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【J1:第12節 広島 vs 山形】レポート:攻守に走り続けた10番とトランス状態に入った15番。紫の若者たちの躍動が、山形を粉砕した。(09.05.17)

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5月16日(土) 2009 J1リーグ戦 第12節
広島 3 - 1 山形 (16:04/広島ビ/9,479人)
得点者:8' 柏木陽介(広島)、10' 槙野智章(広島)、44' 高萩洋次郎(広島)、67' 秋葉勝(山形)
スカパー!再放送 Ch183 5/18(月)08:00〜(解説:前川和也、実況:寺西裕一、リポーター:掛本智子)
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この試合のマン・オブ・ザ・マッチを一人あげろと言われれば、迷いなく柏木陽介をピックアップする。その見方は、試合後の記者の間でも一致していた。
気迫が違っていた。噛み付かんばかりに襲いかかる「ダッシュ・プレス」は、まさに柏木スペシャル。チーターが獲物を見つけた時のように、鋭敏かつ獰猛だった。ボールを持てば「キュッ、キュッ」と地面をこする音が聞こえてきそうなドリブル。その仕掛けをきっかけにして周囲の連動を誘発するため、山形の守備陣は彼をどう捕まえればいいのか、最初から苦心していた。

8分、広島にとって「僥倖」、山形にとって「悪夢」といえる出来事が起こったが、このシーンの主演・演出もまた、柏木陽介だった。青山敏弘のパスをキム・ビョンスクがカットし、ヘッドで後ろに戻そうとする。だが柏木は、そのプレーを完全に読み切っていた。

サイドバックの宮本卓也やGKの清水健太。周囲にいた山形の選手たちよりも一歩速く、柏木はそのバックパスに反応する。慌てた宮本が柏木に身体を寄せるも、先にボールに触ったのは紫の10番。右足で軽く浮かし、左足で流し込むようにシュートを打てば、ボールは宮本や清水の脇をすりぬけ、ゴールネットに転がっていった。

この日の広島は、攻守の大黒柱=森崎和幸を体調不良で欠き、チーム全体を危機感が覆っていた。しかし、広島にとってポジティブだったのは、その危機感を「焦り」ではなく「気迫」に転換できたこと。その象徴が、ここ2試合不本意なプレーを続けていた柏木陽介だった。

10分、柏木は美しい弾道のFKでユース以来の盟友・槙野智章のゴールをお膳立て。16分には、高萩洋次郎・青山敏弘を経由したボールに反応して決定的なシュートを放つなど、躍動は止まらない。
柏木の活躍は攻撃だけではなかった。「ダッシュプレス」は試合を通してフル稼働し、山形に攻撃を構築させない。最終ラインにまで戻って守備に参加し、そこからまた最前線へ。
走る、走る、また走る。
やはり、柏木は走る姿がもっとも美しい。
走って走って、絡んで絡んで。
心拍数が最高値を記録するであろう状況でもなお、アイディアのあるプレーを繰り出すから、柏木陽介は「広島のダイヤモンド」と呼ばれるのだ。

そしてもう一人、しなやかなプレーで勝負を決める「ファンタジスタ」が、広島にはいる。この試合にあわせ、髪の毛のサイドを刈り込んだ背番号15=高萩洋次郎だ。
柏木ほどではないが、高萩もよく走る。さらに彼の特徴は、90分間を読む目を持っていることだ。ポジションを各所に移動させて何度もボールを触り、「ここは落ち着かせるべき」となれば横パスを繰り返してリズムを整え、「勝負どころ」と見れば相手の弱点を的確につくサイドチェンジやスルーパスを繰り出す。緩急を自在に操れる時の彼は、好調の印だ。

前半ロスタイム、その高萩に突然、トランス状態が訪れた。

「周囲が見えなくなった。自分だけの世界に入り込み、時間が止まった」
その時のことを、高萩は「何て言えばいいのか……」ともどかしそうに言葉を連ねた。時間がストップしている中で、自分だけが動いていた感覚。「右足インステップでこするように」と説明はしたが、そんな既存の表現だけで、このシュートのことを表現して欲しくない。そんな想いが、彼の言葉からあふれていた。

トランスに入ったまま30m近い距離から放たれたシュートは、生きているかのような精気をはらんで、サイドネットに突き刺さり試合を決めた。高萩の中に訪れたこのゴールへの過程は、彼が特別な何かを持っていることを、自分自身に対して証明したものだった。
後半、受け身になった広島のミスに乗じ、山形は意地の1点を返したものの、彼らの反撃もそこまで。ミスから生じたキムの不調や古橋達弥の足への不安感によって、前半から二人もね交代させざるをえなかった小林監督の苦悩は、いかばかりか。

しかし指揮官は、決して下を向かない。「自分も選手も欲張った部分があった」と3連敗を反省し、一方で「後半の闘いができるなら」と収穫も語る。ゴールを決めた秋葉勝も「連敗のイヤな流れを断ち切りたい」と次への意欲を見せた。
山形には、苦しい時にも戻っていける「自分たちのスタイル」がある。その原点に立ち返ってひたむきに闘えば、開幕当初の躍動感にあふれる山形が戻ってくるだろう。幸い、来週からヤマザキナビスコカップが始まる。ずっとリーグ戦ばかりが続くJ2にはないこのカップ戦は、様々なことを試すことができる挑戦の場でもある。この機会に乗じ、しっかりとした修正をほどこして「山形のサッカー」を思い出したい。

以上

2009.05.17 Reported by 中野和也
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