6月3日（水） 2009 J2リーグ戦 第19節
草津 0 - 0 富山　（19:31／正田スタ／2,232人）
スカパー！再放送 Ch185 6/4（木）22:30〜（解説：都並敏史、実況：梨子田友和、リポーター：円戸由香）
☆勝敗予想ゲーム
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　試合後、会見場に現れた両指揮官の表情は対照的だった。富山・楚輪博監督は、席に着くや軽い冗談を飛ばすなどリラックスした雰囲気で会見に臨んだ。一方、ホーム7戦未勝利の草津・佐野達監督は険しい顔つきでゲームを総括すると、張り詰める空気の中、言葉を選ぶようにして記者陣の質問に答えた。両指揮官の会見の様子は、両チームにとっての勝点1の意味、そして置かれた境遇を顕著に表していた。

　司令塔・上園和明など主力の多くをケガと出場停止で欠いた富山は、草津を倒した第1クール・第5節に先発した11人中6人が入れ替わり、桜井正人、野嶋良のふたりが初先発というスクランブル態勢でゲームに挑む。迎え撃つ草津は、最近2試合で先発し連勝に貢献した崔成勇に代えて、佐田聡太郎を起用。草津は、結果を残した選手を外しただけに勝利が求められた。

　ゲームは序盤から、地力で勝る草津が一方的にポゼッションを支配した。6分には松下裕樹のＦＫがＧＫ中川雄二を強襲、16分には寺田武史のクロスに都倉賢が飛び込みゴールを脅かす。草津はボランチ松下がサイドに抜け出すなどポジションチェンジも繰り返し、富山に揺さぶりをかけていく。

　しかし、30分を過ぎたころから草津の雲行きが怪しくなってくる。パスサッカーに慣れた富山が２枚のブロックを敷いて、攻撃を食い止めるようになる。草津は力技でペナルティエリアまでは攻め込むが、ポゼッション時間と比例しないチャンス数にスタンドから不満の声が上がり始める。

　草津は富山のシステマチックな守備を崩そうとパスを回して突破口を探ったが、足元へのパスが多く、相手の体力を奪うまでには至らない。楚輪監督は、「パスは回されていたが組織は崩れていなかった」と手応えを得て、後半へ向かった。

　後半に入ってもゲームの体勢は変わらない。草津は富山を追い詰めていくが、富山の最終ラインの粘り強い守備に阻まれ、ゴールに迫りながらもフリーでシュートを放つことができない。一方の富山は草津のパスをカットすると、大きく空いたサイドのスペースへとクロスオーバーする朝日大輔にボールを集めてワンチャンスを狙う。75分過ぎからは、第1クール再現の雰囲気も漂い始めた。

　富山にとっての最大の見せ場は79分のシーンだった。草津・寺田へのパスを絶好タイミングでカットすると右サイドの川崎健太郎へ。川崎がアーリー気味に入れたクロスに走り込んだ渡辺誠がゴール前で超決定機を迎える。だがシュートはジャストミートせず、草津は命拾いすることになる。

草津は終盤に、田中淳、高田がチャンスを得るがゴールを捕らえきれず、スコアレスのままタイムアップとなった。「ボールは回せていたが全体的にみれば相手の術中にハマってしまっていた。引いた相手を崩せないのはチームの大きな課題だ」（都倉）。ボール支配率は草津が大きく上回ったが、決定機数に大差はなく、最終的には双方に勝利のチャンスがあったゲームとなった。富山は、限られた駒を有効に使いながら、現実的な戦いで草津を苦しめ、貴重な勝点1を獲得。川崎が残した「苦しかったが勝てたかもしれないゲームだった」というコメントも的を射ていた。

　2連勝でホームへと帰ってきた草津にとっては手痛いドローだ。富山の守備が整備されていたとはいえ、それを言い訳にしていたら先へは進めない。「この内容で勝点1では納得できないし、勝たなければいけなかった」（松下）。何よりも2連勝の勢いを最大限に活かしきれなかったことが悔やまれる。草津はホーム7戦連続で勝利から遠ざかる。チームに大きな勇気を与えていた敷島はいつの間にか、「鬼門」となってしまった。

以上

2009.06.04 Reported by 伊藤寿学