8月28日(木) 2008 J1リーグ戦 第23節
柏 0 - 1 F東京 (19:04/柏/8,463人)
得点者:72' 赤嶺真吾(F東京)
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豪雨によるトラップがそこかしこに点在する日立台。それを避けるようにボールは宙を行き交い、ゴールエリア内ではプレーのたびに激しい水しぶきが上がる。勝利への欲求に高ぶる両チームのサポーターも、大きな声援で選手たちを鼓舞し続けた。
柏対F東京の前半はそんな状態のなかで行なわれ、しかしそれでも両チームの集中が途切れることはなく、好ゲームが展開された。それはハーフタイムの「今やっていることをやり続けよう」(石崎信弘監督/柏)、「守備は集中している。このまま続ける」(城福浩監督/F東京)という両指揮官のコメントにも表れている。
雨も止みはじめた後半早々、小林祐三がゴール前でミスからボールを奪われ、柏はいきなり危険なシーンを作られてしまう。嫌な空気が流れたかと思うと、右サイドでフリーとなったF東京のエメルソンに決定的な場面が訪れる。柏は失点こそ免れるものの、何度もシュートシーンに持ち込まれ、そしてついに赤嶺真吾の先制弾。鮮やかにゴールに突き刺す実にストライカーらしい一撃は、ホームチームに焦りを生み出すには十分なものだった。
柏はこの日、ハイテンションながらも冷静な堅守で、カボレらF東京の攻撃陣を追い詰めていった。その一方、ピッチ状況が次第に改善されるに伴い、わずかな隙を徐々に突かれはじめてもいた。互いに得点機を手にするなか、柏の集中力が上回るのか、F東京の集中力が上回るのか…。試合はまさに綱渡りの消耗戦に発展し、そして迎えた72分、柏はあえなく決勝点を喫した。
アレックスの出場停止、李忠成を故障で欠くアクシデントが続き、思惑どおりの布陣を組めなかった柏は、この日も攻撃面での工夫は示せなかった。ポポの馬力こそ活かしたものの、単調さは消せず、ビハインドを背負ってからの総攻撃も時間だけが淡々と過ぎていった。前節から改善された守備面とは対照的に、シュートまでの持ち込み方という課題は依然として大きく残ったままである。
とはいえ、集中した守備を見せ、相手監督に「僕らも見習わなければいけない」と言わしめる鋭いカウンターも何度か披露してみせた柏。つまりは、この日の敗戦は、現状やるべきことをやりながらも起きたものということになる。ダメージは相当に大きい。だが、北嶋秀朗の言葉がチームに光をかざす。「チームが強くなれるチャンス。うちはこういうことで悪い空気にはならない」。
幸運にも、J1はここで中断期間に突入する。新戦力の融合で競争は激しさを増し、石崎監督も目を細めた“チームの心臓”山根巌の復活も、2週間後には完全なものとなるだろう(久々の登場でいきなり守備で魅せてくれるこの男は、やはり不可欠だ)。そして何より、相手マークにつかまりはじめたフランサとの連携強化の成果を出すことができれば、チームは確実にひとつ上のステージにたどり着けるはずである。守備の次は攻撃の再整備。そして、目指すは「残り試合で連勝」(古賀正紘/柏)。終盤戦に向けた中断期、選手の気持ちはひとつとなるのか。目標の『勝点55』を達成する可能性は、現段階でまだ途絶えてはいない。
一方、苦手の相手に見事に勝点3を奪取したF東京にとっては、「自分たちの目指しているものに少し近付いた」(羽生直剛/F東京)試合となった。得点場面以外にも多くの決定機を作ってみせ、フランサを窒息させた守備陣も零封に成功。さらに、耐えて耐えての一発は、チームの順位を前節の11位から7位に引き上げる貴重なゴールに。新システムの適応度合いから、途中出場した平山相太の巧みな時間稼ぎまで、城福監督の勝利へのマネージメントを見る限り、チームは再浮上のきっかけを確かに手中に収めてみせた。
先制後、一つひとつのプレーにうねりが起き、そのたびに勝利の雰囲気を作り上げていったアウェイゴール裏。ホームでの勝利を信じ、選手に気持ちを届け続けた柏サポーターたちも、この日ばかりは悔しさを噛みしめるしかなかった。試合後のスタジアムで勝者と敗者の残酷なコントラストが描かれるなか、両チームの選手たちが見据えたもの。その気持ちの重さは、リーグ再開時に試されることとなる。
以上
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