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【ヤマザキナビスコカップ 川崎F vs 横浜FM】川崎F側レポート:川崎Fは4年目のプロ初先発・杉山を中心にアウェイゴールを許さず。快勝で決勝進出へ大きく前進。(09.09.03)

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9月2日(水) 2009 ヤマザキナビスコカップ
川崎F 2 - 0 横浜FM (19:00/等々力/11,850人)
得点者:15' 鄭大世(川崎F)、57' ジュニーニョ(川崎F)
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 この日出番のなかった木村祐志が饒舌になる。日本代表をチームメイトに持つ、1つしかないポジションの同期選手の活躍を心から祝福していたのである。
「(試合展開的に)ハラハラしましたが、杉ちゃん(杉山力裕)のプレーについては安心して見てました」。出場機会のない試合後に話しかけられ、怪訝そうな表情をしていた木村祐は、杉山について聞かれると「杉ちゃんは同期ですし、ずっとがんばっていましたから」と、満面の笑みになった。

 川崎Fがホームに横浜FMを迎えたヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦。アウェイの横浜FMは明らかに早いタイミングでクロスを入れていた。試合前日に横浜FMの木村浩吉監督は「GKが変わったのは大きい。はじめてのGKなので狙っていく」と話しており、彼らの狙いがプロ初先発のGK杉山にあるのは確実だった。経験のないGKの目前にクロスが入れば、目測や、判断を誤る可能性も否定できない。実戦の場での最終ラインとの連携はこの試合が初めて、となれば対戦チームとしてそこを狙うのはセオリーだともいえる。しかしそんな横浜FMのもくろみが成就する事はなかった。最終ラインは落ち着いてこれをはじき返し続け、杉山自身も判断を誤る場面はほぼなかった。

 横浜FMが狙おうとしたポイント自体は悪いものではない。しかし受ける川崎F側がしっかりと対処すれば、その作戦は拙攻と評価される事となる。結果的に横浜FMは雑な試合運びを見せる形となった。

 一方の川崎Fは前半15分に鄭大世が先制点をねじ込み、試合を優位に運ぶ。このヤマザキナビスコカップはアウェイゴールルールが適用される大会でもあり、1点のリードで気を緩ませるのは自殺行為に等しいが、川崎Fの選手たちの間に弛緩した空気が流れた様子はなく、集中を切らす事もなかった。そんな中、川崎Fは前半26分に菊地光将が太ももの違和感によって負傷交代するというアクシデントに見舞われる。しかし、代わってピッチに立った井川祐輔がすんなりとチームに溶け込み、横浜FMに付け入る隙を与えなかった。

 アウェイで1点を奪えれば、たとえ1-1の引き分けであっても優位に立てる横浜FMは後半に入り猛攻に入る。気持ち的に後ろ向きになった訳ではないのだろうが、川崎Fは「らしさ」を出すことなく受けに回る。ラインは下がり、前線との距離は間伸びする。結果的に横浜FMの分厚い攻撃にさらされ、攻撃は散発なものにとどまった。初先発のGKを最後尾に置く川崎Fの選手たちに不安の影が蔓延していたとしても不思議ではなかった。しかし、守る事に意識を統一させたチームは、一体感を持って横浜FMの攻撃を受け止め続けた。そしてそんな戦いの中、川崎Fに守備を機軸としたリズムが生まれる。鄭大世はそうしたチーム内の空気について「今日はリキ(杉山)が初スタメンだったので、リキを助けようという形でノレた」と振り返っている。川崎Fというチームの強さは、お互いにチームメイトを思いやり、それぞれの長所を使おうとチームがまとまれるところにあるが、それがこの試合でもいい形で出ていたといえる。

 川崎Fが「守ろう」と割り切れたのは、57分にジュニーニョの追加点が決まっていたという事情もあった。ホームで2-0。そして横浜FMはアウェイゴールを奪おうと前に出てくる。「らしく」打ち合っても良かったのだろうが、川崎Fはその選択肢を捨てるのである。もちろんアクシデントにより、前半のうちに交代カードを1枚消化していたという事情もあったのだろうが、それらの要素が絡まりあった結果として後半は、横浜FMが主導権を握る事となる。
 前半は川崎Fがシュート7本を放ったのに対し、横浜FMは8本と数字自体は拮抗していた。それが後半は川崎Fの4本に対し、横浜FMは16本と4倍に膨れ上がるのである。しかし、川崎Fの守備陣は横浜FMの攻撃をことごとくはじき返した。もちろん何本も入ってくるクロスに対し、杉山がそのすべてで正しい判断を下せていたわけではなかった。たとえば杉山自身、交代出場の金根煥が84分にヘディングシュートした場面について「迷いました」と話している。そういう点でいえば無失点で試合を終えられたという事について、運も味方した部分があったのも事実だろう。ただ、そうした点を念頭に置いたとしても、この日の川崎Fは局面局面で試合をどう動かすかの共通理解と、それに基づいた最善のプレーを続けていたといえる。
 なんとかアウェイゴールをとの思いに突き動かされた横浜FMが、試合終盤に猛攻を仕掛けるが、鉄壁の川崎F守備陣を崩すことはできず。最終的に2-0で試合は決着する事となった。

 完封勝利の立役者となった杉山は「F・マリノスはすごいメンバーがそろっていた。その相手にまさか完封できるとは思っていませんでした。今日はみんなが支えてくれたと思います」と望外の結果に対するチームメイトへの謝意を口にした。しかし彼にとってもっとも伝えたかったのは、女手一つで彼と2人の姉を育てた家族への感謝の気持ちだった。杉山の父親は3歳の時に他界しているが、母親は杉山のサッカーへの取り組みを全面的にバックアップしてくれていたのだという。
「(母は)何も言わずに自由にサッカーをさせてくれました。(姉と共に)今日来てくれて、感謝したいですし、家族をはじめ友達の前でいいプレーができて、勝利をプレゼントできてよかったです」と神妙な表情で語ると、初先発に漕ぎつけるまでの4年間という時間について「いろいろな人の支えがありました。また、レベルの高いチームの中で切磋琢磨してやるのが成長になるとも思っていました」と付け加えていた。

 ホームでの第1戦で2点をリードし、失点はゼロに抑える。川崎Fにとっては願ってもない状況であるのは間違いない。このままの勢いで、アウェイでの第2戦も乗り切ってほしいところである。悲願の初タイトルに向け、川崎Fが決勝進出へ大きく前進した。

以上

2009.09.03 Reported by 江藤高志
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