9月23日（水） AFCチャンピオンズリーグ
川崎Ｆ 2 - 1 名古屋　（15:00／国立／17,939人）
得点者：28' ケネディ（名古屋）、60' 中村憲剛（川崎Ｆ）、63' ジュニーニョ（川崎Ｆ）
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試合前の選手紹介時。年に数回だけ制作される煽り映像が場内に流される。静まり返る川崎Fサポーターは、その映像を食い入るように見つめていた。次々と映し出される「あの日」の静止画と、流れていく言葉の数々。そして「止まった時が今　動き出す」の文字。07年9月26日を境に止まっていた時は、ACL準決勝への歩みを再開させた。

ナビスコ杯とはまた異質の、ノックアウトステージに特有の緊張感が漂う中、川崎Fは前半3分にジュニーニョがオープニングシュートを放つ。懸案だった累積警告の村上和弘のポジションには森勇介が入っていたが、その森からのパスを受けてのジュニーニョのシュートとなった。

一方の名古屋のファーストシュートは、8分に中村直志が放ったミドルレンジからのもの。名古屋にしてみれば無理にパスをつなごうとしてボールを奪われ、不用意なカウンターを食らうならば、思い切ってミドルシュートを放とうという考えがベースにあったのかもしれない。

お互いにけん制しあう中、試合自体は堅い内容となる。ただし名古屋に決定的な場面は作らせていなかったという意味では、川崎Fのペースの前半の立ち上がりだった。ただ、そうした試合が、前半28分のケネディのヘディングシュートによって動く事となる。川崎Fにしてみれば警戒していたケネディのゴールだったという点で残念であり、さらにはアウェイゴールを奪われたという点で手痛い失点となった。

均衡は崩れたのだが、試合のほうは劇的に変化する事もなく、同じペースで進んでいく。川崎Fにしてみればいつでも点は取れる、という落ち着きがあったのかもしれない。もちろんまだ前半だという点と、ポジションをブレイクし、スペースを与えて無理に攻めなくとも、攻略に手ごたえを感じていた、という事が大きかったのかもしれない。

勝負の後半。試合の流れを代えたのはやはり中村憲剛だった。後半60分。ピッチを広く使う展開の中、レナチーニョがペナルティエリア付近で勝負を仕掛け、FKを奪う。角度のないところでのFKだった事もあり、スタジアム中の誰もがゴール正面の味方選手の頭に合わせてくるのだろうと考えていた。だからこそ壁に入った小川佳純は、ボールを遮ろうと体を大きく左に動かすのである。

「FKは狙ってました。壁が割れようが割れまいが、とにかくあのコースしかないと思っていた」と振り返る中村憲剛のFKは、絶妙なコースを飛んでニアサイドへ。これがファインセーブを連発してきたGK広野耕一の手をかすめてゴールへ。まずは川崎Fが同点に追いつく。

川崎Fはこの同点ゴールのタイミングで大きな戦術的な変更を施している。左サイドで先発していた森を、右サイドへと移動させ、その左サイドに伊藤宏樹をずらし、菊地と井川祐輔とをCBのポジションに据えたのである。

「ケンゴがFKを蹴る前に行けと言われました。それでFKが入ったので、どうするのか聞いたんですが、そのまま代わろう（という事で代わりました）」と話す森。63分の逆転ゴールは、その森からの右サイドからのクロスによって生まれており、そういう意味では関塚監督の采配が的中したと言えるだろう。

アウェイゴールを奪われた川崎Fにしてみれば、点差を少しでも増やしておきたかったところだが、チャンスは思うように得点に結びつかず。逆に79分にレナチーニョに代わり山岸智が投入されたタイミングで「セーフティーに行こう」とのベンチの意図がピッチ上に浸透したという。

72分に吉村圭司からブルザノビッチに。さらに87分に2枚を同時交代させた名古屋は終盤に怒涛の攻めを見せるが、川崎Fの守備陣がこれを跳ね返し続け、同点ゴールを奪うことはできず。結局川崎Fがホームで先勝する事となった。

試合を通してみたときに川崎Fが主導権を握っていたのは間違いないが、試合終盤の名古屋の攻勢はゴールを脅かすのに十分な迫力を持っていた。そういう点では1週間後、ホームに帰った名古屋がどのような試合運びを見せるのか注目したいと思う。そしてその名古屋の攻撃を川崎Fがどのように受け止めるのか、楽しみにしたいと思う。

以上

2009.09.24 Reported by 江藤高志