3月22日（日） 2009 J2リーグ戦 第3節
草津 3 - 2 横浜FC　（16:05／正田スタ／7,297人）
得点者：44' 田中淳（草津）、44' 小池純輝（草津）、52' 戸川健太（横浜FC）、57' 都倉賢（草津）、87' 早川知伸（横浜FC）
スカパー！再放送 Ch183 3/23（月）23:00〜（解説：遠藤雅大、実況：山田浩史、リポーター：円戸由香）
☆顔写真クイズ｜勝敗予想ゲーム
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草津が猛然と繰り出す豪快なパンチが、次々と横浜FCの顔面を捕える。これが開幕２連勝と、２連敗チームの勢いの差なのだろうか。前半終了間際に２度のダウンを喫した横浜FCは決死の反撃を見せたが、受けたダメージは大きかった。ノーガードの撃ち合いで計３回のダウンを奪った草津が横浜FCをノックアウト。勢いに乗る草津が怒涛の３ゴールで、粘る相手をねじ伏せた。

戦いのゴングは、草津の先制点だった。ゲーム序盤、ピッチの幅を使って攻撃を仕掛ける横浜FCに対して後手に回った草津は、難波宏明のポストプレーを抑え込むことができずにジャブを浴びる。「横浜FCが徹底して難波にボールを集めてきて、セカンドボールの落ちどころがつかめなかった」と櫻田和樹。横浜FCは難波を起点に、左右ＳＢが攻撃参加を繰り返し、草津をロープ際まで追い詰めていく。

横浜FC優位の展開を一変させたのは、セットプレーだった。前半44分に右ＣＫを得た草津は、キッカー廣山望がペナルティエリア内の熊林親吾へショート気味にボールを送る。作戦では、廣山に返すトリックプレーのはずだったが、相手の動きをみた熊林が咄嗟の判断で応用を利かせた。「ＤＦが食いついてきたので勝手な判断でターンした」（熊林）。ペナ内で相手を振り切った熊林はニアサイドへラストパス。それを田中淳が右足で確実に決めて、ゴールネットを揺らす。２戦連続弾の田中は「ニアが空いていたので走り込んだ。それまでやられっ放しだったので、セットプレーから１点が取れたことは大きかった」と話す。熊林の技術と田中の機転が呼び込んだ貴重な先制点だった。

気落ちした横浜FCに対して草津はラッシュを仕掛けていく。直後の前半ロスタイム、ＣＫのこぼれ球を拾った左ＳＢ小池純輝が内へ切り込んで右足を振り抜く。「思い切り打っていった」（小池純輝）。恐れ知らずの若武者がミドルレンジから放ったシュートはゴールへと一直線に突き刺さる。小池のＪ初ゴールで２点差とした草津は、試合の主導権を奪い取ることに成功する。

だが、横浜FCもあきらめなかった。後半開始直後の52分、須藤右介のＦＫに戸川健太がヘッドで合わせて、追撃態勢を取ると再び気合を入れてくる。その流れを断ち切ったのは、大型ＦＷ都倉賢だった。カウンターからパスを受けた次の瞬間、自慢の左足が火を噴いた。ＣＢと対峙しながらも強引に放ったシュートは、ＧＫ岩丸史也の腕の先を抜けてゴールマウスへと転がり込む。打点の高いヘッドが武器である都倉の今季２点目（通算５点目）は、足で決めた自身初得点だった。都倉は「ヘッドだけではなく足にも自信がある。日ごろの練習が形になって嬉しい」と胸を張った。

再び２点差とされた横浜FCはリスクを背負って攻撃に出るが、87分に三浦淳宏のＦＫから１点を返すのが精一杯。前半に失点するまでの内容は草津を圧倒していたが、勝負所で耐え切れず開幕３連敗となった。「取られてはいけない時間帯に得点を奪われた。前半の２失点で完全にプランが崩れてしまった」（三浦淳）。横浜FCの今季初勝利は次節ホーム富山戦へと持ち越された。

豪快なサッカーで３ゴールを奪ってみせた草津は、セットプレーで着実に得点を決める繊細さと、アグレッシブにゴールを狙う荒削りな一面を持ち合わせる。熊林は「51分の３が終わっただけ。勝っても課題は多いし、いま上位陣と戦ったら痛い目に合う」と引き締めるが、３連勝はチームの絶対的な自信となる。藤井大輔のケガで出番が巡ってきた主将・喜多靖が気迫の守備で結果を導き出したこともチームにとって好材料だ。また、今ゲームで、ＦＷ都倉、ＤＦ田中、小池がゴールを決めたことは、指揮官が掲げるトータルフットボールが浸透してきた証だ。

荒くれ者たちが集う草津のサッカーは大きな可能性を秘めている。開幕熊本戦で生まれた小さな波は今、大きなうねりとなってＪ２勢力図を変えようとしている。その原動力は、努力という名のバンデージが巻かれた「拳」だ。

以上

2009.03.23 Reported by 伊藤寿学