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【第89回天皇杯2回戦 鳥栖 vs 佐賀東】レポート:清々しさと意地を見せた佐賀県勢同士の熱き戦い。序盤は佐賀東高が押し込むも、終わってみれば鳥栖が圧勝。観戦者すべてがスタンディングオベーションで選手を送る。(09.10.11)

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10月10日(土) 第89回天皇杯2回戦
鳥栖 5 - 0 佐賀東 (13:03/佐賀/4,249人)
得点者:44' 山瀬 幸宏(鳥栖)、63' オウンゴール(鳥栖)、72' トジン(鳥栖)、88' 池田 圭(鳥栖)、89' サムエル(鳥栖)
天皇杯特集
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サッカーの試合を見終わって、これだけ清々しい気持ちになったのはいつ以来だろう。敗れた佐賀県立佐賀東高等学校(以下、佐賀東高)の選手たちがバックスタンドで応援してくれた仲間に挨拶を済ませた後である。向かった先は、サガン鳥栖(以下、鳥栖)のサポーターたちの前であった。一礼する佐賀東高の選手たちに、バックスタンドに陣取ったサポーターたちから多くの拍手が贈られた。メインスタンドでも、鳥栖のサポーターと佐賀東高のサポーターたちが、引き上げてくる佐賀東高の選手たちをスタンディングオベーションで迎えた。

佐賀県代表の佐賀東高と佐賀県鳥栖市をホームタウンにする鳥栖。どちらも県民にとっては大事な宝物。その両者が90分間一切手を抜かずに戦い終わったのだから、誰も結果についてはとやかく言わない。いやっ、言うわけがない。鳥栖が奪った5得点は、先輩としての意地を見せたものであり、佐賀東高の5失点は、敗者でも胸を張れる結果である。第89回天皇杯第2回戦 鳥栖対佐賀東高の一戦は、90分間の試合中、歓声と悲鳴とやむことがないドラマであり、結果以上に得るものが大きい試合だった。

そう感じさせたのは、試合直後からの佐賀東高の直向さである。「いつものサッカーをどれくらいできるのか・・・」試合前から蒲原晶昭監督(佐賀東高)は、選手たちに伝えていた。佐賀東高のサッカーは、争点に人数をかけてボールを奪い、奪ったボールをつないでフィニッシュまで持っていくことを身上としている。4−4−2のシステムではあるが、中盤のボランチを除く2枚のMFは中に絞り、争点に人数を掛けやすくしている。
蒲原晶昭監督は、彼らのことを“トップ下”と表現する。言い換えると4−2−2−2、4人のDFの前に2人のボランチ、2人のトップ下、2人のFWがいる布陣である。このシステムで、果敢に鳥栖のボールを奪いに来た。その結果、鳥栖は中盤でボールをまわすことができず、単調にボールをFWに送るだけになってしまった。鳥栖の中盤からの攻撃参加は激減し、FWがひたすらゴールを目指すシーンだけが増えた。中盤が機能しなければ、カウンター攻撃を受けやすくなる。6分には、FW赤崎秀平が持ち込んでシュートを放つと、20分には抜け出したMF江頭駿がGKと1対1になるチャンスを迎えた。佐賀東高が、Jリーグチーム相手に先制点をあげてもおかしくない場面であった。

しかし、佐賀東が前半に放ったシュートはこの2本だけ。鳥栖も無得点で終わろうかとしていた44分に相手のボールを奪ったFW山瀬幸宏が均衡を破るゴールを左足であげた。再三、シュートを止められていた山瀬幸宏だったが、前半終了間際にプロフェッショナルの意地を見せて前半は鳥栖が1点をリードして終わった。

後半に入ると、佐賀東高の運動量が少しずつ落ち始めた。この状況を見逃さずに、鳥栖に更なるパワーを与えるプレーを実践した選手が、この試合で出場選手中最高齢のMF山田卓也である。「今、何をしないといけないかを一番知っている選手」と彼を岸野靖之監督は評価する。
72分には、FWを追い越してから3点目となるゴールへの起点となっただけでなく、積極的にDFの裏に飛び出しては、佐賀東高の守備を緩めていた。このDF裏に飛び出す動きは、前半に見られなかったもので、単調だった鳥栖の攻撃にアクセントを加えるだけでなく、佐賀東DFの体力と判断を確実に奪っていった。鳥栖はこの72分の得点から立て続けに3得点を奪って突き放してしまった。

硬いグランドで不規則に弾むボールに苦慮する場面も多かったが、この試合を観戦した4,249人の中から多少のミスやハード面での問題を指摘する人は皆無だろう。むしろ、その中でも90分間戦い通した選手たちに賛辞を贈りたいし、感動を与えてくれたことに感謝したい。一個のボールをめぐって繰り広げられた攻撃と守備。一本のシュート、各プレーごとに上がる歓声と悲鳴、その後に訪れる拍手の波こそが、サッカーの面白さとスポーツの素晴らしさを表していた。
天皇杯だから見ることができる白熱した試合。天皇杯だから得られる感動。天皇杯だからこそ、違うカテゴリーとの真剣勝負があるわけで、両チームとも天皇杯にふさわしいプレーを見せてくれた。

勝者と敗者、勝負の世界だからどちらかに別れてしまうのは当たり前のこと。90分間を通してそのどちらかにたどり着く。アスリートならば、勝負が決するまでは手を抜くことはないだろう。
しかし、終了のホイッスルがなるまで持てる力を出し切ることは、なかなかできない。年齢やカテゴリー、目指す目的が違っても、最後までボールを追いかけきることができるのは、純粋にサッカーを愛しているからできること。私たちも、一緒にボールを追うことはできないが、最後まで声援を送ることでサッカーを愛していることを表現できる。
サッカーに感謝したい。

以上

2009.10.11 Reported by サカクラゲン
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