10月17日（土） 2009 J1リーグ戦 第29節
大宮 2 - 3 川崎Ｆ　（15:05／埼玉／42,346人）
得点者：21' ジュニーニョ（川崎Ｆ）、44' マト（大宮）、44' 鄭大世（川崎Ｆ）、64' 鄭大世（川崎Ｆ）、89' マト（大宮）
スカパー！再放送 Ch183 10/20（火）21:00〜（解説：相馬直樹、実況：清原正博、リポーター：杉山真也）
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まさか、まさかの展開だった。前半だけで３本、試合を通してみれば４本ものＰＫが与えられた。Ｊリーグでは過去、１試合５本というのが最多だとのことだから、この４本というだけでも珍事であるのに、そのうち２本をはずした川崎Fが勝利し、２本決めた大宮が破れたのだ。川崎Fはこの勝利で、勝点を５２とし暫定ながら首位に立った。ホームの大宮は、クラブ史上最多の４２３４６人が詰め掛けた埼玉スタジアム２００２を勝利で沸かせることはできず、残留最低ラインの１５位に後退した。

ギリギリのところまで後退してしまった大宮だが、年間を通じていつも抱えている課題がいくつかある。この日はそのうちのひとつ、”立ち上がりの悪さ”を露呈してしまった。開始直後から、川崎Fの攻撃陣に翻弄され、守備のまずさから１３分にＰＫを献上してしまう。キッカーはジュニーニョだが、なんとこれが左ポストを直撃。大宮は事なきを得た。ただ試合後マトが課題に挙げたように、この時間帯のばたつき、まるで鄭大世やジュニーニョのスピードや迫力を予測していなかったかのような慌てふためきは、改善していかなくてはならないだろう。

試合が進むと、いつものとおりペースを取り戻したかに見えた。２０分にはフリーキックからの流れで右クロスにラファエルが頭で合わせるが、これはGK正面。ただ、これが川崎Fのカウンターを生み、ジュニーニョのゴールにつながってしまう。続く３６分にはまたしても川崎FにＰＫが与えられる。これは、１本目をはずしたジュニーニョではなく鄭が「フォワードなんで権利があると主張しました」と自らキッカーに名乗り出ての渾身のキック。だがここは大宮守護神・江角浩司が左手ではじき出す。オレンジ色のスタンドはボルテージも急上昇、流れはまだ完全に川崎Fのものではないように思えた。前半終了間際に、石原直樹が得意のドリブル突破がＰＫにつながり、これをきっちりマトが決め前半終了…かと思われたがそうはいかなかった。３６分のＰＫを外していた鄭が、ペナルティアークよりも手前の中央でこぼれ球を自分のものにするやいなや、ふりむきざまの強烈ミドルシュートでネットをつきさす。「ＰＫを外してイヤな雰囲気にしてしまって申し訳なかったのでキモチで決めた」と話す鄭に対し、「前半のあの一点が…」と振り返る大宮の選手たち。鄭の圧倒的な力を見せ付けられたと同時に、勝利が遠のくのを感じたゴールでもあった。

とはいえ、後半開始からリズムをつかんだのは大宮。左サイドに配したラファエルと、前線の石原、市川雅彦がかみ合いだす。相手が間延びしだしたこともあって、中盤から前線への配球もスムーズになる。開始直後にはラファエルから石原とつなぎペナルティエリアに侵入するもあと一歩ゴールに迫れず。９分には左サイドからラファエル、橋本早十とボールがわたりシュート。これも惜しくもポストにはじき出されるが、こぼれ球に市川がつめ再びゴールに迫った。勢いは大宮に来ていたはずだった。だが、１９分、鄭が左サイドからゴールに迫り、マトをなぎ倒し、またも強烈シュートをゴール右すみに突き刺して１−３に。その後も選手交代からチャンスを狙うが、試合終了間際にＰＫで１点を追加したにとどまった。

反省点があれば、収穫もあるのは試合の常だ。「決定力が不足していた」「選手たちは代表クラス、ビッグクラブを目の前にしてもビビらなくなった」と張外龍監督は振り返った。監督のあげた反省点がいつものものであるのに対し、収穫は新しいものだった。

残り５節にして、チームが新鮮な刺激を得られた試合だったのだ。次節は、同スタジアムでのさいたまダービーとなる。ギリギリ残留の１５位から少しでも這い上がるためにも、浦和を倒す。そのための収穫ともなった一戦だと捉えたい。

以上