5月16日（土）J1 第12節 川崎Ｆ vs 磐田（15:00KICK OFF/等々力）
スカパー！生中継 Ch308 14:55〜（解説：永井洋一、実況：西岡明彦）
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　痛快だった前節の敵地での逆転勝利の影響は、実は深刻である。

　その浦和戦を前半23分で退いた寺田周平は、今季の川崎Fの公式戦全試合に先発フル出場を続けてきていたまさに中心選手である。最終ラインの要として関塚隆監督の高い信頼を受けていた寺田だが、連戦の影響があったのか、この浦和戦の最中に肉離れを発症。全治3週間のケガと診断されて戦線からの離脱を余儀なくされている。

　また、後半55分にピッチを退いた村上和弘もふくらはぎの肉離れと診断。浦和戦で先発していた最終ラインの4選手のうち、2選手が負傷する緊急事態となった。ケガではないが、ボランチで先発し、最後は足をつらせながらもCBにポジションを下げて浦和の猛攻を食い止めた横山知伸は累積警告で次節出場停止。後半ロスタイムの微妙な判断とそれに基づくプレーに激昂し、2枚目のイエローカードを受けて退場したヴィトールジュニオールも出場停止処分を受けている。

　つまり浦和との激闘の結果、その浦和戦に先発した選手のうち実に4選手が磐田戦を欠場する事となってしまったわけである。また、欠場するほどには状態は悪くはないが、ペナルティエリア内で闘莉王に足を踏まれたジュニーニョも、同点に追いつくPKをもたらした代償として足首を負傷。いまだに患部をアイシングしておりベストなコンディションとはいいがたい状況にある。浦和戦とは無関係ではあるが、手首を骨折した伊藤宏樹や、肉離れを発症している矢島卓郎などのけが人も引き続き治療に当たっており川崎Fのメンバー選考に大きな影響を与えている。敵地での劇的な逆転勝利と引き換えに、主力の大量脱落を余儀なくされた川崎Fはそうしたチーム状態で磐田との対戦を迎える事となった。

　この試合に限らないのだが、特に今季の川崎Fの戦いぶりから試合を分けるポイントとなりそうなのが先制点である。今季の川崎Fは、ここまで13失点と決して失点が多いわけではない。しかし、なぜだか先制点を奪われる傾向が続いてしまっている。たとえばここまでのところ国内リーグで10試合を消化しているが、そのうちの実に7試合で先制点を奪われている。ちなみにアウェイで行われた天津戦も含めると、ここ3試合連続で先制点を取られており、だからこそ守備陣は「そこを耐えてリズムを作りたいと思います」（井川祐輔）と意気込んでいる。守備を安定させたい川崎Fだが、前述の通り最終ラインを組み替えざるを得ないという状態にある。そうした中で、どれだけ集中したディフェンスができるのか、注目したいところである。守備さえ安定できれば、Jでも屈指のレベルにある川崎Fの攻撃陣の破壊力がその力を見せ付ける可能性は少なくない。

　今季初の連勝をもくろむ川崎Fにとって守備の安定の意味は大きいが、そこに立ちはだかるのが磐田のイ・グノであろう。スカウティングビデオを見た選手たちは、イ・グノの実力を一様に評価。関塚監督も「トップスピードから止まる時にバランスを崩さない。そこの緩急がすばらしい。それだけ体にパワーがあるという事だと思います」とパワフル、かつ繊細なイ・グノのプレーに対して警戒感をあらわにしていた。

　磐田を変えたイ・グノに注目が集まるのは当然なのだが、中村憲剛はイ・グノだけを警戒する事に対して警鐘を鳴らしていた。「イ・グノにあまりにも注目が集まっていますが、（前田）遼一もいい。遼一とジウシーニョと西のところもすごい」とイ・グノを含めた前線の4選手のポテンシャルの高さを警戒していた。ここに最終ラインから押し上げてくる駒野友一のオーバーラップにも注意が必要だろう。

　先日の浦和戦後に、勝点が5点足りないと発言した関塚監督にとって、上位進出のためにはこの試合はどうしても落とせない試合。また、勝点15で並ぶ磐田を相手に、川崎Fは今季リーグ戦初の連勝をかけて臨む事となる。劇的だった浦和戦の勢いをこの磐田戦にぶつけ、ぜひとも勝利したいという一戦である。

以上


2009.05.15 Reported by 江藤高志