5月2日（土）J2 第12節 栃木 vs 富山（13:00KICK OFF/栃木グ）
スカパー！生中継 Ch181 12:50〜（解説：松原良香、実況：篠田和之、リポーター：新井謙一郎）
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　昨季Ｊ２参入を果たすべく、しのぎを削った栃木ＳＣとカターレ富山。舞台をＪＦＬからＪ２へと移し、初めての顔合わせとなる。

　ただ単に「Ｊ２新入生対決、第２ラウンド」とくくるだけでは味気ないので、「初の連勝を懸けた火花飛び散る戦い」と銘打ちたかったのだが、栃木が躓いたことで「連勝を懸けた」の部分は持ち越しとなった。ただし、激戦になることは、栃木が新監督を迎えて積極的な補強を敢行し、富山が昨季の戦力を維持したままと、対照的なスタンスで今季に臨んだとしても必至だろう。栃木と統合する以前の富山、つまりＹＫＫ　ＡＰとアローズ北陸の間には、これまで何度も対戦してきた歴史の重みがあるからだ。互いに譲れない一戦となることは間違いない。

　「得点力の欠如」という言葉に縛られていた時期が懐かしい。栃木はここ２試合で５点も叩き出し、しかも河原和寿が火を付けたことで稲葉久人に松田正俊とＦＷ陣がゴールを奪っている。好機を確実にものにしており、ゴールを取り切る作業への自信は深まった。しかし、課題がひとつ解消されれば、また新たな課題が突き付けられるのが世の常で、３点取れば３点取られ、２点奪えば２点奪われと、２戦続けて先行しながら逃げ切りに失敗。連続ドローで勝点を４も失い、「堅守・栃木」の看板は外れつつある。

　「足踏み」。米山篤志が前節のサガン鳥栖戦後に発したコメントが、どうしても勝ち切れない現状を的確に言い表している。経験豊富な選手が揃うものの、一方でチームとしては「経験が浅く」、勝ち慣れていないことから結果が出ない。だが、いつまでも「若い」を言い訳にはできない。そろそろ終盤に浮足立つことなく、しっかり勝ち切る形を構築しなければならない。例えば２‐１の状況で１点を死守するのか、それとも３点目を取りに行くのか。その場に応じたゲームマネジメント力を身につける必要がある。選手間の意思統一がなされなければ、勝点１を３にすることは難しいだろう。

　戦力補強を行わないことで苦戦が予想された富山だが、現時点でＪ２新入生の中では最上位の１１位と大健闘。危惧された既存戦力を中心に戦うことが「継続性」に繋がり、最大の武器になっている。チームコンセプト通り、「融和」から「調和」が図れている印象。昨季に引き続きＤＦリーダー濱野勇気が束ねる守備陣は堅固で、その濱野が先制点を決めた前節のＦＣ岐阜戦では上園和明と朝日大輔の両サイドハーフが加点し、今季初の３ゴールで完勝した。

　結果以上に注目すべきなのが、次のゴールを目指して攻撃的な姿勢を貫き通せたこと。２‐０の状況に満足せず、３点目を奪い去り、さらに攻め立てることができたのは、共通理解が図れており、楚輪博監督の考えを選手が汲んだ証拠。時間を掛けて培ってきたチーム力は脅威だ。零封、大量得点と連勝を狙える条件は整っている。

　中２日のハードスケジュールということで、コンディションが雌雄を決する一因となる可能性が高い。どれだけ状態のいい選手をピッチに送り出せるかに加えて、途中から出場する選手の重要性も普段より高くなる。その点で興味深いのは前節、栃木も富山も交代選手が結果を残していることだろう。栃木は栗原圭介と松田、富山は木本敬介と朝日のコンビでゴールを割っている。総力戦で両指揮官がどのように３枚のカードを切るのか。采配にも注視したい。そして、どちらが勝利に対して貪欲になれるか。メンタル面も大きく勝敗を左右するだろう。「連戦では気持ちを２割増にすることで通常のプレーができる。もっと勢いを出したいなら５割増の気持ちでプレーしなければならない」と米山。疲労を吹っ飛ばすような気持ちの強さを見せた方が試合を制する。

以上

2009.05.01 Reported by 大塚秀毅