10月31日（土） 第89回天皇杯3回戦
鹿島 3 - 0 福岡　（13:00／カシマ／4,610人）
得点者：22' 興梠 慎三（鹿島）、35' 野沢　拓也（鹿島）、42' ダニーロ（鹿島）
☆天皇杯特集
----------

試合前には強い風が吹き、次々と番狂わせが起きている天皇杯を象徴するような天候だったが、終わってみれば3-0。前半に得点を重ねた鹿島が、順当に勝利をあげベスト16に名を連ねた。

互いに違うカテゴリーで戦うチームであるため、得られる情報は試合の映像や直近の試合のスカウティングのみ。そこで、鹿島・オズワルド　オリヴェイラ監督、福岡・篠田善之監督は、それぞれ対策を練ってきたが、試合で実行力を発揮したのは鹿島の方だった。

先週のリーグ戦から中田浩二・小笠原満男をボランチで併用するようになった鹿島。この日も、2人を同時起用しゲームを支配しようとする。中田が中央に構えて、周囲の選手に絶えず指示を送るため、守備のバランスは飛躍的に向上。攻撃面ではなかなかパスがつながらなかったが、守備の部分で危険な場面は数えるほどだった。
特に、オリヴェイラ監督が強調したのが守から攻への鋭さだ。
「攻守の切り替える瞬間は非常に重要なタイミングです。いかにして判断したところで行動に移せるかが大事であって、それを就任当初から徹底してやり続けてきました。その意識を選手たちが取り戻したことは非常に喜ばしいことです」
リーグ戦の連敗中には見られなかった相手へのプレスと奪った後のショートカウンター。この日も、そうした狙いから得点を重ねた。

まず22分。中盤で奪ったボールを小笠原がカウンターに移行しようとしたが、ドリブルを止められてしまう。しかし、右サイドのラインを割ったボールを素早く拾い、DFと駆け引きをしていた野沢拓也にスローイン。裏のスペースに抜け出した野沢がゴール前に折り返すと、そこに興梠慎三が飛び込み、鹿島が先制点をあげた。
そして、35分。曽ヶ端準のゴールキックを繋ぎ、興梠のスルーパスに反応した野沢が左サイドを突破。ゴールキーパーのタイミングをずらすシュートで追加点を奪った。
さらに、42分には右CKからダニーロがヘディングシュートでダメ押し点。前半で、鹿島が勝負を決めた。

福岡の篠田監督としては「小笠原選手が前がかりにプレスをかけてくるので、その空いたスペース、中田選手の横のスペースを突こう」という狙いを持っていた。実際、ゴールは決まらなかったものの、28分には大久保哲哉のポストプレーから左サイドを久藤清一が抜け出しセンタリングを上げている。黒部光昭のヘディングシュートは惜しくもキーパー正面だったが、狙い通りの攻撃を見せていた。惜しむらくは、この形の攻撃がほとんどできなかったこと。『鹿島のプレスの早さ』対『福岡のスペースを突くパス』という対立項は、鹿島の方が優勢だった。
福岡の選手もゲームのなかでそれは痛感したようだ。出場停止の宮原裕司に代わり出場した鈴木惇は「守から攻への切り替えにかなり迫力があった」と、鹿島の早さに感銘を受けていた。篠田監督は「いまJ1のチャンピオンとJ2の下位の差をしっかりと選手が感じ取ってほしい」と願っていたが、どうやらその想いは伝わっているようだ。

勝ち進んだ鹿島は、これで公式戦4試合連続で無失点。選手たちからは磐田戦（リーグ戦29節 /jsgoal_archive/result/2009/1017/20090100010620091017_detail.html ）で無失点に抑えたことが大きかったという声がよく聞かれた。内容では押されたが、あの試合をゼロで終えたことが自信になっているようだ。また、中田がボランチに入ったことで、役割がはっきりしたという。ひとつ後ろのポジションの岩政大樹は、中田の背中が頼もしく見えるようだ。
「あの2人が並ぶことで、まあ『並ぶ』というよりも満男さんが前で浩二さんが後ろと役割分担がはっきりする。浩二さんは割り切ってバランスを見てくれるから、僕らの前に誰もいないということがない」
さらに、興梠も公式戦2試合連続の得点。特に天皇杯では自身初のゴールとなった。次のリーグ戦のホームゲーム（11/8＠カシマ　vs山形）には、初めて両親や兄弟が揃って観戦に来る。長らく沈黙していただけに、「次も決めたい」と連続得点を誓った。
いつ抜けられるのかわからなかった長い長い連敗トンネルを抜け出し、天皇杯でも順当に駒を進めた鹿島。次の4回戦もホーム・カシマスタジアムで戦うことができる（11/14）。鹿島に追い風が吹きはじめた。

以上

2009.11.01 Reported by 田中滋