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【J2:第28節 湘南 vs 福岡】レポート:消耗戦は終了間際の逆転劇で福岡に軍配。湘南は初の逆転負け、初のホーム敗戦を喫す。(09.07.20)

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7月19日(日) 2009 J2リーグ戦 第28節
湘南 2 - 3 福岡 (19:04/平塚/9,013人)
得点者:37' アジエル(湘南)、59' 寺川能人(湘南)、84' 岡本英也(福岡)、89' 大久保哲哉(福岡)、89' 大久保哲哉(福岡)
スカパー!再放送 Ch183 7/20(月)18:30〜(解説:菅野将晃、実況:野村明弘、リポーター:児玉美保)
勝敗予想ゲーム
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「凧は風が吹けば勢いを増すが、風が止むと落ちてしまう。ならば俺は鳥になる」とは、どこかで読んだ幕末の志士の言葉だ。転じて、湘南とて風に乗ってふわふわと首位に立っているわけではない。徹底し、やるべきことをやり、自力で高みまで昇ってきた彼らは凧ではなく、鳥である。だが、この日ばかりは途中で気流に身を任せてしまったようだ。ぐるぐると旋回している最中に方角を見誤ってしまったのかもしれない。

事の始まりは84分である。湘南の攻撃を阻んだ直後、福岡が自陣でシンプルに繋ぎ、前線へロングボールを送る。パスの受け手はDFを巧みにかわし、GKとの1対1も冷静に沈めた。これによって福岡が1点差に詰める。

気温28.3度、湿度は70%に及ぶ。じっとしているだけでも汗ばんでくる陽気に、福岡のゴールに向かうスピードも湘南の攻から守への切り替えも残り10分を切ればさすがに鈍い。水が高いところから低いほうへ流れるように、試合のペースも遅いほうに合っていた。ただ、その状況に染まらなかったのは鮮度の高い途中出場の選手である。福岡の劣勢を打破した追撃弾は、宮原裕司と岡本英也という交代選手がもたらしたものだった。

さらに、89分にも福岡に得点シーンが訪れる。自陣で奪うと、左サイドから右へと展開し、城後寿がクロスを入れる。ペナルティエリアで待つ大久保哲哉が、敵の寄せを受けながらもダイレクトでねじ込み、同点とした。

しかし、「怒涛の追い上げ」とは表現しがたい。前半からボールホルダーを追い越す動きを絡めてゴールに迫っていた湘南と比べると、福岡は試合を通してバランスを崩さぬように戦っていたように映る。逆に湘南は、たとえば37分の先制の場面である。後方からビルドアップする際、ジャーンが左サイドの鈴木伸貴に出すや、寺川能人がその鈴木を追い越した。「自分のなかでパスミスが多かったので、とくに前半は走ることを意識した」とはベテランいわく。そして鈴木伸から寺川、ふたたび受けた鈴木伸がクロスを送り、ペナルティエリアに侵入したアジエルがPKを奪った。ファーサイドには中村祐也もフリーで駆けこんでいた。

後半の追加点も然りである。59分、前線で終始時間をつくっていた田原豊からアジエルにパスする間に臼井幸平が右サイドを攻略、突破し、ペナルティエリアに坂本紘司が走る。こぼれ球に反応したのは寺川だ。間合いを計るように落ち着いてコースを狙った。このときもファーサイドには中村と鈴木伸が控えていた。

湘南がポゼッションを高めた背景には、相手のディフェンスもあったろう。福岡はサイドに追いやり挟み込んではくるものの、圧力とは言いがたい。むしろボールに人数がかかっている分、湘南にとっては空く選手が増える。一方、福岡の変化といえばシュートの数である。前半0に対し、後半にはがむしゃらなミドルも含めて8本を放っている。少なくとも、攻めきる姿勢が逆転劇に繋がったことは間違いない。

92分である。残された3分のロスタイムで勝ち越すべく、総攻撃を仕掛ける湘南に対し、福岡は中盤で拾うと、相手の攻めあがったあとのスペースを高橋泰が突いた。湘南の守備陣も必死に戻り、高橋の左クロスに走りこんだ岡本のシュートを一度は阻む。がしかし、ふわりと浮いたこぼれ球にふたたび大久保が詰め、右足を豪快に振り抜いたのだった。

「勝負に勝って試合に負ける」という表現がある。試合後、福岡の選手たちに手放しの笑顔がなかったのは、つまり内容を鑑みてのことだろう。かたや湘南にとっては、勝負に勝ち、試合以上に自分たち自身に負けたというほうが的確かもしれない。だが、甲府に勝ち、C大阪にも勝ったからこそ今節のゲームが大切だということを誰よりも理解し、鼓舞し、この一戦に気持ちを強く臨んでいたのもまた湘南の選手たち自身である。だからこそ悔しさはより募り、より伝わり、またその姿に自分を重ね合わせもする。「サッカーは人生の縮図」と、あるとき反町康治監督が別の文脈で口にした言葉が思い出されてならない。

指揮官が両の眼に力を込める。「下を向かず負に打ち勝ち、『よし、つぎはやってやろう』とならなければいけない」。これまでも敗戦を糧により高く翔んできた。湘南は凧ではない。鳥、しかも志を抱く鳥である。

以上

2009.07.20 Reported by 隈元大吾
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