11月7日(土)に決勝戦が国立競技場で開催されるACL。アジアの頂点、そしてFIFAクラブワールドカップジャパンでヨーロッパ代表バルセロナをはじめ世界の強豪と戦うためにアツき戦いが繰り広げられる。そこで、ベスト8に進出したクラブをここで徹底紹介していく!
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■クラブ基本情報(データ一覧)
Nagoya Gurampus(JPN)
名古屋グランパス(日本)
昨季成績:Jリーグ3位
クラブ創設:1991年
ホームタウン:愛知県名古屋市
スタジアム(収容人数):瑞穂陸上競技場(2万人)
主な成績:
Jリーグ
2位2回(95、99)、3位4回(98、01、02、08)
天皇杯
優勝2回(95、99)
過去のACL成績:出場歴なし
アジアクラブ選手権:出場歴なし
アジアカップウィナーズカップ:準優勝(96-97)、ベスト8(00-01)
アジアスーパーカップ:出場歴なし
■クラブ史(誕生から現在までの略歴など)
1939年 前身となるトヨタ自動車サッカー部が活動を開始。
1991年 発足前のJリーグ(1993年開始)に加盟したことに伴い、名古屋市をホームタウンとした「名古屋グランパスエイトエイト」を設立。
1993年 86年ワールドカップ・メキシコ大会の得点王で、元イングランド代表のFWゲイリー・リネカー(当時32歳)が加入し、大きな話題を呼んだ。
1994年 旧ユーゴスラビアの英雄、ドラガン・ストイコビッチ(現監督)をフランスの名門、オリンピック・マルセイユから獲得(当初は半年間の期限付き移籍)。
1995年 アルセーヌ・ベンゲル監督が就任。ストイコビッチがチームに完全移籍を果たし、ここから快進撃が始まる(同年は年間総合3位)。翌年の1月には天皇杯を制覇。
1996年 1シーズン制となったJリーグで最高成績となる2位に輝く。だが、ベンゲル監督は9月に退団(プレミアリーグのアーセナルの監督に就任)し、翌月からカルロス・ケイロス監督(現ポルトガル代表監督)がその後を継いだ。リーグ終了後、サントリーカップ・チャンピオンズファイナルでナビスコ王者・清水、リーグ王者・鹿島を下して優勝を果たす。
1999年 シーズン途中に就任したジョアン・カルロス監督の下で、2度目の天皇杯制覇。
2008年 ストイコビッチが監督就任。“ピクシー”から“ミスター”に愛称を変えた指揮官の下、Jリーグ開幕以来15年間勝てなかったカシマスタジアムで白星を挙げるなど、アタッキングサッカーが躍動。リーグ3位に入り、ACL出場権を手にした。
■監督&キープレーヤー紹介
ドラガン・ストイコビッチ監督
“ピクシー”(妖精)の愛称で親しまれた現役時代は、ユーゴスラビア代表の大黒柱としてワールドカップやEURO、オリンピックなどで活躍(84試合出場15得点)。クラブレベルでは、母国セルビアの名門ツルベナ・ズベズダ(レッドスター・ベオグラード)やマルセイユ(フランス)、ベローナ(イタリア)などでプレーした。1994年に加入した名古屋でも、ファンタスティックなプレーでサポーターの心を魅了した。
2000年に一度は引退を表明するも、サポーターを含むクラブ全体の強い慰留の声と自身の「名古屋で優勝を!」というクラブ愛により、現役生活を1年延長。最後のシーズンとなった2001年の第1ステージは、ホーム最終戦のロスタイムに劇的PKを決め、ステージ最終戦の東京ヴェルディ戦ではアウェイにもかかわらず、満員の観衆の中で引退セレモニーが行われた。敵サポーターを含むスタジアムの全員がスタンディング・オベーションで去り際を惜しむなど、まさに日本サッカー界に愛された男であった。
