10月11日（日）第89回天皇杯2回戦 徳島 vs 鹿体大（13:00KICK OFF/徳島球）
-試合速報はこちら-
☆天皇杯特集
----------
昨年、徳島は天皇杯を非常に屈辱的な結果で終えてしまった。初戦（3回戦・2008/10/12）で国士舘大学に0-1。チームは思うようにチャンスを作れなかったばかりか、思い切りよく仕掛けてくる学生たちの攻めにたびたびヒヤリとさせられ、ついにはもつれ込んだ延長戦で決勝点を奪われて敗れた…。確かにその国士舘大学は続く4回戦でJ1王者・鹿島をも追い詰めたほどの好チームであったが、とは言え属するカテゴリーの違いを考えれば徳島にとってその敗戦はやはり言い訳のできない失態であったと言わざるを得ない。

しかしそれからちょうど1年。改めて説明するまでもないだろうが、現在の徳島は大きな成長を遂げている。美濃部直彦監督が昨年から作り上げてきた土台をベースに、今季リーグの厳しい戦いを重ねながら着実に組織力をアップ。それによって過去3年の不振が嘘のような結果を今シーズンここまでで出しており、チームは確かにJクラブとしての威信を取り戻したと言えよう。
そして迎える今年の天皇杯で徳島はまたも初戦を大学チームと戦う。vs鹿屋体育大学─。今年こそ選手たちはプロフェッショナルとしてあるべき姿と結果をピッチで示さなくては。

その徳島だが、直近のリーグ戦（44節）では湘南に屈した。1点のビハインドを追って後半果敢にゴールを目指したものの、勝負をひっくり返すには及ばず惜敗。ただその一戦、チームには負けたこと以上に悔まれることがある。それは最初の45分をやや緩い状態で過ごしてしまったこと。試合開始早々に先手を取られたのだが、いきなり食らったその先制パンチの場面も含めて前半の徳島の戦いにはメンタル面の物足りなさが感じられた。事実、球際の厳しさで完全に湘南にイニシアチブを握られ、ハーフタイムには美濃部監督が「戦っていない！もっと気持ちを見せろ！」と檄を飛ばしたほど。指揮官は終了後にも再度「しっかり戦う気持ちをまず見せないといけない」と語ったが、いずれにしても徳島にはその部分の立て直しが必要と言えるだろう。

そしてそれは次節のリーグ戦より前に、この天皇杯・鹿屋体育大学戦で早速強く求められることだ。
過去幾つかの例（昨年鹿島をPK戦にまで引きずり込んだ国士舘大学もそうだし、2003年には市立船橋高校が当時のJリーグ王者・横浜F・マリノスをこちらもPK戦にまで追い込んでいる）があるように、学生年代のチームは選手たちの年齢や性格の特性から気持ちの変化ひとつで思わぬ力を発生させてくる。ノリから来る底知れぬ勢いとでも言おうか。そうしたところではある意味、常に落ち着いて自分たちのサッカーを実践しようとするプロのチームよりも未知の怖さがあると言っていい。
そこで話を徳島に戻すと、だからこそ徳島はリーグ前節のような緩い試合の入り方を決して繰り返してはならない。開始直後からあらゆる局面で100％の厳しさを出し、早い時間にゴールも奪って鹿屋体育大学の意欲を削いでいくことが重要となろう。彼らに「いける！」という意識を芽生えさせてしまうと厄介な状況に陥りかねないのだから。となれば、そのためには前線から連動した強烈なプレスが不可欠。羽地登志晃、柿谷曜一朗らのチェイシングに呼応し、倉貫一毅、青山隼らも次の出所を読んだ動き出しで早い寄せを徹底して鹿屋体育大学の自由を奪いたい。そうすることで高い位置でのボール奪取を実現できれば、序盤で勝負を決めてしまう幾つかのゴールも生み出せることだろう。

逆に、鹿屋体育大学としては臆せず前への意識を高く持つことで勝機を探りたいはず。やはり冷静に見れば押し込まれることが予想されるが、ボールを奪った瞬間の素早い切り替えから後ろの選手が次々と前を追い越す動きで仕掛けられればチャンスも掴めるに違いない。九州大学リーグで得点ランク上位につける岡田翔平を中心とした攻撃にどこまで積極性を出せるかが注目される。

カテゴリーを飛び越えた波瀾が起こるのがノックアウト方式のトーナメント。それだからこの天皇杯はリーグと違う面白さがあるのだろう。しかし、徳島としては同じ轍を踏むわけにはいかない。取り戻したJクラブのプライドに賭けて、必ず次へ駒を進める結果を手にしなくてはならないのだ。

以上

2009.10.09 Reported by 松下英樹