スカパー!生中継 Ch181 15:20〜(解説:柱谷幸一、実況:下田恒幸、リポーター:小野寺志保/高木聖佳)
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■リーグ戦上位クラブ 直近4節の試合結果
第30節 | 第31節 | 第32節 | 第33節 | 第34節 | |
川崎F | ○7-0 広島 | ○3-2 千葉 | ●0-1 大分 | ○1-0 新潟 | 柏 |
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☆柏側プレビューはこちら
こんなに、いいクラブはないと思う。選手はみんな素直で、真っ直ぐで、サポーター思いで。サポーターはただひたすらに選手を思い、サポーターとして彼らができる最大限のこと。つまり、ただひたすらに声を出し、鼓舞することに心血を注ぐ。そんな選手とサポーターを、フロントが数々の仕掛けで取り持つ。
こんなに、いいクラブはないと思う。勝つに値するチームなのかどうかは正直なところ分からない。ただ、知れば知るほどに、勝って欲しいと思えるチームなのである。知れば知るほど、快いから。人間が根源的な領域で持つ、良心でつながっている気がするから。お互いを尊重し合う、心地いい関係が築けているから。みんなが顔が見える距離にいて、それぞれがしっかりとコミュニケーションを取れていて、お互いに分かりあえているように思うから。だから、知れば知るほどに、勝って欲しくなる。笑って、泣いて、笑って、そして泣いて。だけど、それでもみんながひとつになる。そんなこのクラブに勝って欲しい。
ただ、状況は厳しい。要所要所で取りこぼしてきたつけが出てしまった。幾つもあった大一番で勝てず、鹿島の後塵を拝す形で最終節にまで来てしまった。とはいえ、この最終節までリーグタイトルの可能性を残したクラブが2つだけであることを考えれば、それだけでも素晴らしいことなのかもしれない。ただ、それだけで満足していたら、成長はない。なぜならば、川崎Fの目標はタイトルにあるから。善戦は評価されてしかるべきかもしれない。だけど、それは目標としている戦いではない。
状況は、厳しい。戦いの舞台は、日立台。カップ戦も含め過去4度の対戦は2分2敗の成績に終わっており、勝ちはない。そして鹿島を逆転しリーグタイトルを手にするには、まずは勝たなければならない。大一番で勝てなかった勝負弱さ。そして、勝たなければならない試合を取りこぼしてきた今季の戦いを振り返れば、状況は厳しいと言わざるを得ない。
ただ、だからといって挑戦を諦めたらそこで進歩は止まってしまう。プロチームとしての存在意義すら見いだせなくなる。強い弱い、有利不利は事前に大まかにわかっている。ただそれが試合結果とどれだけリンクしているのかと言えば、分からない。だから、全力で挑戦する価値がある。結果がどう出ようと、挑戦すべきである。沢山の人の気持ちに支えられているから。
1−0で辛勝した新潟戦の試合後。知り合いのチーム関係者にこんな風に声をかけた。「1年間お疲れ様でした。とりあえず、一段落ですね」。その関係者は笑顔で「ありがとうございます。ただ、もう1試合あるんですよ」と口にした。そんな受け答えの中で思い出した。キャパシティが少ない日立台を訪れることのできる川崎Fサポーターは数少ない。だからこそ、生で見ることができないサポーターを等々力競技場に集めるのである。川崎Fにとっての聖地である等々力でパブリックビューイングが行われるのである。試合当日。日立台で戦う選手たちには2000人に届こうかという数の川崎Fサポーターの声援がある。そしてその背後には、行きたくても行けない大勢のサポーターの気持ちがある。そしてその背後に、パブリックビューイングを運営するスタッフの影の汗がある。そんな気持ちを背負って選手たちは戦う。
この大一番を前に関塚隆監督は「自分たちの力を引き出す」事の重要性を口にし、それに続けて「足を止めずに行くことが大事だと思います」と述べている。戦術面についてはもちろん対策は練られているはず。ただ、それ以上に走り続けることを重視しているのは最下位の大分に敗れたことの反省を踏まえてのことだ。
「今季はいい年だと思いますが、最高の年にするにはもう少し必要なものがあります。土曜日に優勝できれば最高だと報告できると思います」と決意を口にするのはジュニーニョ。「自分たちの目標を達成するためにやるだけ。小さいところは頭に入れず、目標を達成するために頑張りたい」と険しい表情で話していた。「鹿島も頑張ると思うけど、柏も頑張る。楽ではない」との認識で、下位チームが相手である事で生まれがちな油断を戒めていた。
そのジュニーニョとともにチームの要となっている中村憲剛は「とにかくまずは柏に勝つだけ。ここまでタイトルは二つ逃している。天皇杯はありますが、この一つに凝縮される。90分の戦いに集中したいと思います」と目の前の試合にかける思いを、口にする。
事態は簡単ではない。降格圏の16位が確定した柏が切れているかというと、そんな事はないだろう。彼らにも背負うものがある。「どこまでも着いていくぞ!」と叫んだサポーター。そしてチームを去らざるを得ない選手たちの思い。優勝争いとはまた違う次元の高いモチベーションをぶつけてくるはずだ。だからこそ、勝たなければならない。そうした相手に勝てなければ、どこまで行っても「いいとこ止まりのチーム」と言われ続ける。目の前の壁は高いのかもしれない。ただ、その壁に挑戦し続けなければ、乗り越える可能性は皆無である。この1試合に彼らの100%をぶつけて欲しいと思う。プロとしての矜持を胸に。そして彼らを信じるすべての人達のために。90分の試合後に、笑顔の結末が待っている事を、切に願っている。挑戦し続ける限り、可能性は生き続ける。
以上
2009.12.04 Reported by 江藤高志