4月25日（土） 2009 J2リーグ戦 第10節
草津 0 - 2 東京Ｖ　（16:04／正田スタ／2,012人）
得点者：4' レアンドロ（東京Ｖ）、9' 大黒将志（東京Ｖ）
スカパー！再放送 Ch181 4/26（日）19:00〜（解説：佐藤正美、実況：山田浩史、リポーター：円戸由香）
☆顔写真クイズ｜勝敗予想ゲーム
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この試合を面白いと感じた草津サポーターがどれだけ存在しただろうか。豪雨の中、スタジアムへ駆けつけたサポーターに、チームは何を届けることができたのか。草津にとって、ルーキー佐藤穣が鮮烈なデビューを飾ったということ以外に観るべき点は乏しかった。試合後、草津スタンドからは今季ホーム戦で初めてのブーイングが起こった。

東京Ｖの作戦勝ちだ。東京Ｖは序盤から草津の弱点であるロングボールを多用してきた。草津の最終ラインは、開始直後から大黒将志、林陵平のポストプレーを止められずに混乱に陥る。そして迎えた４分、ペナルティエリアで大黒を背負いながらボールを追っていた藤井大輔が、濡れたピッチに足を取られてスリップ。ボールを奪った大黒が、ゴール前でフリーになっていたレアンドロへラストパスを送り、東京Ｖがあっさりと先制に成功する。

「偶然ではなく、ザスパ対策が実を結んでゴールを奪うことができた」（高木監督）。東京ＶはロングボールでＤＦラインに揺さぶりをかけ、守備では草津のポイントである両ボランチの起点を潰した。草津は、弱点を突いてくる相手に対して、いかに対応するかが曖昧で、東京Ｖの策にいとも簡単にハマってしまう。同じ戦法で敗れた過去の反省が活かせない草津は、リズムがつかめずに９分にもＣＫから大黒に決められて失点。開始わずかで２点のビハインドを背負い窮地へと追い込まれる。草津としては不運な部分もあったが、運だけでは片付けられない要素が点在していた。

東京Ｖは草津対策に加えて、タフな戦いを展開した。足先のプレーに終始する草津に対して、きっちりと体をぶつけて対応。起点を次々と潰して前線へとボールを送り、ＦＷのポストプレーに対して２列目が反応する。山崎渡は「点を取りに行かなければいけないのに、セカンドボールが拾えず完全にゲームを支配された」と前半を振り返った。

前半は東京Ｖがポゼッションを支配したのに対して、後半は２点を追う草津がボールを保持する。だが、東京Ｖは草津に自由を許さずに決定機を与えない。「これまでは守備が甘い部分もあったが、今日はチーム全体で厳しく守ることができていた」（土肥洋一）。草津は後藤涼らがゴールへと迫るが、最後は東京Ｖの守備陣にブロックされた。草津は後半に放ったシュートは11本だが、ゴールを本当に脅かしたシーンは少なかった。

手詰まりとなった草津の攻撃にアクセントをつけたのは、62分からピッチに立ちＪデビューを果たした前橋育英出身のＭＦ佐藤穣だ。チーム屈指のテクニックを持つ脅威のルーキーはファーストドリブルでＤＦ３人の間を抜けると、巧みなボールタッチと抜群のバランス感覚を駆使し次々とアタックを仕掛け、チャンスを創り出していく。「流れを変えるつもりでプレーした」という佐藤穣のプレーはゴールには届かなかったものの、大いなる可能性を感じさせた。

プラン通りに勝利を収めた東京Ｖだが、印象に残ったプレーがあった。37分、草津・後藤がカウンターでゴールに迫ったとき、前線から戻り猛然とタックルを仕掛けたレアンドロのプレーだ。この日の東京Ｖは、レアンドロの姿勢に表されるように、チーム全体の守備に気迫がみなぎっていた。高木監督は「ケガ人も戻ってくるしプラス材料が多い」と話したが、今ゲームが浮上のきっかけになるかもしれない。

良いところなく敗れた草津は、前節で６試合ぶりの勝利を挙げたものの再び黒星を喫した。開幕３連勝後の最近７試合は１勝１分５敗で内容的にも芳しくないゲームが続く。この状態で、次節からの徳島、仙台、鳥栖、Ｃ大阪、湘南との連戦を勝ち抜くことは難しいと言わざるを得ない。積み重ねは大事だが、土台がしっかりとしていなければ建築は成り立たない。この日のような内容の試合を続けていたら、サポーターの心は離れていく。スタンドから起こったブーイングは、先が見えないチームへの警鐘だ。

以上

2009.04.26 Reported by 伊藤寿学