★Jユースカップ2008特集 | 試合日程・結果 | 出場チーム紹介 | Pick Up Player
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競技的な側面から大会を一言で総括するなら、「とにかく点の入る大会だった」というところだろうか。
チーム力の差も大きい2回戦までを除外して準々決勝以降の7試合に限定しても、計34点。準々決勝以降「平均4.86得点」というサッカー的には有り得ない数字になってしまった。準々決勝以降で、どちらかのチームが0点だったゲームは、わずかに1試合である。
優勝した2クラブはとりわけ傑出した得点力を見せて勝ち上がってきた。大塚翔平(G大阪トップ昇格)とブルーノカスタニェイラ(新潟加入内定)という来季からJへ挑戦する二人の個人能力を前面に押し出したガンバ大阪ユースは守備が盤石だったとは言い難く、まさに「攻め切って」優勝したと言えるだろう。その点、トップチームの血を確かに継いでいる。
同じくセレッソ大阪U-18も守って勝ったと言えるのは、柏レイソルU-18と戦った準々決勝くらいで、後はいずれも攻め勝ち。とりわけ、FC東京U-18をFW永井龍の個性を生かして攻め崩した準決勝は印象深い。
ただ、そうした攻撃面が際立つ一方で、気になる点があったのも指摘しておかなければいかないだろう。最近、指導の現場で「ボール扱いのうまいDFは増えたが、1対1に強いDFが減ってしまった」といった言葉がとみに聞かれるが、それを今大会に当てはめるのはそう強引なことでもないだろう。ゾーンの意識が強すぎるのか、各チーム共に簡単にマークを外されるDFが目立った。これは決勝に残った両クラブも例外ではない。
DFのレベルアップは、転じてFWのレベルアップにもつながっていく。1対1に強い優秀なストッパーの養成について、もう一度より下の年代から検証し直していく必要があるのではないだろうか。
ただ、J's GOALという媒体の意義を考えるなら、ここで競技的な側面に踏み込んでいくのは的外れだと思っている。むしろここでは、文化的な側面からJユースカップを見ていくべきだろう。
自分はこの大会を見始めて十余年になる。それだけに、大会を取り巻く空気が変化していっていることを改めて実感している。
率直に言ってしまえば、かつてこの大会が格の低いタイトルだったことは否めない。夏のクラブユース選手権や秋の高円宮杯で引退したり、トップに合流してしまう3年生も多かった。ユースの3大タイトルと謳われつつも、他の2大会のほうがレベル的に格上だった。そもそも「ユース」というカテゴリーの地位自体が低かったという側面もある。華やかに盛り上がる高校サッカー選手権、同時期の同年代によって争われる別大会を羨む選手もいたという。もちろん、今でも肩を並べるとまでは行かないが、それでも大会へのモチベーションが揺らぐようなことはなくなったと思う。
今年の決勝は史上最多の観衆を記録したそうだが、かつては根本的に「ユースを見に行く」という発想を持つサポーターがほとんどいなかった。会場で見るのは、いつも選手の親類縁者と一部の物好きのみ。そんな当たり前の光景がこの10年で確実に変わってきた。観衆だけでなく、取材に来る記者の絶対数も増えている。
その分、ピッチに厳しい視線を向ける人も増えているのだが、それもまた、ともすれば“ぬるま湯”になりがちだったユースチームの環境に新しい刺激を与えていると思う。よくサポーターの応援が選手のモチベーションを高めるという効果を聞くし、実際にその通りだと思うのだが、指導者のモチベーションにもつながっていると感じる。
「こういう空気を知れるのは大きい」と語ったのはC大阪U-18の副島博志監督だが、プロ選手の養成という観点に立っても、応援される心強さ、野次を飛ばされるキツさ、そうした諸々を若い内から体験できる意義は小さくない。
ただ、自分はJユースの意義はプロを養成すること「だけ」に特化しているべきだとは思っていない。むしろ、プロになれなかったJユースのOBが「サポーター」にほとんどなっていない現状に不満がある。3年、長い選手は10年にわたってクラブに所属しながら、「クラブ愛」が育てられていないという現実。自分が所属している「エル・ゴラッソ」でも某JユースのOBが記者として働いているが、彼もまた昔自分がいたクラブをサポートするマインドは持っていないという。
トップへ上がれなかったというのは、プロを夢見てきた選手にとって大きな挫折だ。夢破れた場所に愛情を持てというのは無理な相談なのかもしれない。そうも思っていたのだが、こうしてサポーターがユースを見に行く文化が醸成されることで、その流れも変わっていくかもしれない。
「応援される喜び」を知った選手の中から、「応援する喜び」を持つ選手が出てくること。Jユースカップのスタンドで元Jユースの選手が声援を送るようになったときこそ、この大会が新しい文化を創ったと本当に言えるときなのだと思っている。
以上
2008.12.29 Reported by 川端暁彦(エル・ゴラッソ)
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