11月29日(土)J2 第44節 水戸 vs 横浜FC(13:00KICK OFF/笠松)
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前節甲府戦、今季の水戸の負の部分すべてが出ることとなった。前線からのプレスがかからず、ボールを奪ってもロングボールばかりで攻撃の形も作れなかった。スタンドで見ていたパク・チュホも「チームとしてやろうとしていることがまったくできてなかった。全体が間延びしていて、攻撃も守備もできていなかった。攻撃でもロングボールが多く、攻めるのが難しい状態でも無理に前に行こうとしてチャンスを作れなかった」とチームの不出来を嘆いた。
ホーム最終戦を前に、水戸は壁にぶつかっているようだ。攻撃サッカーを貫いてきたものの、第3クールに入ってからは相手に研究されるようになり、自分たちの形ができなくなってしまっている。
たとえば、荒田智之。開幕からコンスタントにゴールを決めてきたものの、ここに来て精彩を欠くようになっている。「相手に動きを読まれている部分が多い」と荒田自身もそのことに気づいており、「この状況をどう崩していくかが重要」と目の前の壁を越えようともがいている最中だ。そして、金澤大将。昨季は右サイドのアタッカーとして切れ味の鋭い動きを見せていたものの、今季はその片鱗すら見せられていない。「金澤の右サイドバックは諦めていない。彼が一番の適役だと思っている」と木山隆之監督が語るように、今節も右サイドバックとして先発が濃厚だが、まだサイドバックとしての動きにぎこちなさがあり、本領発揮にまで至っていない。彼の実力は水戸サポーターならば誰もが知るところ。1日でも早く右サイドバックに慣れ、“あの”姿を見せてくれることを期待したい。
チームとしても個人としても壁にぶち当たっている状況。それゆえ、1人1人が自信を持つことができずにロングボールが増えてしまい、その結果攻撃のリズムが単調となり、威力が半減することとなってしまっている。その状況を打破するためにもパク・チュホは「もっと中盤でボールを回してリズムを作る努力をしないといけない」と語る。1人1人が自信を持ってボールを受ける動きを見せ、人もボールも今まで以上に動きながら攻める形を作らないといけない。それこそ、今季の水戸の目指すサッカーのはず。「中盤の4人で起点を作りたい。そのためにももっと動かないといけない」(赤星貴文)。ミスを恐れず、全員が積極的にボールに絡むことができるか。その姿勢を取り戻すことが勝利のためには重要だろう。
前節甲府戦、試合終了間際に獲得したPKに対し、赤星は自ら進んでキッカーとなった。1試合に2本のPKを蹴ることは決して容易なことではない。結局PKを外してしまったが、失敗を恐れずに前に出た赤星の勇気は周囲に大きな影響を与えたに違いない。「とにかく逃げずにやりたい」という赤星の強い気持ちこそが、目の前に立ちはだかる壁を乗り越えるために最も必要なものである。「今年やってきたことのすべての狙いを見せたい。そして、いい形でシーズンを終えることで来季もつながる」と大和田真史は意気込みを語った。シーズンは残り2試合で終わるが、水戸の戦いはまだこれからも続く。ホーム最終戦で「1年間応援してくれたサポーターのために勝利をプレゼントする」(木山監督)のと同時に未来に向かっての大切な一戦。今ここで壁を乗り越えて、胸を張って新たなシーズンを迎えたい。
対する横浜FCは今週都並敏史監督の解任を発表。「プロの世界だからしょうがない」と都並監督は受け入れながらも3年契約の1年目での解任だけに忸怩(じくじ)たる思いがあるようだ。11位と低迷してはいるが、内容は日に日に向上していただけに「若い選手が特にショックを受けて」(戸川健太)おり、チームに動揺が走っているようである。それだけに、いかに気持ちを立て直して試合に臨めるかがポイントとなることだろう。
ただ、リーグ終盤に来て、質の高い試合を繰り広げるようになっており、チームに充実感が漂っているのも事実だ。中でも「若い選手がしっかりしてきた」と木山監督が分析するように、若手の成長は著しい。三浦淳宏や三浦知良、山田卓也といったベテランの存在感は依然際立っているが、根占真伍や太田宏介、八角剛史、吉田正樹といった20代前半の選手がチームを引っ張るようになっており、チームのバランスがよくなってきている。前節仙台戦でも引き分けはしたものの、内容では圧倒。1年間積み上げてきたものがコンスタントに出せるようになってきている。今節でも攻守のバランスが取れたサッカーを繰り広げるに違いない。そのためにもポイントは前述した通り、監督解任ショックから抜け出せるかどうかだろう。「何があっても強い気持ちを持ってプロとはどうあるべきかを1人1人がかみ締めてやらないといけない」と都並監督は語り、三浦知も「プロとして責任を持ってプレーするだけ」と気を引き締めた。横浜FCにとってプロとしての資質が問われる一戦。1年間やってきたことの正当性を訴えるためにも、勝利だけが求められている。
以上
2008.11.28 Reported by 佐藤拓也
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