3月25日（水）J2 第4節 札幌 vs 湘南（19:00KICK OFF/札幌）
スカパー！生中継 Ch180 18:50〜（解説：木島敦、実況：永井公彦、リポーター：藤井孝太郎、プレーヤー解説：大森健作）
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ここまで３節を終えたＪ２リーグ。今季初の平日開催となるこの第４節では札幌と湘南の対戦が札幌ドームで行なわれる。

ホームの札幌はここまで１勝２敗で、湘南は３勝。つまり湘南は札幌の３倍の勝点を得ているということだ。しかし、まだ３節を終えただけの段階では勝点の部分ばかりを重く見ることはできない。全５１試合という長丁場のリーグ戦である。ハッキリ言ってしまえば現時点での順位は大した意味を持たない。最終的に上位に着けるためには、この時期にチームが完成し過ぎてしまっていては後に必ず手詰まりになるだろうから、現時点ではチームとしてのポテンシャルとクオリティを高めることにプライオリティを置くのが妥当なマネジメントだろう。もちろん、どんな時期でも勝点が多いに越したことはないし、最後の最後で明暗を分けるのが１つの勝点だったりもする。だが、そんなことは当事者である監督、スタッフ、選手たちは百も承知である。それでもやはり、現段階ではポテンシャルとクオリティを合理的に高めていくことが重要な作業となるはずだ。

その意味では今季から新しい監督を迎えたこの２チームの対戦というのは興味深い。札幌の石崎信弘監督も、湘南の反町康治監督も過去にＪ１昇格を果たした経験を持っており、Ｊ２での戦い方を熟知している。そうした指導者が新たに赴いたクラブでどういった視野でチーム作りを行なっていくのか、その一端が見て取れるかもしれない。

ホームの札幌は現時点では黒星がひとつ先行しているものの、石崎監督が身上とするアグレッシブなプレッシングサッカーの質を、試合を重ねながら高めている最中だ。相手ボール保持者からの縦へのパスコースを消しながら複数人で囲い込んでボールを奪い、そこからの素早い攻守の切り替えから相手ゴールに迫るという、あらゆるプレーが密接に連動したスタイルだ。もちろん、良い守備ができなければ良い攻撃にもつながらないという難しさもあるのだが、開幕戦からそのスタイルはある程度の輪郭を示している。札幌市内の気候が安定せず、なかなか予定通りのトレーニングをこなせていないという厳しさはあるが、組織が成熟すればするほど結果にもつながるだろうから、今後の伸びシロには大きな注目が集まる。開幕からの３戦は前年と監督が代わらず継続したチーム作りを行なっている相手との対戦だったことも考えれば、１勝２敗という結果も時期を考えれば妥当なものと言っていいのかもしれない。「目指しているサッカーを、まだまだ自分達のものにできていない」と石崎監督。試合を経るごとに連動性さらにはチーム力も高まっていきそうな気配だ。

一方の湘南は、ナショナルチームの監督経験も持つ反町監督がダイナミックなアタッキングサッカーに現実的なマネジメントを加えて、勝点を積みながらチーム力を高めている。阿部吉朗、田原豊、アジエルという個の力を持った３人のＦＷを前線に配置する攻撃的な姿勢を見せながら、アンカーのポジションには守備の強い田村雄三を、最終ラインの中央にはジャーン、村松という安定した能力を持ったストッパーを配置して攻守のバランスを保っている。攻守のプレースタイルの大枠を決め、リスクを避けて勝点を拾いながら戦術のディティールを煮詰めていく。そうした手法がここまでの３試合で上手く進んでいると見ていい。

ハードプレスとアタッキングサッカーとの対峙、この試合はそうした表現ができるだろう。もちろんハードプレスが札幌で、アタッキングサッカーが湘南である。湘南はボールを奪うと前線のターゲットへダイレクトにボールを当てて起点を作るスタイルだが、札幌としては組織的なプレスでこの一連のプレーにブレーキをかけたいところだ。ここでの寄せが弱く、湘南に簡単に起点を作らせてしまうと間違いなく札幌はラインを下げさせられてしまうし、展開としても厳しくなる。逆に湘南も素早く前に起点を作れなければ、４−２−３−１のシステムで戦う札幌に中盤での数的優位を上手く利用されてしまうだろうから、ボールを奪ってからのプレー精度が生命線になりそうだ。

札幌の組織的なプレスが湘南を苦しめるのか、それともスピーディなボール運びで湘南が札幌を押し込むのか。そのせめぎ合いに注目したい。

以上

2009.03.23 Reported by 斉藤宏則