11月21日(土) 2009 J1リーグ戦 第32節
京都 0 - 1 鹿島 (14:04/西京極/14,043人)
得点者:36' 野沢拓也(鹿島)
スカパー!再放送 Ch183 11/23(月)11:00〜(解説:柱谷幸一、実況:下田恒幸、リポーター:和田りつ子)
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西京極での京都と鹿島の一戦は、京都が粘りある守備で鹿島に食い下がるも1点が遠く勝点を逃す結果となった。
鹿島が出場停止の岩政大樹、マルキーニョスの代わりに大岩剛、田代有三を起用。対して京都は左サイドバックに李正秀を置いた。「守備ラインのラインコントロールを一緒に練習する機会がなかった」こと、さらに「鹿島の内田篤人の攻撃の脅威を消すため」と起用意図を加藤久監督は説明する。
試合は、ボールが落ち着かない展開になった。京都は、鹿島の興梠慎三、田代を起点とした前線からのプレッシャーに手を焼き、中盤での有効なサイドチェンジを繰り出せず「裏のスペースに蹴って」(森下俊)という単調な戦いになった。しかし、鹿島も本山雅志が「縦一辺倒になった」と反省するように、サイドで落ち着くというよりは前線に単純に当ててくる仕掛けが多かった。そのためボールが落ち着かず流れが終始変わる展開。
その中で先に点を取ったのが鹿島。36分、大岩からのロングボールに田代が頭で落とすと、野沢拓也がこれを受けて左サイドへ。ドリブルで水本裕貴との間合いを計り右足インサイドを振り抜くとボールは逆サイドのポストを直撃しゴールに吸い込まれ、鹿島が先制する。
後半に入り鹿島は、もともとの「バランスを崩さず守備を安定させれば相手は出てくるだろうから、我々はそのスペースを使っていく」(オズワルド オリヴェイラ監督)というプラン通りの試合運びを見せはじめる。
中央が堅くなった鹿島に対し、京都は比較的スペースのあるサイドにボールを運ぶもののそこからのアイデアに乏しく攻め手を欠き得点が遠い。結局0-1のままタイムアップ。勝点の積み上げを果たせなかった。
「しっかりとした守備の組織を90分間維持していた」と試合後、加藤監督は話した。しかし、後半の鹿島は、何が何でも追加点というより、バランスを重視した戦い方をしていたのであって、「相手がリードしていた中で」と条件を付けて、京都が守備組織を維持していたとするのが妥当な表現だろう。
それでも守備の安定が戻ってきたことは、これからの大一番に向けて、構えが出来てきたと感じさせた。
「点を取られるから勝てない」のか、「点を取れないから勝てないのか」という議題に、今回の試合で「点を取れないから勝てない」という答えが明確になったと言えるだろう。
「しっかりと耐えながらチャンスをうかがっていた」(柳沢敦)という通り、前節のG大阪戦から守備面でチームとしての戦い方が大きく整理されていた感じがある。だから余計、「点が取れない」ことがクローズアップされるのだ。ただし、攻撃の質については「今に始まった事ではなく、前からの課題」(佐藤勇人)でもある。さらに言えば、試合に勝ち切る得点力や決定力不足はほとんどのチームが抱え、解消できないことでもあり、京都に限ったことではないのだ。
試合後、監督や選手から挙がったサイド攻撃の質についてだが、今シーズン序盤、右サイドの増嶋竜也の攻撃参加は目を見張るものがあった。何度も前線を追い越してボールを受けてクロスを上げていた。開幕戦の神戸戦( /jsgoal_archive/result/2009/0308/20090100010220090308_detail.html )のゴールはその増嶋のクロスからだ。逆サイドの安藤淳へピタリと合わせ、安藤のパスからディエゴがスルーして渡邉大剛が決めたもの。シーズン入る前も加藤監督は「サイド攻撃」を柱の一つに置いていたはず。それがこの時期、ほとんど見られなくなった。
これは、京都が攻撃をカウンター型に切り替えたことが大きな要因だろう。ディエゴ、渡邉、柳沢、またはパウリーニョを核に迫力あるカウンターが生まれた。それによりサイドで人数をかけて崩すという形が少なくなった。そして渡邉の離脱があって中盤でダイレクトでつなぐ早いパスワークのサッカーが展開されるようになる。奪ってからの早い攻撃を確立しようとすることに異論はない。しかし、増嶋の良さは、単独突破というより周りがパスをつないでいる中でタイミングを計って長いフリーランを駆使して崩すところにある。つまり、周囲のサポートは不可欠であるはずなのだ。そのサポートの少なさはここ数試合目立つところでもある。逆の李正秀についても、彼が前線を追い越した場面はほとんどなく、また彼が中へ切れ込む、または彼から中央、逆サイドへ展開という場面もあまりなかった。周囲のサポートの少なさに彼の良さは消されてしまったように見える。
中央に人数をかけてサイドのサポートが少ないなかで「サイドで一工夫を」(柳沢敦)というのはやや酷でもある。さらに、シーズン通して佐藤勇人は、増嶋が上がるとそこに生まれるスペースを消すフォローを必ずしていた。だが今節、その意識は薄かった。この状況で増嶋を単純に攻撃参加させるのは蛮勇とも言えるのではないだろうか。クロスの質よりもチームの攻撃の仕方をもう一度確認する必要があるだろう。
奪ってからの早い攻撃とサイドをえぐる攻撃の両立が簡単に上手くいくとは思えない。シーズン通して熟成度が上がるかどうかの代物だろう。だから、渡邉が離脱、佐藤勇人が負傷欠場して攻撃の質を変えなければならない時こそ、守備態勢を確固たるものにしなくてはならなかったはずだ。これが徹底出来なかったつけが、ここ数試合の内容に現れたと言えるのではないだろうか。
「点を取れない」という状況を劇的に変えられるとは思えない。だが、「耐えながらもチャンスをうかがう」(柳沢)戦いが今節出来たのは大きい。「点を取れないから勝てない」に悩むよりは「点を取られるから勝てない」状況を克服する下準備ができたことを今節の収穫とした方がよいだろう。
次節、ホーム最終戦(11/28@西京極 vs浦和)。決定機は必ずくることを信じてもう一度「耐えながらもチャンスをうかがう」戦いができるか、ここが重要になるのではないだろうか。
以上
2009.11.22 Reported by 武田賢宗
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