アビスパ福岡は本社を置く福岡市東区の香椎・千早校区で10月24日、「秋のアビスパフェスティバルin 香椎・千早」を開催して、「アビスパがある町づくり」を本格的にスタートさせた。イベント開催の主体となったのは、今年３月に発足した「2009年宣言プロジェクト」。このプロジェクトは、アビスパ福岡とファン・サポーターがひとつになって取り組むもので、発足以来、地域に根ざすスポーツクラブのあり方を議論してきたが、その一環として、香椎・千早校区と話し合いを続け、今回のイベント開催にこぎつけた。

香椎は昭和30年代から40年代にかけて、東区の中心地域として発展を遂げた古い町で、町の活性化のために、毎年、各種学校等と提携して商店街全体を美術館に見立てて「香椎まちなか美術館」を開催。地域の人たちが触れ合える場所を提供してきた。そして香椎に隣接する千早は、JR跡地の再開発により大きく様変わりしつつある新しい町。その町のあり方を住民たちが主体的に考える機会として、こちらも毎年、「千早並木広場フェスタ」を開催してきた。10月24日は、２つのイベントが同時開催される日。それぞれのイベント会場にアビスパ福岡のブースを併設し、両校区の橋渡し役も兼ねて「秋のアビスパフェスティバルin 香椎・千早」は行われた。

香椎校区でのイベントの始まりはJR香椎駅から。１日駅長を務める布部陽功アンバサダーが駅長の制服を身につけてアビスパ福岡をＰＲ。商店街の中心である、セピア通り、キラキラ通り、みゆき通りには「がんばれアビスパ」と染め抜かれたネイビーのノボリが立てられ、各商店の店頭にはアビーくん人形がちょこんと座っている。いずれも、香椎商工連盟の協力を得て設置されたもの。商店街と2009年宣言プロジェクトが協働してアビスパを応援しようとする気持ちが伝わってくる風景だ。

アビスパのイベント会場に設置されたガラポン抽選会は家族連れで人だかり。その隣で行われたサイン会には、商品にサインをもらう子どもたちの姿が並んだ。その中にいたご年配の女性に「珍しか名前ねえ。何て読むと？『ヌノベ』ね。応援するけんね」と言われた布部は思わずにっこり。サッカーは知らなくても、試合を見たことはなくても、自分と同じ町に住む仲間を応援する。それも、クラブが町にあるということ。興味津々でやって来た人たちが、にこやかな表情に変わる姿を見ていると暖かな気持ちになる。

一方、千早並木広場フェスタ会場では、ガラポン抽選会のほか、キックターゲット、子どもたちがスポーツを楽しむ「ふれあいイベント」、布部、神山竜一の参加によるトークショー＆サイン会が行われ、こちらも子どもたちを中心に大盛況。特に、アビーくんと、ビビーちゃんは子どもたちに大人気。時間ぎりぎりまで触れ合いを楽しんでいた。また、レプリカユニフォームに身を包んだサポーター、ボランティア、クラブ職員が、「クリーンアップ香椎・千早」と称して、香椎から千早へ続く商店街と住宅街の清掃活動を実施。２つの町の橋渡し役を果たした。

この日、取材をしながら私は不思議な気持ちに襲われていた。香椎・千早地区は、香椎で生まれ、千早の小学校に通っていた私にとっては自分の町。その町に大勢の人が集まってくるのは、まるで自分の家に大勢のお客さんがやって来てくれているよう。そして、みんなが笑顔で楽しんでいるのを見ていると、とても幸せな気分を感じた。その手伝いをアビスパがしてくれる。J２リーグ戦でのアビスパの勝利は何事にも代えがたい喜びだが、しかし、同じような嬉しさと満足感を感じた。そしてクラブも、地域と触れ合うことで代えがたい力を地域住民から力をもらったはず。町にクラブがあるとは、こういうことなのかな。そんなことを考えた１日だった。

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2009.11.02 Reported by 中倉一志