していた佐藤悠介が戻ってきたのも草津にとっては厄介だ。

草津はＪ２参入後の過去４シーズン、最終戦で勝利を収めることができていない。ただしホーム戦となった２００６、２００７シーズンの最終戦はサポーターの声援をチカラに変え、上位陣相手にドローへ持ち込んでいる。今ゲームでもサポーターの声が選手を後押しすることだろう。草津は選手、サポーターが一体となってラストゲームの勝利を目指す。

草津温泉街で働きながらＪ２昇格を果たした山崎は「Ｊ昇格は、クラブの夢と自分の夢が同時に叶った瞬間だった。草津でプレーすることで人間としても成長することができた」と７年間を振り返る。そして最古参の寺田は「２００２年の入れ替え戦で勝って関東リーグに昇格したときは、本当に嬉しくて涙がこぼれた。１試合１試合が必死だった。栃木戦はザスパでの最後のゲームになるが、泥臭くてもいいから勝利に貢献したい」と忠誠を誓う。寺田、山崎だけではなく、その他の選手たちもクラブを発展させるために努力をしてくれていた。草津のために闘い抜いた選手たちの花道を飾るのは、勝利しかない。

以上

2009.12.04 Reported by 伊藤寿学