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【第89回天皇杯3回戦 山形 vs 明治大】レポート:明治大が内容を伴った勝利で打倒J1を達成!山形はクラブ史に汚点を残す敗北(09.11.01)

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10月31日(土) 第89回天皇杯3回戦
山形 0 - 3 明治大 (13:00/NDスタ/2,870人)
得点者:27' 三田 啓貴(明治大)、60' 山本 紘之(明治大)、85' 阪野 豊史(明治大)
天皇杯特集
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アップセットの兆候は立ち上がりからあった。山形はプレッシングが機能せず、明治大にボランチの位置でさばかれボールを支配される。最近のリーグ戦で3勝1分け。勢いをそのまま持ち込もうという山形のプランは、J1打倒に執念を燃やす明治大の前に、早くも軋み始めていた。

ポゼッションで優位に立った明治大は両サイドバックを押し上げ、サイドハーフが山形のブロックの間を動きながらプレーすることでパスの選択肢を増やしていく。4分には三田啓貴が左サイドを破って鋭いクロスを差し込み、8分には小林裕紀が縦パスを山本紘之に飛ばす。さらに、10分には三田がノープレッシャーでシュートを放ち、15分には小林裕紀が大きくサイドを変えると、駆け上がっていた日野竜一のクロスに三田が足から飛び込んだ。序盤にして明治大が自らのカラーを存分に発揮していた。

「相手のほうが人数が多いんじゃないか、というくらい真ん中に人がいた」(山形・佐藤健太郎)ために山形のボランチが前に出ることができず、それが明治大のボランチの自由なプレーと山形の2トップの孤立につながっていた。山形が長谷川悠に合わせる長いボールは楠木啓介、松岡祐介の両センターバックが身長差をモノともせずに厳しく競ることで、「浅いところからのクロス、そしてそれに対するセカンドボール、そこがまず焦点かなと。長谷川君が出てくるということで、彼に対してどう対応するのか、そしてクロスを上げる出所のところをどうするのか。そこのところをしっかり準備をしてきた」(明治大・神川明彦監督)という狙いを機能させていた。山形は12分に得たCKで古橋達弥がファーヘ蹴ったボールに誰も反応せずチャンスを潰すと、19分のフリーキックでは長谷川がゴールネットを揺らしたもののオフサイドの判定。26分には左からのマイナスクロスを秋葉勝が打ちきれず、そのまま右につないでいき宮本卓也のクロスにつなげたが、中央でクリアされた。

流れがいまだ明治大にあることが露呈したはその直後。目の前のセカンドボールを拾った楠木がプレッシャーを受けることなく前に持ち出すと、縦パスを受けた山本がシュートまで持ち込んだ。さらに27分の明治大コーナーキックでは、密集のなかでGK植草裕樹がクリアしきれず中央を転がるボールに、走り込んだのは三田。「相手に当たったり、キーパーが弾いたり、そういうのを狙って思いきり蹴りました」というグラウンダーのシュートは、本人の予想をも裏切りそのままゴールイン。スタジアムはいよいよ下克上のムードが立ちこめた。

1点を追うことになった山形もこのあと押し込むが、中を絞ってコンパクトに整った明治大のブロックを縦に割ることができず、「コントロールして持ち出して、見て、パスなので、ボールはたとえば左から右に行ってるんですけど、相手もそれに合わせて動いてる」(山形・小林伸二監督)とサイドチェンジで崩す狙いも不発。32分には古橋が右からマイナスのクロスを入れたが、ファーサイドの北村知隆に届いたときにはすでに日野が正面に立ち、シュートを打てず。39分には長谷川のポストプレーから秋葉が左サイドで起点をつくったが、クロスは中とのタイミングが合わず、42分の秋葉のやや強引な突破からつくったチャンスも、北村のシュートが枠をそれ、山形はハーフタイムまでに試合を振り出しに戻すことができなかった。

満を持して山形は明治大出身のキャプテン・宮沢克行をピッチに送り込むが、明治大キックオフのファーストプレーでコーナーキックを与えるなど、前半の流れそのままに後半が始まった。山形はサイドを起点をつくりながらゴール前に切り込むことができずにいたが、54分にはようやく右サイドの宮本からのパスが長谷川の足元に収まる。長谷川がターンから放ったシュートはコーナーキックを得るにとどまったが、56分には長谷川のポストから古橋へつなぎ、最後には秋葉がシュート。59分には宮本の右クロスから宮沢が胸で落とし、古橋がファーサイドでフリーになったが、シュートは打ちきれなかった。

