10月7日（水） 2009 J2リーグ戦 第44節
湘南 1 - 0 徳島　（19:03／平塚／3,301人）
得点者：2' 中村祐也（湘南）
スカパー！再放送 Ch183 10/8（木）20:00〜（解説：前田秀樹、実況：野村明弘、プレーヤー解説：遠藤雅大、リポーター：児玉美保）
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開始早々にゴールネットを揺らした湘南が1-0で勝点3を手にした。今季3度目の対戦にして初の白星、ひも解けば2007年7月以来、実に2年越しとなる徳島からの勝利である。背景には、勝つための狙いとその遂行、そしてテーマとシンクロするFWの意気があった。

苦い記憶はおよそ2ヶ月前にさかのぼる。第34節アウェイ草津戦、中村祐也は裏を取り、GKとの1対1に持ち込んだ。だがシュートに持ち込むまえに敵に寄せられ、決定機を逸した。1点ビハインドという状況も頭にあったろう、確実性を求めたゆえの切り返しが、しかしシュートチャンスを潰したのだった。後半2分のことである。

「汚点です」と、苦々しく振り返ったものだ。指揮官も認めるチーム随一のシュートの巧さでゴールを量産してきた中村にとって、くだんの判断ミスはともすれば自信喪失に繋がりかねなかった。「なにかを変えなければいけない」そう期して改めたのが、ハードワークとシュート意識の向上だった。
「うちはミドルが少ないし、自分自身FWとして点を取れていない。中途半端にミスして失うよりもシュートを撃つことが大事。撃たなければ入らないと思い知ったし、なにより僕自身の点を取りたい気持ちがシュートに繋がっている。あのミスを活かさなければならない。それは試合でしか取り戻せない。いかに状況判断できるか、自分のなかの勝負です」

試合開始2分、ジャーンからのロングパスを田原豊が胸で落とし、中村が受ける。囲まれながらも落ち着いてキープし、コースを見出すや右足を一閃、迷いなき弾道がゴールに届いた。10試合越しの思いの結実は、自身3ヶ月ぶりの得点でもあった。

振り返れば、田村雄三から臼井幸平、田原と繋ぎ、中村がゴール前に迫ったキックオフ直後の一連のシーンが、「シュートで終わる」と指揮官が明かしたこの日の姿勢をすでに暗示していたといえるかもしれない。先制したのちも、菊池大介や寺川能人らが積極的にシュートを狙っていく。田原を軸とする前への推進力は力強く、かたやクサビに対する村松大輔の厳しい寄せやジャーンのブロック、DFラインのまえの田村のチェックと空いたスペースの寺川のフォローなど守備も堅い。また自陣で奪うや坂本紘司が裏を突いてカウンターを仕掛けるなど、攻守の切り替えにも集中力の高さが見て取れた。他方、徳島もサイドからの攻め上がりを絡めて反撃する。中盤の攻防は激化し、互いに容易にはフィニッシュまで持ち込ませない。ただそうした展開においても湘南のシュート意識が褪せなかったことは、前半8本という記録が物語っている。

ビハインドを背負う徳島は後半、右サイドを中心に相手陣内へと攻め込む。54分、右サイドのぺ　スンジンのクロスに羽地登志晃がファーサイドで折り返し、徳重隆明がゴール前に走りこむと、直後には徳重の右クロスに羽地がどんぴしゃでヘッドを合わせた。だがこれはGK野澤洋輔の正面を突いている。湘南が前半に引き続き田原を起点に展開するなか、徳島は途中出場のファビオが裏を狙い、あるいはセットプレーからゴールを窺った。76分に投入された石田祐樹は高い位置に構え、最終ラインからのロングパス1本で裏に抜け出す惜しいシーンも演出した。しかし反撃態勢を整える一方で、ひとり少ない戦いを強いられたのは痛かったに相違ない。ロスタイムにゴール正面で得たフリーキックもブロックされ、湘南が笛の鳴るまで堅守を貫くのだった。

天皇杯第2回戦を挟み、来週末（10/17）、徳島はホーム鳴門大塚にて札幌を迎え撃つ。今季2戦2分の決着をつけるとともに、順位を逆転し、上位に食い込みたい。一方、湘南は本来の粘り強い守備が光った。またゴールの顔ぶれが毎試合のように違うところにも湘南らしさが映える。自分たちのサッカーを携え、天皇杯第2回戦、そして次節（10/18＠富山）は富山に挑む。

以上


2009.10.08 Reported by 隈元大吾