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【J2:第50節 熊本 vs 富山】レポート:チームを離れる地元出身選手2人のゴールで、熊本が富山をくだして初の3連勝。ホーム最終戦は、歓喜と感涙で満たされた。(09.11.30)

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11月29日(日) 2009 J2リーグ戦 第50節
熊本 2 - 0 富山 (13:04/熊本/16,585人)
得点者:55' 小森田友明(熊本)、89' 山口武士(熊本)
スカパー!再放送 Ch182 11/30(月)17:00〜(解説:池ノ上俊一、実況:山崎雄樹、リポーター:吉田明央)
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★スカパー!×ELGOLAZO×J's GOAL J2シーズン表彰2009★
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 サッカーとしては、決して良くはなかった。でも、2009年シーズンのロアッソ熊本の最後のホームゲームとしては、最高の試合。熊本も富山も、Jリーグに入ってまだ1、2年。どちらも昇格を争っているチームではない。上位も争っていない。中位にいるクラブ同士の、シーズン終盤の、51試合もやるリーグ戦の消化試合――両チームに何の関係もない人から見れば、そう捉えられても無理はないゲーム。だけれど、あんなに劇的なことが起こるから、サッカーが面白いし、自分の住む街にJリーグのクラブがある幸せを感じる。熊本は、幸運にも恵まれて3試合連続完封でJリーグ加入後初の3連勝を飾り、2009年のホームゲームを歓喜と涙で締めくくった。

 だが、「うちのチームにしたら、珍しく前半から攻撃的と言うか、たくさん形もできて、すごく積極性が見られた」と楚輪博監督が試合後の会見で話した通り、試合を優位に進めていたのは富山の方だった。引退を発表した小林弘記を9試合ぶりに先発GKに起用した熊本は、今シーズン限りでチームを離れる事になった木島良輔と小森田友明が2トップを組む。北野誠監督のもとで取り組んで来たポゼッションサッカーの集大成を16,585人の観客に見せたいところだったが、「いろんな思いのあるゲームだった事もあって、少しぎこちない部分があった」(藤田俊哉)のか、ボールを動かしながらも、ブロックを作った富山の守備を崩す事ができない。「前半は小森田と木島の動き出しが遅かった」(北野監督)ことで、シフトチェンジするためのクサビが入らず、逆にイージーなミスでボールを奪われて逆襲を食らう場面も。一方の富山は、前線でのチェイシングも含めた堅い守備から切り替える攻撃が縦に早く、21分には石田英之が抜け出してGK小林をかわしシュートまで持ち込むが、ここは10試合ぶりに先発したチョ・ソンジンが体を張って止める。直後に石田が再び狙うが、これはポストに阻まれた。

 このプレーでチョが負傷し、木島や小森田と同じく今季で契約満了となった河端和哉がピッチへ。キックオフ時にキャプテンマークを巻いていた藤田は、プレーが切れたところで、それを河端に渡す。富山はこの石田のシュートを契機に、前線の石田と左右の朝日大輔、木本敬介が頻繁にポジションチェンジを繰り返して間のスペースを衝き、野嶋良と長山一也からのボールを引き出すなど攻勢を強める。しかし、「前半は無理して上がらないでバランスを取って、ゼロでしのぐことを考えていた」と市村篤司が話したように、熊本はこれまでに積んで来た経験を生かし、最終節を前に警告3枚でリーチのかかっている福王忠世と交代で入った河端という、九州リーグ、JFLをともに戦ってきたメンバーを中心に、押し込まれる時間帯をしのいだ。

 スコアレスで迎えた後半の立ち上り、富山は右CKからニアですらしたボールを石田が胸で押しこむ。上から見ていてもボールはゴールラインを割っていたように見えていたがプレーは続き、小林がかき出したあとクリアして結局はゴールならず。逆に55分、西弘則から右サイドでボールを受けた市村がドリブルで持ち込み、切り返してシュートを狙う。一旦富山の選手に当たったボールが自分の足元に転がって来た小森田が、これを落ち着いて流し込んだ。市村がシュートを撃った時点で小森田がオフサイドポジションにいたためアシスタントレフリーのフラッグは揚がっていたが、前田拓哉主審はこれを得点と認め、ラッキーなかたちで熊本が先制する。