その後は母国へと戻ったが、低迷するチーム立て直しの“特効薬”として2008年に監督就任。若手とベテランをうまく融合し、尊敬するアルセーヌ・ベンゲル監督が築き上げるアーセナルのスタイルに影響を受けた、サイドを有効活用するサッカーで旋風を巻き起こし、リーグ3位でフィニッシュ、ACL出場権を手にした。今シーズンは苦戦が続いているが、それでも彼のカリスマ性が衰えることはない。
GK1 楢崎正剛
今年で33歳となった日本代表GKの最大の魅力は「安定感」。ぶれることのないプレーを支える、ポジショニングの妙と正確なセービング、キャッチングが特長だ。決して派手さはないが、GKとしての基本技術の高さは日本ナンバー1と言える。メンタル面も同様、グラウンド上では気持ちを前面に出しながらも、常に冷静に対処できる精神の持ち主。ちょっとやそっとでは崩せない、名古屋の壁だ。
MF10 小川佳純
“ストイコビッチ・サッカーの申し子”と言える存在だ。右サイドに位置し、正確な技術とスピード、そして抜群のクロス精度で、サイド攻撃を生命線とするチーム戦術の核となっている。特筆すべきは、日本でも1、2を争うインステップキックのうまさ。どんな状況においても、ボールの真芯を捉え、強烈な弾道のキックを放つ。セットプレーでの多彩なキックも武器の一つだ。
FW16 ジョシュア・ケネディ
名古屋を生まれ変わらせた頼もしい助っ人。Jデビュー戦となった7月18日の京都サンガF.C.戦でさっそくゴールを決めるなど、問題なくチームにフィット。194cm84kgの体格から繰り出されるヘディングはもちろん、足下の技術も正確で、そのキープ力により前線の起点となれる貴重な存在だ。
FW11 玉田圭司
ストライカーとしてだけでなく、チャンスメイカーとして1.5列目をかけ回る。攻撃の繋ぎ役としてのパス、裏への果敢な飛び出し、変幻自在のドリブル突破、そして左足から放たれる強烈なシュートはチームの大きな武器。
■チームスタイル&戦術解説
前線からハイプレスを敢行するとともに、ボランチの2人とDFラインが連動して相手を挟み込む。ボールを奪えばサイドチェンジを多用したワイドな攻撃で、一気に相手陣内へと進入していくのが現チームのスタイルだ。
前線のターゲットマンとなるケネディに当てて、セカンドボールを拾った玉田、小川、マギヌンが逆サイドに張るMFやSBに展開、数的優位を生かしてサイドを切り崩す。SBから一気に逆サイドへとロングパスを送り込み、サイドをえぐるカウンター攻撃も大きな武器だ。高精度クロスを放つ供給役をサイドにそろえ、3バックシステムやSBが中に絞ったり高い位置に張ったりするチーム相手には、特にその攻撃力が発揮される。
同タイプのストライカーが多かったためシーズン序盤は3トップも試されたが、ケネディがフィットしたことで3トップのオプションを使う頻度は少なくなるだろう。
■ベスト8までの勝ち上がり振り返り
3月に開幕したグループEではアウェイでの開幕戦、蔚山現代ホランイに3–1と勝利し、好スタートを切るが、第2戦の北京国安戦は0–0、第3戦のニューカッスル・ジェッツ戦は1–1と、ホームで2試合連続ドローに終わる。続く第4戦は、アウェイでニューカッスル・ジェッツに1–0と勝利し、敵地での強さを見せたが、この試合で負傷したマギヌンが長期離脱、結果としてJリーグにも悪影響を与えてしまった。それでもACLでは、蔚山現代との第5戦で4–1とホーム初勝利を手にすると、最終戦の北京国安戦を1–1で終え、グループステージ負けなしで首位通過を決めた。
6月下旬のラウンド16はホーム、瑞穂陸上競技場で韓国の水原三星ブルーウィングスと対戦。前述のマギヌンが復帰を果たしたこの一戦、22分に小川のゴールで先制すると、66分には玉田が見事なドリブル突破からシュートを決めて2–0とする。直後に1点を返されるが、相手の反撃をしのぎ切ってベスト8進出を決めた。
