8月30日（土） 2008 J2リーグ戦 第33節
湘南 4 - 0 草津　（19:03／平塚／4,564人）
得点者：17' 原竜太（湘南）、29' 石原直樹（湘南）、77' 原竜太（湘南）、79' トゥット（湘南）
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　最初に決定機を迎えたのは、アウェイチームのほうだった。10分、熊林親吾のクロスを受けた都倉賢がきわどいシュートを放つ。そのまえにもコーナーキックを得るなど、立ち上がりは草津が押し込んでいた。

　バケツをひっくり返したような夕立と不穏な空が第24節の水戸戦を思い出させる。あのとき湘南は、積極的な立ち上がりを見せたもののすぐに敵の反攻に遭い、リズムをつくれずにいた。後半に入っても流れは変わらず、惜敗に散っている。しかしその時点では負に映った出来事も、彼らがいかに糧としその先へと繋げてきたか、こうして振り返るほどに迫ってくる。

　17分だった。菊池大介とのワンツーをきっかけに掴んだコーナーキックを、加藤望が自らセットする。右足で送り込んだボールの先で斉藤俊秀が競り勝ち、さらに田村雄三がこぼれ球に反応し、最後は原竜太が左足でねじ込んだ。前節の鳥栖戦でも自身のゴールで試合を決めている原だが、今節に向けコメントを求められた際には、「草津戦で決めてから」と自重していた。そんな決意の宿る先制ゴールだった。

　素早いリスタートをはじめ、湘南は勝負に集中していた。先制点によって流れも活性し、また坂本紘司が起点となって左右に、あるいは相手の裏へとパスを突く。29分には相手のゴールキックを石原直樹がカットし、ファーストタッチで大勢を決める。「あえてDFのいるほうにトラップした」という思惑どおりのかたちで、落ち着いてゴール左隅を狙った。

　さて、試合前には土砂降りに見舞われた平塚だが、しかしピッチコンディションは悪くなかったという。この日の草津の最大の敵は環境や相手ではなく、「試合前から緊張感が漂っていた」と植木繁晴監督が語った内なるプレッシャーだったのかもしれない。ただ一方で菅野将晃監督が評したように、「草津のポゼッションの巧さ」が湘南にゲームを容易には握らせなかった。事実、DFにボランチが絡んで低い位置でボールを回し、湘南2トップのチェイシングを躊躇させている。

湘南の2点リードで迎えた後半、草津はペ スンジンの左ミドルを合図に攻めにいく。また50分の山崎渡を皮切りに、松下裕樹、石亀晃を投入し、打開を目論んだ。そんななか、草津は前半の終わりから、湘南が攻めた直後のカウンターに活路を見出している。70分過ぎには相手のフリーキックを防いだのちにすかさず攻めに転じ、また85分にもチャンスを迎えた。だが、いずれのシュートにもGK金永基が反応し、コーナーキックに逃れている。

かたや湘南は、臼井幸平と鈴木伸貴の両翼が絡みながら追加点を目指す。後方では斉藤とジャーンによる1対1のディフェンスやカバーリングも効いていた。くわえて「我々の大事な姿勢」と指揮官が目を細めたとおり、前半から危険な場面ではそれぞれが体を投げ出し、敵のシュートを枠に向かわせていない。77分には菊池が仕掛け石原がフォローし、臼井のクロスに走りこんだ原が、今度はヘッドで鮮やかにこの日2点目を流し込む。さらに2分後、ふたたび臼井が切れ込みクロスを入れ、原のヘディングからトゥットが右足で押し込んだ。途中出場で湘南デビューを飾ったトゥットの名刺代わりの一発が、圧勝劇を締め括ったのだった。

　敗れた草津は山形（9/7＠正田スタ）、甲府（9/14＠小瀬）、福岡（9/20＠正田スタ）というライバルとの3連戦を控えている。「この敗戦を糧にして次に向かえるかどうかは自分たち次第。まだ先はあるので、立て直していきたい」植木監督は語った。試合の入りは悪くなかっただけに、継続が大切といえるだろう。混戦を極めるいまは、折れた者から淘汰される。まずは次節のホーム山形戦に全力を注ぎたい。

　一方、勝利した湘南は、斉藤が戦前に語った「山」をまたひとつ乗り越えた。2トップのゴールにトゥットとナザの湘南デビュー、そして3試合連続の無失点勝利も輝いて見える。ただ、いまがより輝くのは、振り返ったときにこそと言えるだろう。「我々にできるのは、一試合一試合勝ち抜いていくこと」という菅野湘南の姿勢は変わらない。次節は唯一の金曜開催（9/5＠ニンスタ）という変則日程のなか、湘南がふたたび愛媛という山に挑む。

以上

2008.08.31 Reported by 隈元大吾