12月27日(土) Jユースカップ2008 決勝
C大阪 2 - 4 G大阪 (13:30/長居/6,030人)
得点者:32' 山口 螢(C大阪)、49' 永井 龍(C大阪)、51' 大塚 翔平(G大阪)、52' 田中 裕人(G大阪)、72' 大森 晃太郎(G大阪)、77' 宇佐美 貴史(G大阪)
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立ち上がりはC大阪の前線からのプレスがG大阪にリズムを作らせなかった。山口螢は「G大阪は少し受身になったと思う」と感じていた。しかし、G大阪は中盤が作れなければロングボールで、裏に抜けてキープ出来るFWを活かして対抗することが出来た。そして主戦場であるホットゾーンはC大阪の左サイド、G大阪の右サイドに移っていく。C大阪は左サイドハーフの丸橋祐介の精度の高い左足と積極的に前に出て行くボランチの山口、FW・中東優治がその主役。対抗するG大阪は少々ボールコントロールをミスしても前に進むブルドーザードリブルの神門拓弥が攻守に渡って泥臭く立ち塞がった。
大塚翔平、ブルーノカスタニェイラのツートップのコンビネーションで、主導権がG大阪に移っていく中、31分に中盤からタイミングよく顔を出す田中裕人のシュートがポストに嫌われる。「ピンチのあとにチャンスあり」とはよく言ったもので、直後にC大阪は左サイドで山口がオフサイドの一歩手前でパスを受ける。G大阪のディフェンダーは完全に山口を見落としていた。「オフサイドかと思った」という山口は一瞬ラインズマンを見てスピードを緩める甘さを見せたが、すぐにドリブルでゴール前に切り込み、先制ゴールを挙げた。ボールを捌くだけではなく捌いた後にゴール前に出て行く、目標とする香川真司のようなプレースタイルは素晴らしかった。
前半の31分にFWに入ったスーパーサブ・永井龍は後半もホットゾーンであるG大阪の右サイドを苦しめた。F東京の右サイドも苦しめられたが、1年生の山田幹也を後半から投入して神門と共に右サイドをケアするが完璧には抑えきることが出来ない。しかし、最後の最後では守りきっていた。それでも、C大阪を代表する個の一人である永井は49分に中央から追加点を決める。しかし、このゴールが試合の流れを変えるきっかけになってしまったのは皮肉だし、サッカーの怖さでもある。
「2−0になってイケると思ってしまった。この甘さがG大阪の諦めない気持ちに力を与えてしまった」と試合後に永井は振り返った。そこを突いたのは決勝戦まで納得が行くプレーが出来ていなかった宇佐美貴史。この日はそれまでの3割り増しの運動量だった宇佐美の動きがPKに繋がった。このPK(51分)を大塚が決めると、G大阪のスイッチが入ったのか1分後には山田のクロスを田中がヘディングで決めてゲームは振り出しに戻る。同点になってからはC大阪も永井と中東のコンビで決定機を作るが、シーソーのバランスを崩したのはG大阪。お互いに中盤と前線の距離が開き始めて、中盤のプレスが効きにくくなっていたのだが、こういう状況になるとG大阪の個がオンザボールで差を見せ付ける。大塚、ブルーノと繋いだボールを、途中出場の1年生・大森晃太郎が中央から右足で決めたゴール(72分)がそのひとつ。東京V戦でも後半に4ゴールを挙げたG大阪は、77分にダメ押しゴール担当の宇佐美がペナルティエリアの外からミドルシュートを決める。フレッシュな選手を入れて食い下がったC大阪だったが、中盤が間延びした状態では永井、中東、山口が個で勝負しても、G大阪の個との差を埋めることは出来なかった。
4度目のJユースカップを手にしたG大阪は素晴らしい戦いを見せたが、G大阪の上野山信行・育成普及部長は厳しい視点で決勝戦を見ていた。「今日のゲームには満足していない。リスクを冒していないから」と言う。中盤を支配できなかった時間のことだろうか。カウンターのチャンスを与えるリスクを冒してでも繋ぐ挑戦をするべきだったと理解した。「大会になれば勝ちたいと思うのは当然だし、勝利は目標に掲げているが(松波正信監督には)勝つことは一切言っていない。チームの結果と個人の育成の評価は別々にしている。個人の育成という意味では3人の選手をトップに上げるという目標は達成した」と、勝敗に関係なく、ゆるぎない育成の視点で選手を見ているところにG大阪の育成の凄さを感じた。チームとしてある程度の成績を出さなければ監督がポジションを失う可能性が高いユースチームが多いと思うが、勝つことと育成のバランスを取る塩梅に絶対的な正解はない。誰かを育てるためにチーム力を犠牲にする勇気のある監督も少ない。上野山部長と松波監督がこの試合を振り返ってどんな話をするのか分らないが、「よくやった」だけでは終わらないのだろう。
試合後、宇佐美が「今日はよかった。股抜きとかやって楽しかった。楽しむことを忘れていたことが分った」と話したが、上野山部長は「今日の宇佐美は評価すべきところがない」と言う。宇佐美自身はオフザボールの動きで、ディフェンスラインの裏を抜けるプレーは出来るようになってきたと感じているが、パスを出した後で歩きながら行方を見守っている部分などは足りない部分の一つ。マークしているディフェンダーは宇佐美を棄てることが出来るから楽だし、他のチームメイトに負担がかかる。「自分の持っているものを出し切ることが大切。(宇佐美は)高校1年で(周囲と)力の差があって、『それをやれ』と言っても出来ない。今はそれに目をつむっている状況。(彼の成長にとっては)無駄な時間。中学の頃からメンタル面の教育をしないと駄目。これは(育成の)反省点。だから(トップに昇格させて)環境を変える」。この上野山部長の言葉が宇佐美の現状を表す言葉だ。もちろん、彼の持っている技術や可能性の高さに非凡なものがあるからこその厳しい言葉。G大阪の4度目の優勝は「勝ってよかった」では終わっていない。
以上
2008.12.28 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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