10月3日（土） 2009 J2リーグ戦 第43節
湘南 3 - 1 岡山　（16:03／平塚／5,872人）
得点者：12' 菊池大介（湘南）、38' 田原豊（湘南）、54' 川原周剛（岡山）、73' オウンゴ−ル（湘南）
スカパー！再放送 Ch181 10/5（月）09:30〜（解説：川本治、実況：中村義昭、リポーター：安田美香）
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ひとつのポイントは試合の立ち上がりにあった。「前節早い時間に失点してしまったので、きょうはゲームの入り方といい守備からいい攻撃に繋げることを意識して臨んだ」と、岡山の手塚聡監督は明かし、対する湘南の反町康治監督も戦前、「先制点が欲しい」と語っていた。果たして序盤から互いに激しく渡り合うなか、12分、ホームの湘南が先手を取る。

この日、左サイドバックに抜擢された島村毅が坂本紘司に預け、坂本はフリーで構える中央の寺川能人へ送った。そして敵の背後を突く寺川のパスに反応したのは菊池大介である。「絶対にパスが来ると信じてギリギリのところで走りました」。相手GKとの1対1に一瞬、おなじシチュエーションで阻まれた昨季終盤の岐阜戦が頭をよぎったという。だがそれもつかの間、「なぜかわからないけど」すぐに落ち着きを取り戻し、冷静にコースを見極め、ゴールという結果を出してみせた。ひとつ歳を重ねて培った経験ゆえかもしれない。長く試合に出られなかった忸怩たる思いと期する気持ちもあったろう。またクイックリスタートで裏を盗っていた数分前の伏線も見逃せない。

早々にビハインドを背負った岡山の攻撃が活性し始めるのは、20分を過ぎたあたりからだった。前線の三木良太を起点に右サイドバックの玉林睦実のオーバーラップが頻度を増し、また妹尾隆佑の2列目からの飛び出しも増えていく。29分にはペナルティエリアに侵入した妹尾がシュートを、さらには保坂一成が際どいミドルを立て続けに放った。かたや湘南も38分、スローインから瞬時にゴール前で2対2の状況をつくる。ボールを持つ中村祐也を後ろから猛然と追い越したのは、直前のスローインを競った田原豊だ。中村からラストパスを受け、左足を振り抜く。豪快に射抜かれた追加弾は自身13節ぶりのゴールで、チームにとっても15試合ぶりとなる待望の「2点目」だった。

「アグレッシブな入り方をすること」残り45分に向け、そう指揮官に送り出された岡山は、前半とはまるで合わせ鏡のように立ち上がりから圧した。シュート意識をさらに高め、三木や妹尾、後半開始から投入された川原周剛らが積極的にゴールを狙う。こじ開けたのはその流れの先、54分だった。素早いリスタートから妹尾が左サイドを抉る傍ら、DFラインの前のスペースに川原が走る。「得意な位置だったのでコースをしっかり狙って撃ちました。イメージどおりだった」。妹尾のラストパスを受けた川原のシュートは、それまで好守を連発していたGK野澤洋輔の手をも掠め、ゴールに吸い込まれたのである。

追い上げを食らった湘南にとって、対処すべきこの時間帯もまたポイントだったといえるだろう。ベンチワークは素早い。すかさず鈴木修人を投入し、田村雄三とのダブルボランチにして中盤を落ち着かせた。鈴木は鋭い読みとタイトな球際で田村とともに敵を封じ、また攻撃の起点としても効いた。そして73分、精度の高いその右足が、宵闇に浮かぶ中秋の名月にも優る輝きを放つ。ペナルティエリアの手前、左寄りから狙った鈴木のフリーキックは、おそらくは枠をも捉えていただろう、GKとDFの間を突き、相手のオウンゴールを誘うのだった。前半の相手との交錯の影響か、岡山にとってはGKが代わった直後でもあった。

両者ともに最後まで走りきる激闘はこうして決着した。岡山としては、序盤に垣間見せた一瞬の隙が悔やまれるが反面、前後半ともに自分たちの時間帯をつくり、相手ゴールを脅かしてもいる。次節のホーム栃木戦を含む残り試合に向けて、収穫は少なくないはずだ。対して湘南も、連敗の許されないなか大事な勝点3を掴み、J2ホーム100勝とともに反町監督のJ2での100勝目を刻んだ。残るは8試合、しかし「一戦一戦」を合言葉に闘うチームにとって、つぎのゲームが1分の1であることに変わりはない。若手の活躍や複数得点といった収穫を引っ提げ、次節、ふたたびホーム平塚にて徳島に挑む。

以上

2009.10.04 Reported by 隈元大吾