10月10日（土） 第89回天皇杯2回戦
草津 3 - 1 佐川滋　（13:00／群馬サ／1,604人）
得点者：37' 櫻田和樹（草津）、43' 後藤涼（草津）、46' 都倉賢（草津）、79' 山根伸泉（佐川滋）
☆天皇杯特集
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草津がＳＡＧＡＷＡを寄り切った。先制点を奪い取ったことでトーナメント独特の重圧から解き放たれたＪ２草津は、ＪＦＬ首位を独走するＳＡＧＡＷＡ　ＳＨＩＧＡ　ＦＣ相手に迫力のフットボールを展開。櫻田和樹のゴールを皮切りに３発を相手ゴールへと叩き込み、３回戦へと駒を進めた。

７日にホーム正田スタで、J２リーグ戦の鳥栖戦を行い中２日で今ゲームを迎えた草津は、右サイドバックに崔成勇、左サイドバックに寺田武史を起用し「両翼」をチェンジ。都倉賢、後藤涼を前線に配置する４−４−２のシステムでＳＡＧＡＷＡを迎え撃つ。一方のＳＡＧＡＷＡは、リーグ戦と同じ４−５−１のシステム、攻撃的なスタイルで草津へ挑む。

ゲーム序盤はＳＡＧＡＷＡの草津対策が効を奏す。ＳＡＧＡＷＡは、エース都倉に対してボランチが徹底マーク。櫻田・藤井大輔の両ボランチとセンターバックとの『大動脈』にプレッシャーを加えて草津のリズムを乱しにかかる。「センターのところでパスが展開できず苦しい時間帯が続いた」（佐野達監督）。

リーグ戦と違う雰囲気に乗り切れない草津は、ＳＡＧＡＷＡのパスワークに翻弄されるシーンも目立ち、１４分にはＣＫでの緩いマークの隙を突かれて鋭いミドルシュートを打ち込まれる。そのシュートを気合のヘッドでクリアした都倉はチーム全体を激しく怒鳴り飛ばし目覚めないチームに喝を入れる。「松さん（松下裕樹）が出場停止でチームを引っ張る人が少なかったので自分も声を出した」（都倉）。そんな気迫も草津を甦らせた要因の一つだった。

草津に待望の先制ゴールが生まれたのは３７分だった。右サイド廣山望が内へと切り替えしてゴールへと向かうクロスを入れる。そのボールをペナルティエリアに飛び込んだ櫻田がゴールに背を向けながら左足でチップ。意表を突いたシュートがサイドネットへと吸い込まれる。「ゴールは見えなかったが左足のアウトサイドで合わせた」（櫻田）。

先制点が草津に勢いを呼び込む。続く４３分には櫻田のクロスに後藤がヘッドで合わせて追加点。後半開始直後の４６分には、有園真吾が蹴ったクリアボールを追った都倉が相手センターバックと競り合ってボールを奪取。都倉はセンターバックを引きずりながら右足を振り抜き豪快にネットを揺らす。「前半から相手のリスクマネジメント意識が薄かったので常に狙っていた」と都倉。

３点のリードで余裕が生まれた草津は、若い選手たちが自信溢れるプレーを魅せてスタジアムのムードは最高潮。終盤にセットプレーからＳＡＧＡＷＡ・山根伸泉に決められ１失点したものの、ファイティングスピリット全開の戦いを見せ３対１でゲームを締めくくった。

ＳＡＧＡＷＡは、主将・山根を中心に草津ゴールへと迫った。ＳＡＧＡＷＡが展開したパスワークには、時折、スタンドからどよめきが起こった。中盤からサイドへの展開までは形となっていたが、バイタルエリアでのクロス精度、シュート精度が足りず草津を追い込むまでは至らなかった。「この課題をＪＦＬに持ち帰って見つめ直したい」（中口雅史監督）。Ｊクラブ相手に攻撃的なスタイルを貫いたことは、今季の残りリーグ戦、さらに来季以降へつながっていくことだろう。

３回戦の試合が開催される長崎行きの『チケット』を確保した草津は、順当に行けばＦ東京との対戦が待つ。「僕らがどれだけ戦えるか試したい」と櫻田が話せば、都倉は「失うものはない。フルパワーで戦う」と気持ちを高ぶらせる。草津はＪＦＬ時代の２００４年にＪ１の２チームを破ってベスト８まで進出したが、準々決勝の地・長崎で負けて夢が途切れた。あれから５年、草津は夢の続きをサポーターに届けるため長崎へと乗り込む。苦しみ抜いて成長を遂げた今季のチームには大きな夢をつかむ権利がある。

以上


2009.10.11 Reported by 伊藤寿学