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【第89回天皇杯3回戦 広島 vs 鳥栖】レポート:絶対にあきらめない意志と「岸野監督のために」という強い想い。気持ちの勝負を制した鳥栖が、劇的なゴールで広島を粉砕(09.11.01)

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10月31日(土) 第89回天皇杯3回戦
広島 2 - 3 鳥栖 (15:00/コカ広島/4,003人)
得点者:17' 山瀬幸宏(鳥栖)、53' 盛田剛平(広島)、56' 佐藤寿人(広島)、61' 渡邉将基(鳥栖)、89' ハーフナーマイク(鳥栖)
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フワリ、とボールが高くあがった時、メインスタンドから「あっ」という声が聞こえた。広島のGK佐藤昭大がそれをキャッチに行ったその瞬間だった。
競りに行ったのは、鳥栖が誇る巨艦=ハーフナー・マイクである。激しい競り合いの中で、GKはボールをこぼした。それを拾ったストライカーが落ち着いてボールを流し込む。
副審を見た。しかし、ファウルを示す旗は動かず。歓喜を体全体で表現する名将・岸野靖之を中心に抱き合う鳥栖ベンチとは対照的に、スタジアムは消沈した。後半、ロスタイムに入る直前、広島生まれのハーフナー・マイクが放った決勝弾で、広島は撃沈した。
ただ、この結果は事故ではない。鳥栖は勝利に値するサッカーを表現し、一方の広島は自分たちのサッカーをわずか11分ほどしか、見せられなかった。つまり、必然である。

その要因は何か。
「次のG大阪も、今日の相手(広島)のようにモチベーションが高くなければ(隙が生まれる)」と決勝ゴールを放ったヒーローはコメント。柏木陽介もまた、「最初の気持ちの部分で、鳥栖に上回られてしまったのかも」と語った。
「アイディアに満ちた広島のサッカーが大好きだ」と岸野監督は公言するが、その「広島サッカー」は、球際を闘い、競り勝ち、多くの選手たちが動いてパスコースをつくる、そんな泥臭い作業の繰り返しがあってこそ成立する。そして、その「泥臭さ」を支えるのは、「絶対に勝つんだ」「俺たちのサッカーで上に行くんだ」という強い気持ちだ。だがこの日の広島は、華麗さの裏側にある大切なものを見失っていたのかもしれない。
一方の鳥栖には、「キシさん(岸野監督)のために、という想いを全員が胸に秘めていた」と10番・島田裕介が言うように、「1日でも長く、岸野監督と一緒にサッカーがしたい」という強い意志が存在した。その差は、プレーに如実に現れた。

16分、攻撃参加した槙野智章が足を負傷し、交代せざるをえなくなった。横竹翔が呼ばれる。が、そこで生まれた隙を、鳥栖のスーパーシュートが切り裂いた。主役は、山瀬幸宏。4年前、Jリーグ初出場を広島相手に飾った男の左足から放たれたシュートに反応した佐藤昭大は、一瞬左に動いた。だがボールは、その反応をあざ笑うかのように、逆方向に突き刺さる。
1990年代前半のプロ野球で「ボールが消える」と恐れられた伊藤智仁投手(ヤクルト)の高速スライダーを思い出すほどの強烈な変化を見せた破壊力満点のシュートによって、鳥栖が先制した。ただ、このスーパーシュートがなくても、先制点は鳥栖にもたらされただろう。それほど、内容に大きな差があった。

後半、ペトロヴィッチ監督は李忠成を投入。背番号9の縦に鋭く走る動きによって、広島は勢いを取り戻した。53分、李忠成はクロスに鋭く飛び込んでCKを奪取、盛田剛平の同点弾を演出した。その3分後、服部公太のクロスに、またも李忠成が圧倒的な迫力を見せて飛び込む。そこにDFが引きつけられ、ファーサイドの佐藤寿人がフリーになった。逆転! ゴールネットの中にまで勢い込んで飛び込んだ李忠成の執念が、このゴールを生んだと言っていい。

だが、鳥栖はあきらめない。わずか2分の間に、決定的なヘディングシュートが2本。そして61分、島田のFKをトジンがヘディング。佐藤昭大が必死に弾いたそのこぼれを渡邉将基が押し込んだ。同点だ!
その後は、焦りを見せて前にかかる広島の圧力を鳥栖が跳ね返し、カウンターでチャンスをつくる展開。どちらにも決定機があった。しかし、サッカーの神様が微笑んだチームは、90分間走ることをやめなかったサガン鳥栖だった。

ストヤノフやミキッチ、青山敏弘など、広島は主力の多くを負傷や出場停止で欠いていた。しかし後半の11分間、「日本で最もボールが動くサッカー」と岸野監督が絶賛する広島サッカーの片鱗も見せていた。これを前半から見せていれば……。悔いは残る。しかし、時間は取り戻せない。広島の天皇杯は終わった。
広島の事情はどうあろうとも、この日の鳥栖が見せた素晴らしいサッカーには賞賛の拍手を惜しみなく贈りたい。一度逆転されても、自分たちを信じて走り通した力。広島の選手の脳裏に延長戦がかすめた中、90分で決着をつけるんだと激しい闘志を見せつけたパワー。岸野イズムを全員が体現し、凄まじい迫力でピッチを駆け抜けたダイナミズム。気持ちの強さがこれほどの武器になることを、岸野サガンは見せつけた。

ベスト8を懸けたG大阪戦(11/14@広島ビ)も厳しい闘いとなるだろう。しかし、前年のアジアチャンピオンに対しても、鳥栖はそのパワーを臆することなくぶつけるはず。昨年に続き、鳥栖旋風が天皇杯で吹き荒れる予感が満ちてきた。

以上


2009.11.01 Reported by 中野和也
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