4月15日（水） 2009 J2リーグ戦 第8節
栃木 0 - 0 徳島　（19:03／西が丘／1,896人）
スカパー！再放送 Ch185 4/16（木）14:30〜（解説：水沼貴史、実況：飯島誠、リポーター：新井謙一郎）
☆顔写真クイズ｜勝敗予想ゲーム
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後半４３分、波状攻撃から栃木ＳＣは絶好機を迎える。ボールの落下点が読めていた、という途中交代の稲葉久人が嗅覚を働かせ、鴨志田誉の右クロスに頭から飛び込む。豪快なダイビングヘッドは枠を捕らえるも、ＧＫ上野秀章の俊敏な反応に阻まれた。わずかな出場時間ながら好機が巡ってくると信じていた稲葉。まさにその通りの展開となったが、決めきれなかった。

メッセージが込められていた。メンバー表を見ると、ＦＷの位置に本来はＭＦの入江利和の名前が記されていた。栃木は前線に松田正俊、河原和寿、入江を並べ、４―４―２から今季初の４―３―３の布陣を採った。松田浩監督は「メンバー表はあてにしてほしくない」と言うものの、「チーム全体を前に出すことになるなら、それもいいかなと思って、そう書いた」と、攻撃的に挑むことを暗に選手に伝えた。
指揮官の思いを汲んだ栃木の選手は、序盤から果敢に仕掛け、イニシアチブを握る。３分に松田のポストプレーから本橋卓巳、５分にＰボックス内で河原が際どいシュートを放つ。その後も、「相手は２列目から飛び出すとマークの受け渡しができていない」と読んだ鴨志田、本橋、栗原圭介が後方から追い越し、徳島ヴォルティスを翻弄した。ただし、ラストパスの精度に欠けるなど、相手に冷や汗をかかせたのは米山篤志の直接ＦＫくらい。圧倒的に試合を支配した割りには、決定機を作り出すまでには至らなかった。
劣勢の徳島は好調の徳重隆明がフリーで、羽地登志晃がセカンドボールからシュートを打つもＧＫ正面を突き、大半の時間を守備に費やさなければならないほど栃木の勢いに飲み込まれた。

先に動いたのは美濃部直彦監督。後半の頭に麦田和志に替えて、筑城和人を送り出し、水漏れ個所だった右サイドの修正を図る。守備が整備され、迎えた６分。ＦＫから羽地がゴールを割った、かに思えたが判定はオフサイド。ゴールは手にできなかったものの、「もっと走ろう、もっと動こう、セカンドボールをもっと狙っていこう」（美濃部監督）とアグレッシブになれたことで、流れを掴んだ。やや攻め疲れの見え始めた栃木に対し、ピッチを広く使って揺さぶりをかける。足の鈍った栃木は後手を踏み、３９分に決定的なシュートを２本も浴びる。しかし、ここはＧＫ小針清允が立ちはだかり、辛うじて危機を脱した。受けに回りながらも時折カウンターを繰り出し、なんとか流れを引き戻して冒頭に述べた稲葉がゴールを狙うも、歓喜の瞬間は訪れなかった。

栃木は遠く愛媛から持ち帰ってきた勝点１を、徳島はホームで同点に追い付いて得た勝点１を、互いに価値あるものとするために勝利が欲しかったが、結果はスコアレスドローに終わった。

「今日の試合内容から言えば、勝点１で仕方ないのかな」と振り返った美濃部監督。見せ場のなかった前半から一転、後半は自分達の時間帯に持ち込むなど盛り返せたが、システムを変更した栃木にかき回された印象は強い。前節、ビハインドを帳消しにし、逆転こそならなかったが、試合終盤に好感触を残した。その勢いを持続できなかったことは、今後の反省材料となるだろう。

一方の栃木は、どうしたって、ゴールをこじ開けられなかったことがクローズアップされる。栗原は最後の部分の精度、判断力、冷静さを養う必要があると言う一方で、「点が取れないから、点を取りに行って負けるパンターンもある中で、ＤＦ陣がゼロに抑えられたことは素晴らしいと思う」とも言う。チーム立ち上げから守備に神経と時間を割いてきた。その成果が、今、３試合連続無失点という形になって表れている。「これが、３、４失点していると攻撃の話にならない」（栗原）。守備力が際立つからこそ、攻撃力に物足りなさを感じ、議論の対象となるのだろう。

またしても、生みの苦しみを味わう時期に突入してしまった。だが、勝点は着実に積み上がっているし、好機がないわけでもない。試合内容に結果が追い付いたように、決定機の数に少し遅れているゴールも追い付いてくるはずである。勝点３までの距離は、それほど遠くない。

以上


2009.04.16 Reported by 大塚秀毅