10月7日（水） 2009 J2リーグ戦 第44節
草津 0 - 1 鳥栖　（19:34／正田スタ／1,579人）
得点者：79' 武岡優斗（鳥栖）
スカパー！再放送 Ch186 10/9（金）10:00〜（解説：小田島隆幸、実況：梨子田友和、リポーター：円戸由香）
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今ゲームを迎えるまでともに4連勝を果たしていた両チームの対戦は、鳥栖に軍配が上がった。昇格という確固たる目標に向かって突き進む鳥栖は、勝負所を掌握した戦いを演じてクラブ史上初となる5連勝を記録。次節から始まる仙台（10／18＠佐賀）、湘南（10／21＠平塚）、甲府（10／25＠佐賀）の昇格サバイバルレースへ弾みをつけた。敗れた草津は若い選手たちを中心に健闘を見せたが、鳥栖の守備網を突破できずに連勝がストップした。

ボランチ松下裕樹を映像判定による出場停止処分で欠いた草津は、代役に藤井大輔を起用。好調・小林竜樹を先発から外し、後藤涼、都倉賢が前線に張るシステムでゲームへ挑む。一方の鳥栖は前節で11試合ぶりに復帰した山瀬幸宏が、ハーフナー・マイクとの2トップで今季の草津戦3連勝を狙う。ゲームは、中盤をフラットにした4−4−2の布陣同士がコンパクトなスペースでぶつかり合う展開となった。

序盤は、都倉賢、後藤涼の2トップがDFとMFのギャップでボールを受けて起点となり、草津がリズムをつかむ。そして櫻田和樹、ルーキー佐藤穣ら中盤がパスをつないで鳥栖のゾーンディフェンスを揺さぶっていく。だが、鳥栖の全員守備に拒まれ決定機を迎えることができず相手に立ち直りの時間を与えてしまう。「ボールは動いていたが、変化が少なくシュートまで持っていけなかった」（佐藤穣）。

立ち上がりを耐えた鳥栖は、次第に中盤でボールを奪う回数が多くなり、ゲームの主導権を奪いにかかる。ハーフナーを起点として草津守備陣を押し込むと、キッカー島田裕介のCK、FKも有効活用しプレッシャーを与えていく。草津は前半終了間際からボックス内ヘボールを運べなくなり、気付かぬうちにゲームは鳥栖のリズムへとすり替わっていった。

後半早々、草津は小林、鳥栖はトジンをピッチへ投入、両チームともに切り札を使って勝負を仕掛ける。そして、ゲームが中盤から終盤に差し掛かろうとした時間帯から、ピッチに変化が生じてきた。「うちは幅を使って攻撃を仕掛けたかったが、鳥栖が縦に早いサッカーをしてきて、それに付き合うような展開になってしまった」と櫻田。

鳥栖の決勝ゴールは「縦」から生まれた。79分、ハーフナーのポストから高地系治がバイタルへと迫る。「草津のDFがズレたのが分かったので突っ込みながら右へ流した」（高地）。右サイドを駆け上がった武岡優斗がダイレクトで振り抜いた低弾道のシュートは逆サイドのポストへ当たりゴールへと吸い込まれた。1点を奪った鳥栖は草津の後半シュートをわずか2本に抑え込み、プラン通り1−0で勝利を収めた。

鳥栖は90分に渡って走り続けた武岡、高地の両MFの運動量がチームを支えた。また、草津2トップを封じた両センターバック、さらにサイドに安定をもたらした柳沢将之、磯崎敬太の貢献度も極めて高い。個を封印して組織で戦う鳥栖の姿に大きな可能性を感じた。5連勝を果たした鳥栖・岸野監督は試合後会見で「連勝は興味がない。大事なのは12月5日に泣いているか笑っているか」と訴えた。クラブにすべてを捧げる指揮官の言葉は、ダイレクトに心へと突き刺さる。熱血漢に率いられた鳥栖が最終節にどんな結果を残すかは分からない。ただ、サポーターに感動を届けることは間違いないだろう。

「たとえ10連勝しても51試合の結果がダメだったら意味がない」（岸野監督）。このコメントは、草津にも当てはまる。草津は、前節までの4連勝という結果に安心するのではなく今季の結果を受け止めた上で残りゲームに挑まなければならない。櫻田は「鳥栖相手に良い内容の試合はできたが、もう内容だけでは納得がいかない」と話したが、意識は変わり始めている。シーズン序盤で昇格争いから脱落した草津は、残念ながら「泣いたり笑ったり」というスリルを味わえる位置にはいないが、選手たちは確実に進化を遂げた。残り試合では、スリルに代わる感動をサポーターへ運んでほしい。草津にとって残り7戦は重要な意味を持つことになる。

以上


2009.10.08 Reported by 伊藤寿学