山形にとって痛かったのは、ようやく攻撃の形ができ始めたこの時間に明治大に追加点を許したことだった。60分、中央で佐藤健太郎をターンでかわした山田大記が即座にスルーパス。フリーで裏に飛び出した山本が最後は3人に囲まれながらも狭いシュートコースを外さずにゴールネットを揺らした。

残り30分で2点を追う苦しい立場になったからこそ、山形にはより高いプレーの精度が求められるはずだったが、沸き上がる焦りはそれとは逆のプレーを生む。65分には西河翔吾から、67分には小原章吾が秋葉にくさびのパスを送るが、前への意識が強い秋葉が待って受けたことで、ともにインターセプトに遭う。さらに、中央突破で2点目を失った山形の意識の逆を突き、明治大のサイドからのクロスが効果を上げ始める。66分と68分に丸山祐市が放ったクロスはシュートにはつながらなかったが、山形は出所を潰せないばかりか、ゴール前にフリーで飛び込まれている。83分のフリーキックを途中出場のFW阪野豊史がヘディングシュートでクロスバー直撃、跳ね返りを三田が狙ったがシュートは枠外。まだ運が尽きていないと思う間もなく、山形を襲ったのはダメ押しの3点目。左サイドで起点をつくった都丸昌弘がグラウンダーのアーリークロスを入れると同時に阪野が裏へ飛び出した。小原章吾が慌てて追うが、すでにシュート態勢に入っていた阪野の左足を止めることはできなかった。

明治大は、2年前には果たせなかった打倒J1を果たした試合を、「あまりにもゲームが終始明治ペースだったと私思いますので、思ったよりは苦労しなかった」(神川監督)という圧勝で飾った。2回戦の湘南戦で勝利したあと、戻ったリーグ戦では1分け1敗と本来の力を発揮できずにいたが、「山形戦を迎える1週間前に、原点回帰ということで、もう1回ディフェンスのところからチームを立て直していこう。そしてチーム一丸となってもう1回戦うんだ。それが明治の良さなんだということを選手たちに話しまして、選手たちもよくそれを理解してくれて、1週間いい準備ができた」(神川監督)とチームを立て直しての快挙となった。
敗れた山形は、「大学生に負けた初のJ1クラブ」という不名誉な形で歴史に名を残すことになる。ふだんのリーグ戦より情報が少ないとはいえ、一発勝負のトーナメントではあなどれない相手であることも、好調のリーグ戦を中断して行われるだけに油断があってはならない状況もすべて理解していたなかで、もたらされた結果は厳しすぎるものだった。
「試合中に気づいてたのに声を出せなかったのか、気づいてなかったのかはいまいち曖昧ですけど、90分のなかで修正できるようなコーチングを誰か1人でも出せていたら変わった」(佐藤健太郎)、「うちらが守備から入るとか、ポゼッションをしながら攻めていくだとか、押し込んだときに迫力のある攻撃ができたりとか、いろんなパターンとかバリエーションを持てるようなチームになっていけば、強いチームが相手のゲームとか難しいゲームに勝っていけるようなチームにはなるんですけれども、まだそこまでうちのチームはいってない」(石川竜也)という2人のコメントは、試合中に生じたズレをピッチ上の11人で正せるほどの修正力を、チームはいまだ持てずにいることを示している。残留争いでは圧倒的に優位な状況にあるとは言え、予想外の敗北と予想以上の大敗に、切り換えてリーグ戦に戻ることは容易なことではない。

試合後の監督会見で、神川監督が印象的な言葉を残している。「0−3とか0−4とか、そういうスコアで負けてしまうことを怖れてましたし、そういう無様な戦いだけはしたくないという思いでいました」。リーグ戦での不調があったにせよ、危機感をより強く持ち、そこを出発点にした明治大が勝者となったことは、一発勝負のトーナメントを戦ううえで多くの示唆を含んでいる。このブロックの4回戦のカードは新潟vs明治大(11月15日)。NDスタは主なき試合を迎える。

以上

2009.11.01 Reported by 佐藤円
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