10月10日(土) 第89回天皇杯2回戦
水戸 2 - 3 福岡大 (15:00/ひたちな/827人)
得点者:8' 藤田 直之(福岡大)、9' 荒田 智之(水戸)、55' 荒田 智之(水戸)、70' 高橋 祐太郎(福岡大)、97' 永井 謙佑(福岡大)
☆天皇杯特集
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「プラン通りだった」。試合後、福岡大・乾真寛監督は何度もこう口にしたように、福岡大にとってしてやったりの勝利であった。
コイントスに勝ったのは福岡大。そこで選んだのは風下であった。「水戸は後半に息切れするところが見受けられたので、そこで勝負しようと思った」と乾監督が振り返るように、後半勝負の狙いで試合に臨んだ。この試合で福岡大が1つだけ誤算があったというのなら、「思いのほか、前半から攻めれてしまった」(乾監督)ことだろう。序盤から積極的なプレスで水戸を封じ込めた福岡大。8分に果敢なプレスでDF中村英之からボールを奪った藤田直之がそのままゴールを決めて先制する。しかし、その後、前がかりになってしまったDFラインの裏を突かれてすぐさま失点。その後もコンパクトを維持して水戸の攻撃を遮断しながら、ペースを握ったものの、55分にも手薄になったDFの隙を荒田智之に突かれて逆転を許してしまう。
従来の学生チームならば、ここで気持ちが折れてしまうところ。しかし、今年の大学ナンバー1チームである福岡大は違った。そこから猛攻を仕掛け、再逆転に成功したのである。それを支えていたのは日ごろから培った自信であった。「日常的にアビスパ福岡やサガン鳥栖という九州のJ2チームと練習試合をしており、相手がJ2チームでも特別な意識はなかった」と乾監督が言うように、たとえ逆転を許しても自信が失われることはなかった。むしろ、そこから「後半勝負」という狙いに向かって選手たちが一致団結していくこととなる。
後半に勝負をかけるにあたって、前半から水戸の体力を奪わなければならない。「水戸はセンターバックとサイドバックの背後のところが崩されていたので、そのスペースを突いていきたかった」(乾監督)。福岡大は前半から徹底して1トップの永井謙佑がDF裏に飛び出してチャンスメイク。決定機を決めきることはできなかったが、水戸の選手の体力を消耗させるには十分の動きを見せていた。それも福岡大の狙い通り。その動きがジャブとなり、後半に効いた。60分を過ぎてからはほぼ水戸陣内で試合が行われるワンサイドゲームの様相を帯びていった。そして70分、中盤でプレスをかけて水戸のミスを誘い、ボールを奪った永井から右サイドに展開。市川稔が放ったシュートはGKにはじかれるものの、高橋祐太郎が押し込んで同点に持ち込む。
そして、もつれ込んだ延長戦。それは永井謙佑という千両役者のために行われたステージのようなものであった。先週土曜日にインフルエンザを患い、練習に合流したのは水曜日から。「走ると痰が絡むし、コンディションはよくなかった」と言うように、普段よりも動きに切れを欠いた。それでも水戸守備陣を切り裂く動きを見せた永井。そして、延長前半7分に最高の見せ場がやってきた。ゴールから約20mの位置で水戸GKの蹴ったボールを奪った永井はすぐさま左足を一閃。ボールはクロスバーをかすめながら、ネットに突き刺さった。「彼は追い込まれた時に極限の集中力が出てきて、彼にしかできないシュートをここ一番で決める。それを信じてました」。指揮官からの絶大なる信頼に応えるスーパーシュートで、チームを3回戦へと導くこととなった。
福岡大は強かった。「本来なら前半で3対0ぐらいのチャンスがあった」と乾監督が言うように福岡大が水戸を圧倒しての勝利。この日、スタジアムに足を運んだ多くのスカウト陣も多くの手土産を持って帰ることができただろう。水戸はその引き立て役に過ぎなかった。
水戸はリーグ戦の悪い流れを断ち切れないまま、公式戦7連敗を喫することとなった。この試合においても目立ったのはメンタル面の弱さであった。福岡大の激しいプレスを前にミスを連発。「3失点ともいらないミスから」(荒田)喫した点であり、リーグ戦に続き、この試合でも悪い流れを自らの手で立て直すことができなかった。「悪い時ってなかなか好転していかないなと思った」と木山監督も苦笑いするしかなかった。今の水戸が対峙しているのは戦術や技術の問題ではなく、精神的な問題である。90分間、チームが一つになって戦い抜く強い気持ちが必要だ。
3年前の再現となってしまっただけにショックは大きい。しかし、忘れていけないのは、あの屈辱があったからこそ、今があるということだ。あのとき、チームはカウンターサッカーからポゼッションサッカーに切り替えている最中であった。その中で苦しみもがいたが、それでもやることをぶれさせずに前進を続けた。その積み重ねが、今季の躍進につながったことは間違いない。今、水戸にできることはこの敗戦を無駄にしないこと。どんなに苦しいときでもやるべきことを見据えて、そこに向けて突き進む。それが今後の力となり、さらなる飛躍につながることだろう。
膝を思い切って曲げた方が高く飛べる。この長く深い苦しみがチームをより強くするはず。今こそ、胸を張って顔を上げる時だ。
以上
2009.10.11 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
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