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【J2:第37節 広島 vs 愛媛】レポート:降格から290日目。広島、J1復帰内定。(08.09.24)

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9月23日(火) 2008 J2リーグ戦 第37節
広島 4 - 1 愛媛 (18:04/広島ビ/19,349人)
得点者:25' 佐藤寿人(広島)、35' 服部公太(広島)、52' 森崎浩司(広島)、62' 青山敏弘(広島)、87' 横谷繁(愛媛)
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「どうして、そこにいるんだよ」
 思わず、言葉が漏れた。その先には、歓喜を表現する青山敏弘がいた。ボランチの彼がゴールエリアまで侵入し、森崎浩司のダイレクトスルーパスを押し込んでいた。シャドーストライカーも1トップも追い越し、いわゆる「ゴールへの嗅覚」を見せつけたのだ。

 考えてみれば、今季のチーム初得点もゴールエリアの付近にいた青山が、平繁龍一のシュートのこぼれ球を流し込んだもの。3月9日、開幕の草津戦でも「どうして、青山がそこにいるんだ」とつぶやいたものだ。
 広島のJ2での闘いは青山のゴールで始まり、青山の得点で大団円を迎えた。広島、J1復帰内定、である。

 試合内容そのものは、決して「盤石」ではなかった。本来はボランチである森崎和幸を最終ラインに配した布陣だったが、「みんなが攻撃にいきたがって、バランスを欠いていた」(佐藤昭大)ため、カウンターで何度もピンチに陥った。ボールは支配していたが、引いて守る愛媛を崩せず「攻めても攻めても、ゴールできない。昨年のJ1・J2入れ替え戦のような感じだった」と佐藤寿人も言う。

 だが、今季最高の19,349人を呑み込んだ広島ビッグアーチの熱気が、そのイヤなムードを打ち消す。屋根もなく、スタンドの傾斜も緩いこのスタジアムは、歓声が空に抜けてしまう傾向にあるが、そんな理屈は関係なかった。大歓声と手拍子がスタジアムを覆い、広島の夜空に響き渡る。「本当に大きな力だった」と森崎和が感謝する声援のパワーに支えられ、エースがまず突破口を開いた。

 25分、青山敏弘のクサビのパスを足下に受けた佐藤寿は、鋭く反転すると左足を振り切る。GK川北裕介が必死に身体を伸ばすも、ボールはその指先をかすめ、ポストの内側に当たって中に転がった。感情を爆発させるサポーターのもとへ、エースは走る。入れ替え戦でゴールできなかったことを今でも悔やむ背番号11 が、J1復帰への狼煙をまず、あげた。

 その4分後、驚愕のゴールが生まれる。右サイドでボールを受けた李漢宰が、美しい放物線を描くクロスを供給。この時、必ず左サイドの服部公太がゴールを狙える位置にまで飛び込んでくるのが広島のサッカーだが、この時もやはりそこに、服部はいた。
 「ダイレクトシュートしか、狙っていなかった」服部は、身体を大きく右に倒しながらジャンプし、左足をクロスボールに合わせた。

 パーフェクト、エクセレント、ビューティフル。

 どんな形容詞で飾っても色あせるほどのジャンピング・ボレーシュートは、あっと言う間に愛媛ゴールを揺さぶった。

 広島のゴールショーは、後半も続く。
 52分、「狙っていた」というインタセプトで、一気に森崎浩司が前に出る。右サイドをドリブルで切り裂き、イメージ通りの切り返しでフリーになると、右45度の角度から左足で逆サイドのゴールネットへ。「もう、嬉しくて。ゴールした後は、とにかくサポーターの下へ走りたかった」と言う森崎浩の今季11得点目は、同時に広島のJ1復帰を確信させるゴールとなった。考えてみれば彼は、5年前の11月15日、J1復帰を決めた鳥栖戦で決勝点を決めていた。

 87分、横谷繁にゴールを許してしまったものの、4−1で完勝。8月23日の福岡戦以来、6試合で24得点。「猛然」という言葉が当てはまるラストスパートを見せ、広島は今季のJ2ロードを駆け抜けた。

 「J1復帰決定」の文字が電光掲示板に踊り、サポーターは今季最大レベルを記録する歓声を爆発させ、夜空には花火が何発も響いた。ベンチ前では佐藤寿人や高萩洋次郎、柏木陽介らがペトロヴィッチ監督に水を浴びせかける。ピッチではストヤノフが両膝をつき、顔をピッチの芝に埋めて涙を流し、森崎和幸と抱き合う。スタンドでも、いたるところで握手、そして抱擁が繰り返される。

 笑顔、涙。表情は様々だが、この日の広島ビッグアーチは、喜びに満ちていた。怒りと悲しみとやるせなさが渦巻いた2007年12月8日から290日目。天皇杯で決勝進出を果たしても、ゼロックススーパーカップで優勝しても、のど元に突き刺さっていたトゲ。「自分たちはJ2なんだ」という痛み。それが、ようやくとれる嬉しさが、誰もに満ちていた。

 マイクスタンドの前に、佐藤寿人が立った。
 「忘れもしない、2007年12月8日から、ずっとこの日を待っていました」
 この言葉から始まったキャプテンの挨拶は、次第に熱を帯びる。
 「素晴らしいチームメイト、スタッフ、サポーターに囲まれ、今日、J1復帰を決めることができました!」
 ここから、エースの言葉は絶叫に変わっていく。
 「このメンバーで、このサポーターと共に!」
 言葉が枯れる。少し、言葉は噛んでしまったが、そんなことは関係ない。選手会長は、両手でマイクを握りしめる。
 「ALL FOR J1!!!!」
 佐藤寿人の声を涸らしての叫びが、広島ビッグアーチの夜空とサポーターの魂に、突き刺さった。

以上

2008.09.24 Reported by 中野和也
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