3月29日(日) 2009 J2リーグ戦 第5節
東京V 1 - 0 栃木 (16:03/国立/4,404人)
得点者:89' 大黒将志(東京V)
スカパー!再放送 Ch183 3/30(月)15:00〜(解説:野々村芳和、実況:中村義昭、リポーター:大竹奈美)
☆顔写真クイズ|勝敗予想ゲーム
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異様な光景だった。
敗れた栃木は、大きな拍手と栃木コールでサポーターから温かく迎えられた。
一方、勝ったはずの東京Vに送られたのは大ブーイング。
この場面だけを見れば栃木が勝利したと思ってもおかしくはないが、結果は間違いなく1−0で東京Vが勝者である。しかし、内容は皮肉ともいえるこのシーンが全てを物語っていた。
高木琢也監督が試合後の会見で「栃木の方が自分たちのやりたいことをやっていた」と語った言葉どおりだろう。
東京Vは、この試合での意図を「河野(広貴)が中でプレーすることで、相手が少し中央に寄ってサイドが空くというイメージできていた」(高木琢也監督)とし、河野をこれまでの右サイドではなくトップ下で起用した。
しかし、狙い通りの展開にはなかなかならずボールを蹴るだけの時間帯が続く。前半30分過ぎに、高木監督は早くも右サイドの飯尾一慶を呼び、河野とのポジションチェンジを指示した。すると、徐々にボールが回り始めMF河村崇大に3度の決定的シーンが巡ってきたが、いずれもネットを揺らすには至らず、前半を終えた。
後半は、16本のシュートを浴びなるなど再三押し込まれる展開となった。それでも、GK土肥洋一の好セーブの連発、全員が守備にまわって耐えに耐え抜いた。
そして、決勝点となるPKが生まれたのは第3節富山戦と同じ、またしても試合終了間際のロスタイムだった。途中から入った永里源気が右サイドをドリブルで一気に駆け上がりエリア内に進入。ファウルを誘ってチームに勝利をもたらした。PKを決めた大黒将志も「PKが入ったから勝ったんやない。みんなが体を張って耐え抜いたからこそ訪れたPK」と、チームメイトを讃えた。
とはいえ、勝利したにもかかわらずサポーターがブーイングで怒りを表したのは、例えばパスミスの多さやセカンドボールのほとんどを相手に拾われるなど、勝つために必要な基本的な部分で栃木を上回ることができなかったからではないだろうか。
そういう意味では、栃木の方が非常に痛い敗戦だったといえるのかもしれない。
松田浩監督が「より攻撃的な布陣に」と、通常の左サイドバックから1列上げた入江利和の起用は的中した。
「僕が前に行くことで、縦に前に行くパワーを求められていたと思う」と、入江はボールを受けると迷うことなく攻め上がった。特に後半、「ウチには入江という信じられないぐらい走る選手がいる。とにかく走らせて攻めたら相手のDFも戸惑ってくれた」と、ボランチの本橋卓巳から左サイド入江に展開という形は徹底されており、そこから何度も何度も決定的シーンを作った。
また、「大黒選手が裏のスペースを使ってくるので、DFがマークに着くこと。両サイドが非常に積極的に仕掛けてくるので、とにかくそこを止めてセカンドボールを絶対に拾うことがこの試合のテーマだった」(MF鴨志田誉)というゲームプラン通りに試合は運んだことを考えると、どうしてもあの1プレーが悔やまれてならないだろう。
それでも、PKを招いてしまったことは自分たちのミスだと、松田監督はじめ選手たちも皆受け止めている。また、「結局は勝てなかったということが一番大事なこと。点が取れなかったということが敗因」(松田監督)ということもチーム全員が理解している。
栃木は未だ勝点0、得点0の状態が続いているが、決して下を向く必要はないだろう。
「この試合を続けられたら、必ず結果は出る」本橋が話したのと同じように、栃木の選手たちはみな、次節・地元栃木での初勝利・初得点を誓っていた。
内容を考えると、0−0の引き分けに終わってもツキがあったと受け止めておかしくない東京Vだが、どのような形であれ結果として勝点3をもぎとったことだけは、評価されるべきだろう。昨年、勝点「1」がためにJ2降格を味わっていることを思い返せば、土肥の「似た内容ながら、前節が勝点『0』だったところを、今日は『3』をとれたということだけでも前進した証拠」という言葉は真をついているのではないだろうか。
サポーター、監督、選手それぞれの立場によって言い分はあるだろうが、「良い内容で勝ちたい」というのは誰もが同じ思いである。
勝つためにはサポーターの応援が必要だということを、選手たちも十分理解している。「応援してもらえるように頑張りたい」(大黒)この勝点3を意義あるものにするためにも、努力を続けて前に進むしかない。
以上
2009.03.30 Reported by 上岡真里江
J’s GOALニュース
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