リーグでは調子を落として中位に甘んじており、ナビスコカップもベスト8で敗退したことで、選手のモチベーションはアジアの舞台に注がれている。川崎との準々決勝は、ケネディのACLデビュー戦。“新チーム”としてライバルとの一戦に臨む。
■チーム近況(7月中旬時点)
シーズン序盤は苦しい戦いを強いられた。札幌から加入したFWダヴィが高い決定力を誇る反面、裏へ飛び出しや独力での突破を得意とする選手だったため、同じくスピードを生かしてバイタルエリアを走り回る玉田とプレーがかぶるシーンも。さらには、前線の起点が失われたことから、昨シーズンのような破壊力ある攻撃が見られなくなってしまった。
それでも、ダヴィの得点力と守備陣の踏ん張りにより、ACLではベスト8まで駒を進めた中、7月にはそのダヴィがカタールのウム・サラル(同じくACLベスト8)に移籍。クラブは代わりにケネディを獲得する。加入するやいなや、このオーストラリア代表FWが、昨シーズンまでチームにいたヨンセン(現清水)同様、体を張ったポストプレーで前線の起点となるだけでなく、空中戦の強さ、一人でシュートまで持ち込める力強さを発揮したことで、名古屋はこれまでの低迷が嘘のように活性化した。
ターゲットが安定したことで、玉田、小川、マギヌン、中村、阿部らが持ち味を発揮できるようになり、昨年を彷彿(ほうふつ)とさせる洗練されたサイドアタックが機能、7月25日には埼玉スタジアムで浦和に3–0と快勝した。
ナビスコカップの敗退で、ACLは今季のタイトル獲得に一番近い大会となっただけに、選手たちのモチベーションも非常に高い。
またダヴィの移籍に伴い空いた外国人枠を使い、イゴール・ブルザノビッチをツベルナ・ズベズダ(セルビア)から獲得。同選手はストイコビッチ監督がツベルナ・ズベズダ会長だった07年にもポドコリツァ(モンテネグロ)から獲得した選手。まさに、監督の秘蔵っ子として活躍が期待される。
さらに8月に入り、浦和の三都主アレサンドロが完全移籍で加入。これで層が薄かった左サイドが補強された。
■ホームスタジアム
愛知、いや名古屋という一つのアイデンティティを持つ地域に根付く、深い「地元愛」。そしてこの都市の求心力は、その隣りの岐阜や三重にまで波及する。Jリーグ開幕当初から観客数の浮き沈みが少ないのが、このクラブの特徴の一つであるように、「コア・サポーター」と言われる熱狂的ファンが多く、根強い人気を誇っている。
ホームは瑞穂陸上競技場、豊田スタジアムの二つを使用。サポーターから「聖地」と言われる瑞穂ではJ開幕当初からプレーし、数々のドラマを生んできた。芝のコンディションが常に良好であり、チームも高い勝率を誇っている。2005年には、愛知万博(愛・地球博)で使用された大型ハイビジョン映像装置が移設され、スタジアム演出がパワーアップ、さらに“ホーム度”は上昇した。
豊田は、サッカー専用スタジアムとして国内トップクラスの設備を誇るが、チームはここで負け越している。ACLではグループステージのホーム戦3試合とラウンド16、そして9月30日の準々決勝第2レグと、瑞穂が会場となっている。
■その他エピソードなど
今年7月に、代表レベルでは「日本の敵」だったオーストラリア人ストライカー、ケネディが加入した。彼は、2006年ワールドカップ・ドイツ大会のグループリーグ初戦で、同点ゴールの起点になるなど逆転勝利(3−1)の立役者となり、ともに本戦出場を決めた南アフリカ大会アジア予選でも、同組の日本を大いに苦しめた因縁の相手。この“オージータワー”が、デビュー戦でゴールを決めるなど、さっそく名古屋のエースとして本領を発揮している。
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