 しかしその後は、60分に藤田、木島とつないで西がGK中川雄二と1対1になったくらいで、熊本はなかなかチャンスを作れず、62分に2トップを同時に替えて活性化を図った富山の攻撃に対して防戦一方となる。それでも、西野誠からのパスを受けた木本が飛び出してシュートを放った83分の場面なども、小林が気迫のセーブを見せ試合はロスタイムへ。熊本としては、時間を使って笛を聞ければOKだったのだが、富山が左右から立て続けにクロスを入れて同点弾を狙う状況にさらされるには、4分は精神的にも長かった。

 少しでもボールを自陣ゴールから遠くへ運びたい熊本は、クリアからボールを受けた木島が惜別のドリブル突破で右サイドを疾走して中央へ折り返す。藤田が詰めたが合わない。まだ笛は鳴らない。そして次のプレーで、この試合のクライマックスがやってくる。

 スローインからのボールを受けた西が右に短く流すと、そのスペースに走り込んで来たのは80分に小森田に代わって入っていた、今シーズンで引退を決めている山口武士。ペナルティアークの少し外側、距離にして約18mあたりから、「チャンスがあったら狙おうと思っていた」山口が右足で放ったシュートは、糸を引くようにまっすぐな弾道を描いてゴールへと飛び、GK中川の手には触れずにクロスバーに当たって、ゴールの中に落ちた。思いがけない、今流行りの言い回しを使えば、『ドラマティックすぎるタケシ』のゴールに、スタンドは大歓声に包まれる。先日のJ2日記で、「山口武士は熊本で輝いた」と書いたのだが、地元での本当に最後のゲームで眩しすぎる輝きを放つのも、彼が熊本でプリンスと呼ばれた所以。これで2−0となり試合終了。対富山戦初勝利はチーム初の3連勝となり、今シーズン、ホームでなかなか勝てなかった北野ロアッソは、最後のホームゲームで、楽しいだけでなく記憶に確かに刻み込まれる、忘れられないゲームをサポーターにプレゼントしてくれた。

 敗れた富山はこれで8試合勝ち無しという結果になったものの、内容では全く引けをとらないどころか押し込んでいたし、楚輪監督も話した通り、前線での流動性で何度もいい形を作るなど復調の兆しを感じさせた。次節ホームで迎える岡山との試合、Jリーグ1年目の総決算として勝利で飾り、2年目の飛躍につなぎたい。大幅な補強をしない中で、堅い守備をベースにした戦い方を通じて組織としても一皮むけ、大きく前進する下地はできたと見ていいだろう。

 一方の熊本は、内容が良くないなりにもきっちりと勝ちを収めた点は成長の証。試合後にセレモニーが行われて、今日の試合に出場できなかった選手も含め、契約満了となった選手たちがゴール裏で今まで応援してくれたサポーターに感謝の言葉を述べたり、引退する小林と山口、退任する北野監督がスタンドに向けて挨拶したりと、ホームゲームの全日程を終えて少ししんみりした雰囲気もあるが、リーグはあと1試合残っている。

 次節いよいよ、対戦相手の甲府にとって絶対に負けられない一戦とあって注目を集めるゲームに臨むことになるが、それは裏返せば、熊本のサッカーを全国に披露する最高のチャンスを与えられたということ。今節、福岡と草津がともに勝点を伸ばしたため、目標だった10位を達成する可能性は消えたが、チームも、選手個人、個人も「1歩前へ」踏み出す為に熊本だって負けられない試合。選手たちも口を揃えたように、失うものは何もない。思い切りプレーして、今シーズンを締めくくってほしい。

以上

2009.11.30 Reported by 井芹貴志
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