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【J2日記】札幌:笑顔の行方(09.11.19)

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11月17日、クラブ事務所の一室で報道陣の質問に答える曽田雄志選手

札幌のDF曽田雄志が11月17日、09年シーズン限りでの現役引退を発表した。

後付けに聞こえるかもしれないが、予兆がなかったわけではない。腰や膝の負傷が癒えず、なかなか練習に本格合流できない日々が続き、ある日の練習後には石崎信弘監督と話しこむ場面を見たこともあった。とはいえ、今やそんなことはどうでもいいのだろう。とにかく、「チームの顔」(矢萩竹美社長)である曽田がユニフォームを脱ぐ。その事実はどうやっても変わらない。

「変わらない」
筆者のなかでは、これが曽田の最大の印象だ。
今年も去年も曽田は怪我に見舞われ続けていた。J1昇格を果たした07年シーズンは抜群のパフォーマンスを披露していた。でも、このどちらの時期も曽田は報道陣に対してまったく変わらず、同じように取材対応してくれていたように思う。特に今年は移籍金撤廃というルール変更があり、リーグの選手会が行なわれるたびにチームを代表して選手会会合に出席していた曽田に概要を聞きに走ったのだが、いつも丁寧に説明をしてくれた。自身が思うように試合出場が果たせず、ストレスもあったことだろう。それでも質問に対し過不足なく、いや、時には違った角度からの視点も交えて十二分に答えてくれたことには本当に感謝している。時には知識不足の筆者が的外れな質問をしてしまったこともあったはず。それでも曽田は、表情を変えることなく親切に話をしてくれた。

04年のことだっただろうか。
この年、曽田は3バックの中央でプレーを続けていた。DF中央というのはひとつのミスが大ピンチに直結してしまうポジションなのだが、そうしたシーンが幾度かあり、シーズンの中頃には曽田が最終ラインでボールを持つと札幌厚別競技場のスタンドがザワつく場面があったりした。
でも、曽田はこう言っていた。
「僕がボールを持つたびにスタンドがザワつくのは気づいている。でも、僕らの仕事というのはミスを隠すことができない。だから、ファンの方々に安心して見てもらえるように力をつけていくしかない」
そして07年、曽田は抜群のパフォーマンスを継続し、チームのJ1昇格に大きく貢献してみせたのだ。そのプレーには安心感があった。スタンドのザワつきは、もう聞こえなかった。

でも、間違ってはいけない。プレー面での変化はあったかもしれないが、抜群のパフォーマンスを披露し続けていたこの年も曽田は、04年と変わらず、同じように我々の取材に応じてくれていた。

冒頭に記した11月17日の18時頃。曽田は札幌ドームにあるクラブ事務所の一室で仕事をしている報道陣の部屋に現れ、短い時間ながらも取材に応じてくれた。この時の曽田も、いつもと変わらない曽田だった。だから筆者も、いつもと変わらず色んなことを質問した。いつもと変わらず、的外れかもしれない質問もした。そして、それに対する曽田の答えも、いつもと変わらず十二分な答えだった。

でも、いつもと違う場面もあった。
いつもは表情を変えずに取材対応を終えていた曽田だったが、この時は最後に頬を緩めてボクらに笑顔を見せてくれたのだ。
札幌で過ごした9シーズン。これが曽田にとってどういう9シーズンだったのか、それは本人にしかわからない。だけど、筆者にはひとつだけ言えることがある。
「曽田選手は、最後は笑顔だったんだぜ」

これからも廻り流れる曽田のストーリー。引退を発表した翌18日には、「新しいことをやっていきたい」と今後について話してくれた。何らかの形で感謝の意を示したいとは思っているのだが、単なるフリー記者に過ぎない筆者には残念ながら何の力もない。

でも、そんな筆者ができる唯一のことは、やはり「変わらない」でいることなんだと思う。これからも変わらずにサッカーを、そして札幌を見ていこうと思う。そうやって曽田選手に感謝の意を示そうと思う。

以上

曽田雄志選手 プロフィール

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2009.11.19 Reported by 斉藤宏則
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